子猫の秘密
二つ名。
それは多くのプレイヤーに認識されたプレイヤーに付けられる、非公式の称号です。
良く言えば、周囲の注目を集めた者に贈られた称号。言うならばゲームのメインキャラと同じような方々です。モブキャラとは違うということですね。
で。
悪く言えば、周囲の方々に多大な迷惑及び損害を与え、コイツは危険だから近づかない方がいいぞ?という方々。多くの方々はこちらです。
つまりはゲームにおける悪役、モブキャラを食い物にしているということですね。
私の『戦闘狂』という二つ名も、恥ずかしながら、他人に迷惑をかけて付けられた不名誉なものです。まぁ、仕方がないですね。
このイメージが払拭されることを祈るばかりです。
……何が言いたいのかと言いますと、その二つ名を付けられたということは、それなりの理由があるということです。
タビノスケさんの『危険指定生物』しかりチップちゃんの『ガン・ドッグ』等、その人プレイスタイルが元になっていることは明らかありまして。
私の肩に乗っているこの可愛らしい子猫先輩も、それなりの理由があって『魔王』と呼ばれているようでした……。
ビギニスートへと続く街道。
子猫と一緒の楽しいお散歩……と、なることはなく、私達の進んできた道筋はウジ虫さんの血によって赤く染められていたのでした。うーん、地獄絵図。
「ねぇ、ポロラ。ちょっといいかい?」
んっ……どうしましたか? 子猫先輩?
先程の襲撃の傷をポーションで癒していると、肩の上の子猫先輩が話しかけてきました。
「ポロラの能力は、物量で押しきったり、ピンポイントで攻撃できたりで、凄い便利だよね。攻撃力も高いみたいだし」
そうですね。
基本的に攻撃を避けながら、一撃で吹き飛ばすのが私のやり方ですね。道具を使って搦め手をやったりもしますが。
私は、迫り来る脅威には手加減しない派です。
「うん、そこは短所だと僕は思うな」
ええー?
私の能力を否定した子猫先輩は、肩の上から飛び降りると、私に正対してちょこんと座ります。……なんでそう思うのですか?
「えっと、このゲームって攻撃が敵に当たると多めに経験値が発生するのは知っているよね? ……だから、一撃で倒してしまうのは効率が悪いんだよ。弱い攻撃で生かさず殺さずをし続け方が良いんだ」
えっ……と。
つまりは、襲いかかってくるウジ虫さん達に対して、拷問をしろという認識でいいんですかね……?
ま、まさかですよね?
一応ウジ虫さん達には中の人がいるのです。実は私達と同じ人間なのですよ。
そんな方々に拷問をするというのは……アレです。
自分の身体で、グロテスクな画像を延々と見せつけられている状態になる、という事でして。
ゲームですから痛みは感じませんが、精神的な苦痛は残ってしまうということです。
流石にそういう意味では……無いですよね?
「拷問……まぁ、言ってしまえばそういうことになるかな? 彼等の命を無駄にしないよう、徹底的に使い尽くしてあげようね!」
わぁお、鬼っ畜ぅ~。
子猫先輩は最高の笑顔で、そう言うのでした……。
と、いうことでしてね。
この残虐性と高い戦闘能力が、子猫先輩に『魔王』という二つ名が付いた理由だったのでしょう……。
くっ……そんな方に、逆らうことなんて私にはできません。
ですので、ウジ虫さん達にはちょっと苦しんでもらうことにしましょう……。
悲しいですねぇ。
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パキパキ……パキパキ……。
私は、腰から生やした刃の尻尾を引きずりながら、ビギニスートへと向かっていました。もう目の前です。
刃の尻尾は不自然に大きく膨らんでおり、中の方から「ああー」とか「うぅー」等の声と共に異音が聞こえて来ます。
私に襲いかかって来た『紳士隊』の方々が、中に入っているのですね。現在進行形で刃でチクチクしている感じです。
道中は見晴らしがいいから大丈夫。とか安心していたら、空から降ってきたり、地面から現れたり、奇襲性能の高い方達でした。
……にしても、嫌だったらログアウトすれば良いでしょ。なんでそんな被害者ぶってるんですか。
振り向いて、そう声をかけると、彼等はモゾモゾしながら答えます。
「だってー、帰ってもまた行ってこいって言われるしー」
「こうやってた方がマシ……っていうか、ずっと攻撃されてるからステータスが伸びてる……」
「懐かしいよね、こういうの」
「無茶な育成に『ペットショップ』味を感じる」
「わかるわー」
「と、言うわけで狐さん。お世話になります……」
どういう訳ですか?
尻尾で捕獲してからやけに大人しいと思っていましたが、なんなんです? これ?
ステータスが上がるからって、こんな所でサボってていいんですかね?
私はとても疑問に思います。
「あ、HP減ってきたわ。誰か回復魔法プリーズ」
「へいよー。『ブレッシング・サークル』~」
しかも、自分達で全体回復魔法を使っています。完全に私の尻尾の中に居座るつもりのようでした。
子猫先輩……。
「うん、どうしようもないね。色んな意味で。……けど、お互いにWin-Winみたいだし、
このままビギニスートに入っちゃおうか」
了解でーす!
子猫先輩が良いって言ったら良いんです。私のステータスとスキルも育っていきますし。
問題があるとするのなら、ビギニスートへと入ってからの刺客なのですが……。
私は、これから襲いかかって来る刺客に、得も言えぬ不安を感じていたのでした。
理由は、後方で引きずられている6名が、微妙に弱かった事に起因します。
まるで、こちらの力量を見定められているようにしか、私は思えてならなかったのです。
『紳士隊』からの襲撃はこれからが本番、そう考えて間違いはないと見ました。……そして、それはどうやら正しいみたいでしたね。
ビギニスートへと入る為の門の前に、一人の市民NPCの女性が立っていました。その足元には、いくつもの血溜まりが出来上がっています。
「……ターゲットか。邪魔な奴を排除した甲斐があったな」
真っ直ぐに睨み付けるその表情は、異様な雰囲気を放っており、中身がAIのNPCだとは到底思えませんでした。……『怠惰』のギフトですか。厄介な。
「って、なんだ、狐娘って聞いたから聞いたからちょっと期待したのに……ここまで来て損した気分だぜ」
……はん、それはすいませんでしたねぇ。
けれど、もしかしたら私の方が強いかも知れませんよ? NPCの身体を借りなきゃ戦えない様な奴よりかは、やれる自信があります。
さぁ、殺し会うとしましょうか?
私はそう挑発をしつつ、大爪を数本展開しました。迎撃の準備は万全です。どこからでもかかってくるとい良いでしょう。
私はニコりと笑顔を見せると、目の前の女性は━━、
「は? なんでお前と遊ばなきゃいけないんだよ? おれはロリコンだぞ? おれが興味あるのは幼女だけだ。キャラメイクし直して出直してこい。しっ、しっ!」
そう言って、顔をしかめるのでした。……ろ、ロリコンさん!?
「あ! もしかしてワカバくんかい? 久しぶり!」
肩の上の子猫先輩が嬉しそうに声をあげます。どうやらお知り合いのようです。
「あ? 『魔王』も一緒かよ。でも、子猫バージョン? ……どうせなら、人間バージョンの方がいいんだけどさ?」
え? 何ですかそれ?
私の疑問をよそに、子猫先輩はノリノリで彼女の要望に答えます。
「えー? 見たいのー? ……しょうがないなぁ、……特別だぜぇ? んー……変身!」
子猫先輩が肩から飛び降りると、その身体に変化が生じます。
その小さな身体は光に包まれ、人型へと転じていきました。
変形が終わると、そこには、腰まで届く長い黒髪が印象的な、幼さが残る黒いドレスの美少女が居たのでした。身長も低く、150センチもない位です。……え? もしかして……子猫先輩……なのですか!?
私が動揺して声をかけると、美少女はニヤっと、楽しそうな顔をします。
「そうとも! これが僕の真の姿さ!」
マジなんですかぁ!? 嘘ぅ!?
私のそんな叫びは、虚しく、広い空に吸い込まれていってしまうのでした……。
・人体化/動物化
プレイヤーの中には、とあるイベントで配布されたアバターの衣装を持っている者が存在する。人は獣に、獣は人に……。変化すれば自分の意思で解除出きるが……慌てる事はない。おもいっきりもふられよう!




