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完全敗北

 プレイヤー『ミラア』。


 それがズタ袋に詰め込まれていたウジ虫の名前です。


 私の攻撃でズタ袋が破けて出てきた彼女の印象は、メガネをかけた真面目そうなOLさんでした。……まったく、どうしたらこんな趣味に目覚めるんですかね? 理解できません……よ!


 私はそう言いながら彼女の背に向かって鞭を振るいました。服が破け露出した肌は、赤く腫れており、血が滲み出しています。


「ぎゃうぅぅぅぅ……!」


 鞭の攻撃でウジ虫が涙と共にうめき声を出しました。しかし、その声は辛さよりも快楽を享受する喜びに満ちており、とろける様な顔がその事を物語っていました。


 これだけやられてそんな顔ができるなんて……ほんとうに……ほんとうに……。




 きもちわるいですね。




 私はウジ虫に囁くように語りかけました。


「はうぅ……ごめんなさい、ごめんなさい。気持ち悪くてごめんなさいぃ~……はぅ!?」


 囁かれて気持ちよくなったタイミングで、メレーナさんがウジ虫の下腹部に強襲を仕掛けました。


 先ずは強く体当たりを、その後は目にも止まらぬ速さで拳のラッシュを決めていきます。


「勝手に口を開くんじゃないよ! この雌豚ァ! お前にはお仕置きだ! 喜んでくらいなぁ!」


 メレーナさんが拳を繰り出す毎に、ウジ虫さんの身体はビクンビクンと震えていました。……そんなに嬉しいんですか? 痛め付けられて喜ぶなんて……この変態、変態、ド変態!


 何か言い返してみたらどうです? これが貴女に許された最後のチャンスです。もしも嫌なら拒絶なさい。しかし、もっと気持ちよくなりたいなら……。


「は、はい。わ、私、ミラアは、痛め付けられて、喜ぶ、ド変態ですぅ……」


 ……言うまでもありませんでしたか。


 完全に蕩けきった顔で、いろんな液体を顔から垂らしながら、ウジ虫は自分がどうしようもない、気持ちの悪い、ド変態の雌豚であることを認めました。


 ふふっ。良く自分の事をわかっているじゃ無いですか。ご褒美をあげましょう。ありがたく受け取りなさい。


 パシィン!!


 部屋に乾いた音が響き渡りました。


 私がウジ虫の頬をぶった音です。


 その一撃が絶頂の引き金だったようで、ウジ虫は白眼を剥き、動かなくなってしまいました。気絶したようです。


 ……あら? どうやら限界を向かえたようですよ? どうしますか、メレーナさん?


「あん? なんだい、これからっていう時に気絶するとかどうしようもない豚だねぇ。……まぁ、今日はこのくらいにしておいてやるか。ポロラ、縄をときなぁ」


 メレーナさんの言葉を聞いた私はコクりと頷き、天井から吊るされていたウジ虫を地面へとおろします。


 床に散らばった自分の体液の中に沈む彼女は、どこからどうみても人類の最底辺にしか見えません。……スクショして後で見せてあげましょう。


 さ、それでは今日はそろそろ帰りましょうか? 変態を相手にしたので汚れてしまいましたし、身体を綺麗にしましょう。


「いいねぇ。ちょうどそう思っていたところさぁ。……おい、雌豚。アンタが汚したんだから、ちゃんとアンタがここの掃除をするんだよ? わかったね?」


 メレーナさんの命令に、ウジ虫は何も答えません。ま、気絶しているので答えれるはずが無いのですが。


 ……じゃあ、さようなら。


 また明日、楽しませて下さいね?


 そう言い残し、私達は部屋の外に出ました。


 ……おや?


 早くも、ウジ虫が目を覚ましたようです。


 彼女がしまる扉を恍惚とした顔をして見つめていたのに気が付いたので、私は彼女に聞こえる声で言いました。


 メレーナさん、ちゃんと鍵は閉めておきましょう。私達のオモチャが逃げないように……ね?


 笑いながら扉を閉め、メレーナさんがガチャリと鍵を閉めました。これで彼女はこの部屋に拘束された事になります。


 また明日、私が来るまではあの状態という事です。事なのですが……。




 も、もう、大丈夫……ですかね?




「いや、と、とりあえずここから、で、出るよ。感付かれたら不味い」


 りょ、了解です。


 こそこそと私とメレーナさんは言葉を交わし、今自分が出せる全力で駆け出しました。

 そして、二人共無事に訓練道場から脱出すると、一緒にその場に倒れたのです。


 お互い肩で息をして、まるで死にかけの様子でした。


 め、メレーナさん。大丈夫ですか……?


「こ、これが大丈夫に、見えるかい? ……もう無理だよぉ。これ以上動けるわけ、無いじゃないかぁ……」


 ですよ、ねぇ……。


 私の視界の端には『過労』というバッドステータスを示すアイコンが出ていました。このまま行動を続ければ、過労死で死んでしまいます。


 私があの部屋に入ってから数時間、最初は上がり続けるステータスとスキルに歓喜していました。


 しかし、調子に乗って攻撃していたところ、視界の端に『疲労』のアイコンが見えたのです。


 これは不味い。


 そう思った私は慌てて言葉責めを開始、その間にコッソリとメレーナさんにチャットを送りました。以下の通りです。


『ポロラ ヤバイです。疲労状態入りました。そろそろ切り上げましょう』


『メレーナ 私もだよ。不味いね、コイツ責めが物足りないと思ったら次からヤらせてくれないんだよ。参ったね』


『ポロラ なら放置プレイはどうでしょう? 喜ぶのでは?』


『メレーナ もうやった。悪いけど、何度も通じないだろうね』


『ポロラ それならば、次はもっと凄いことをしてもらえると思わせて逃げましょう。私が飴、メレーナさんが鞭みたいな感じで責めてください』


『メレーナ わかった。上手くやる』


 そんなやり取りがあった上での、先程のSMプレイです。中々緊張感のあるやり取りでした。……というか、なんでミラアさんは死なないんですか?


 私、何回か致命傷を与えましたよ? なのにすぐに回復してしまいますし……そういう『プレゼント』なら早く言ってくださいよ……。


 ミラアさんは、とにかく頑丈な方でした。


 いくら切り付けても絶命することは無く、ただただ矯声を上げるだけで、絶命には至らなかったのです。


 首を絞めて殺そうとしても、一瞬気絶するだけで、すぐに目を覚まして「もっとだ! もっとください!」とおねだりしてくる程でした。


 絶対におかしいですよ……。これが能力じゃ無くて何だって言うのですか……。


 私はそう思って天井を仰ぎました。


「残念だけど……ミラアはああやって痛みつけられ続けて『耐久』のステータスがカンストしてるんだよぉ。それに伴った、『軽装備』や『治癒』なんかもカンストしてるって話さ。……多分、こっちの攻撃なんて効いて無いだろうねぇ」


 か、カンストですか……?


 このゲーム、ステータスを限界まで上げるには並大抵な努力ではできません。というかそんな人、聞いたことがありません。

 例え、一つのステータスだけだとしても、それは驚くべき偉業でしょう。信じられませんが。


 でも、こっちの攻撃を凄く喜んでましたよ? 多少は効いていたんじゃ……。


「アンタさぁ、ゲームの仕様で痛みがダイレクトに来ないことくらいわかるだろ? ……あれは自分が酷い目にあっているっていう状況を喜んでたんだよ。精神的な問題さぁ……」


 つまり、どうやっても折れない変態という事ですか?


 またああやって痛め付けなきゃいけないとか、こっちの精神が削れるんですけど……。


「わかる……。ダメージは食らって無いんだろうけど、拷問しているっていう事実が罪悪感を呼ぶんだよねぇ……」


 なのですよぉ。


 とりあえず、今日はお開きにしませんか?


 もう時間も使いすぎて、リアルでは朝です。このままでは日常生活に影響が出ます。学校いかなくちゃなのです……。


「わ、私もだよ……。仕事がある……。アンタが話のわかる真人間で助かった。今日はログアウトさせてもらうよぉ……」


 そう言って、メレーナさんの姿は消えてしまいました。どうやら無事にログアウトできたようです。


 ……私もログアウトしましょう。


 ログアウトで『過労』が治るわけじゃないので、次にログインしたら休憩から始めないとですね……。


 私はウィンドウからログアウトの項目を選び、現実世界に舞い戻りました。




 こうして。


 いろいろありましたが、私の1日目の修行は、ドMの性欲処理で終わってしまったのでした……。


 気分的に、完全敗北です……。

・ステータス

生命力 HPに関係

精神力 MPに関係

筋力  攻撃力に関係

耐久  防御力に関係

魔力  魔法攻撃力に関係

知力  魔法防御力に関係

速さ  行動回数に関係

感覚  命中率、遠隔攻撃力に関係

それぞれに関係する行動をとると、それにあわせてステータスに経験値が入る。例えば棍棒で攻撃した場合、

攻撃→筋力

棍棒→耐久

行動→速さ(成長しづらい)

攻撃を当てる→感覚

といった感じに経験値が取得できる。

しかし、手に入れることができる経験値は同じではない。



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