狐さんの修行旅!~これ修行と関係あります?~
あ、だ、だめっ……だめぇ……やめてぇ……。
「ウソつき……駄目じゃないよね? 尻尾をこんなに振り回して悦んでる癖に、そんな事言っても信用できないなぁ……」
ベッドから転がり落ちてしまった私は、ケルティさんの手によって捕まってしまいました。
そして、またベッドに寝かされて、マッサージをされています。……あ、アンズちゃんは? 彼女はどこに……きゅん!?
ケルティさんの指が肩甲骨辺りのツボをしてきます。思わず変な声が漏れてしまいました。
「ん~? アンズちゃんはねぇ、ちょっと眠ってもらってるよ。せっかくポロラちゃんが訪ねて来てくれたんだから、私が気持ち良くしてあげたかったんだぁ……えい」
こきゃーん!?
身体全体に、ぞわわわ、っという感じが走りました。まるで弱い電流が駆け抜けたようなこちょがしさです。……って、もしかして一服盛ったんですか!? あんないたいけなコボルトちゃんになんて事を!?
「大丈夫、大丈夫。薬じゃないから……、ちょっと疲れちゃっただけだから……」
何をしたのですか!?
疲れるような事をしたという事実が私を震え上がらせます。もしかしたら、本当は薬で眠らせただけなのかも知れませんが……。
どちらにせよ、私はすぐにここから逃げ出すべきでしょう。
幸い、私の身体をマッサージしているレズエルフさんは油断しております。なんの拘束も無しに私をベッドの上に寝かせているのです。
いくらケルティさんが速いと言っても、一撃食らわせて扉まで逃げ出せばチャンスはあるはず。
他の店員さんに助けを求めるチャンスが。
にも関わらず、私はこの場を動くことができませんでした。
別にスキルを使われたとかそういうのではありません。では無い筈なんですけど……。
めっちゃきもちいんですぅ……。
巧すぎますよケルティさん。
勝手に口から声が出てきますもん。痛気持ちいい感じの時もあれば、ゾクゾクと身体の奥から快感が沸き上がって来るときもあり、なんとも言えない感じです。
口では嫌々と言えますが、なんか尻尾が勝手に動いているみたいで、私が気持ち良くなっているのは彼女に筒抜けでしょう。なんで犬科の習性も再現したんですかぁ……開発者ぁ……。
なので、ひゃん……、この味わったことの無い、ひぅ……、この快楽に、んん……、身を任せてしまってもいいのでは無いかと、こゃん……、いう考えが頭によぎるので、きゅ~……。
「うんうん、いい感じにほぐれてきたね。声出すのも抵抗無くなってきたかな? そ・れ・と・も~、もう我慢できなくなっちゃた……?」
頭に生えている狐さんの耳の周りをマッサージしながら、ケルティさんが優しく囁きます。それだけでゾクゾクとした感触が身体に走っていきました。……な、何を言っているのですか。
私は、そんな趣味はありません。確かに気持ちの良いことは認めましょう。しかしそれは、ひゃ……、マッサージ的な気持ちよさというだけです! 決してエッチな気分になんてなっていませn……。
「あれ? 誰もそんな事聞いてないけど……? もしかして、感じちゃった……?」
墓穴を掘った!?
やってしまいました。何も言わなかったらケルティさんを刺激することも無かったのに。
私の発言に気を良くしたのか、彼女は私を跨ぐようにベッドに上がりました。そして私の尻尾の付け根に手を伸ばします。……そ、そこはぁ!?
「さっきも言ったけど、獣人の娘は尻尾の周りが弱いんだよね。無意識に動いてるからコリがたまってるみたい。今からほぐしてあげるから……」
だ、駄目……そこはやめて……だめ……だめぇ……。
「我慢なんか……しちゃだめだよ……?」
ひゃああん!!?
地獄が始まりました。
頑張って声を我慢しようとしましたが、口を手で抑えても勝手に漏れてしまいます。ケルティさんを喜ばせるだけと知っているのに。
勝手に出てくる声も、さっきみたいな軽い感じでは無く、まるで叫び声の様なものへと変わっていきます。
少しすると、抑えている指の間から涎が溢れてきました。……そ、そんな。こんなの知らない……。やめて……こんなの……私じゃない……。
うぅあああああああああああ!!?!?
自分の意思とは関係なく、誰にも聞かせたことの無いような、恥ずかしい声が部屋に響いていました。
「ふふっ、相当たまってたんだね? 凄い気持ち良さそう……私も我慢できなくなっちゃう……」
そう言うと、ケルティさんはマッサージの手を止めました。
どうやら、これ以上すると自分のリビドーを抑えきれなくなるみたいです。本気でお客さんに手を出してしまったら不味いですからね。
新しい世界に一歩踏み出す直前で戻って来れたことに、私は涙を流して安堵しました。……ハァハァ、耐えた……耐えましたよ……。
私は腕を上げてガッツポーズを取りました。しゃあ。
と、そこにケルティさんが抱き締めるように腕を回してきます。……ひゃうぅ!?
「本当は駄目なんだけどさー、このままもっと凄い事しようよ? さっきとは比べ物にならない快感を教えてあげる……」
さ、さっきよりも……凄い……?
あそこまで乱れていたのに、もっと凄いことをできると言うのですか? 逆に恐ろしさを感じますよ?
でも、さっきまでの快感より凄い快感……。
私が考えていると、ケルティさんはこちらを抱き締めたまま身体を動かしました。彼女の柔らかな四肢や胸が、私の身体を包み込みこみます。
「ねぇ……聞こえる……? 私、今凄いドキドキしてるんだよ……? ね……しよう?」
色っぽい声が私の脳をいけない方向に誘導します。そして、その身体から伝わって来る鼓動が彼女の言葉が嘘では無いことを物語っていました。
や、ヤバイです。本格的にこちらを落としにかかってきましたよ。というか、私も流れそうになっていましたし、ここはハッキリと断らなければ。……や、やめっ。
断ろうと口を開こうとすると、ケルティさんは私の手を握りしめました。まさかの行動に、私もドキッとしてしまいます。
「正直になろうよ……。いやじゃ……ないよね……?」
う、あ……。
い、嫌です! 初めてが同性とかトラウマものですよ! 駄目です! 駄目!
「え~……」
残念そうな声を出しながら、ケルティさんは私から離れました。
やった。やりました。
今度こそ終わりでしょう。私の貞操は守られたのです。散々な姿を見られてしまいましたが、最後の一線は踏み越えていないのでオッケーでしょう。ギリギリです。
さ、マッサージも終わった事ですし、早くこの部屋から出ましょう。ケルティさんもベッドから降りてくだs
「え? まだ終わっていないけど?」
なん……ですと……!?
起き上がろうとした私の尻尾に、ケルティさんが抱き付いていました。とても嬉しそうな顔をしています。
「ここが、いっちばん良いんだよね? アンズちゃんを相手にしているから、よく知ってるよ? ここをやんなきゃ……終われないよね?」
やっ……、お、終わりで。終わりで、いいですから……!
お願いだから見逃してください……!
私は声を振り絞って懇願しましたが、ケルティさんは笑顔で首を横に振ります。
「だ~め。さ、気持ち良くなろ?」
こきゃーーーーーーーーーーーーん!!
こうして、2回目の地獄が始まったのでした……。
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カポーーーン。
鹿威しの音が、露天風呂に響きました。浴槽には風呂桶が浮かんでおり、空には星空が広がっています。
マッサージを終えてふらふらになった私は、身を浄めるべく温泉に入りに来ていたのです。……まさか、気を失うとは思いませんでした。
散々な目に合いましたよ……。目が覚めたらいろいろとぐちゃぐちゃでしたし……。
とんでもなく恥ずかしい姿を見せてしまいましたし、しばらくは恥ずかしすぎて誰とも顔を会わせたくないですね。
温泉も気持ちいいですし、ゆっくりしていきましょうか……はぁ……。
私は暖かい温泉に浸かり深く息を吐きました。身体の中から疲労が抜けていくようです。
いやぁ、温泉サイコー……。
……そういえば、成長率はどうなったんですかね? マッサージをされれば思いっきり回復するとか言ってましたけど、これで全然回復していなかったらたまりませんよ。
じゃ、ウィンドウを開きまして、と……。
ちなみに成長率は100%が限界値です。3日位ログインしないとマックスになります。エナドリは50%程回復です。
ここに来る前にエナドリ飲みましたし、100%になっていませんか……ね?
ウィンドウに表示されたあり得ない数字に、思わず二度見してしまいます。桁を数え間違えた可能性を鑑みて、じっくりとウィンドウを凝視しました。
『1000%』
……は? 限界越えているんですけど? というか、何ですか? これ? 何か行動したら一瞬でレベルアップする状態ですよ? チート? BANされちゃうんです?
「ああ、それは『色欲』の効果だねぇ。アイツらがマッサージするとそうなるのさぁ、修行するなら一人は側に置きたい人材だよぉ」
あ、これギフトの効果なんですか。『色欲』の能力ってこういう感じなんですね、って、この声は……。
聞き覚えのある声の方向に振り替えると、そこにはプカプカと浮かんでいる風呂桶がありました。
まさかと思い近寄って中を確認します。
「やぁあ。久しぶり……って訳でもないねぇ。元気してたかい?」
そこには、お湯に浸かっている妖精さん……修行の旅に出ていったはずのメレーナさんがいたのでした。
なんで私、立て続けに危険人物に出会ってるんですかね……?
・成長率
数値が高ければ高いほどレベルが上がりやすくなる。通常の限界は100%、プレイヤーと気持ちいい事をした場合の限界は500%、『色欲』のギフトを持ったプレイヤーが相手だった場合限界は1000%。




