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Phase1 ディリヴァとその眷属達

 ディリヴァの覚醒は終了し、その姿は大きく変化しました。


 頭の上には天使の輪のようなサークレットが出現しており、装備している武具もより豪華な物へと変わっています。


 簡単に言ってしまえばより神聖な姿にへと変化したと言ったところでしょうか?


 ターゲット機能を使いレベルを確認してみると、その値は20000、当然の如くカンストしていますね。


「これがわたくしの本来の力! 愚かな冒険者達よ……我が眷属の前に力尽きるといい!」


 ディリヴァは叫びながら手を高く上げました。


 すると空間の至るところに魔法陣が出現し、何かが召喚されていきます。


 唸り声を上げる巨人や歩行する食虫植物、人由来と思われる異形の怪物、杖を携えたアンデッド、黒き鎧を纏った重戦士、そして欲情的な姿をした女悪魔……今まで戦ってきた邪神を思わせるようなモンスター達が現れたのです。


 それとほぼ同時に身体の自由が戻って来ました。……オークさん! 覚醒してください!


「は、はい! 『覚醒降臨』!」


 事前に『強欲』のギフトカードを使用していたオークさんは、私の掛け声により瞬時にスキルを使用しました。その効果により一瞬の内に、彼の身体は巨大化します。……よしっ!


 ワッペさんは復活地点の設置! 金髪ちゃんはアイテムでオークさんを支援! ケモモナは……なんかやっといてください! 私は攻撃に移ります!


「もうやっとるわ! できてんぞ!」


「シードンと一緒にいればいいんですね! わかりました!」


「……なんか俺だけ雑じゃない?」


 他の方々にも指示を出した後、私は大爪を生成。現れたモンスター達に向かって射出しました。


 一撃で倒す……ということはできませんでしたが、多少のダメージを与えた事ができたみたいで動きが一瞬鈍りました。


 その隙きをソールドアウトの皆さんが見逃す訳がなく、巨人の頭が音を立てて地面に落下しました。ツキトさんですね。


「お前ら! ボサッとしてんじぇねーぞ! どうせコイツら無限湧きだ! 殺せる奴から殺していけ!」


 大鎌を振りかざした彼は我先にとモンスターの軍団の中に突っ込んでいきました。その肩には小さな黒猫の姿もあります。


 要するに、雑魚は私達に任せて子猫先輩と二人でディリヴァの首を取りに行く気なのでしょう。……少し不満ですが仕方がありませんね。


 さっき攻撃してわかりましたけれど、あのモンスター達も相当強いです。邪神程ではありませんが、まともに戦ったら面倒だと思います。


 少なくとも、私達の手には余る強さでしょう。


 ですので、我々しなければならないのは前線に飛び出して行くことではありません。


 ソールドアウトの皆様を前に送り出すために、全力を尽くすべきなのです。……私達も少しづつ前に出ましょう! モンスターを叩き潰すのです!


 そう叫び、前に出ようと足に力を込めたその瞬間です。




「はい、ストップでござるよ〜」




 気の抜けたような声と共に、私達の目の前に巨大な触手の塊が出現しました。タビノスケさんです。


 その巨大な触手を振り回し、迫りくるモンスター達を相手にしていました。しかし、それでも仕留めきれていないようで、モンスター達は更に召喚されていきます。


 早く参戦しなければ、押し切られてしまいそうです。……一体何なんですか! 邪魔しないでくださいな!


「まぁまぁ、焦ることはないでござる。まだ戦闘は始まったばかりでござるから、ちゃんと戦闘の準備をするべきでそうろう」


 はぁ? 準備?


 悪いですけれど、私達は私達でちゃんと考えて……!?


 私がそう言ってタビノスケさんに噛み付いたその時です。


 後方から強い光が差しました。


 何事かと思い振り返ってみると……。




 そこには大きなステージ会場が出現していました。ギラギラと輝く証明に照らされたフリフリの服を着た少女が、マイクを片手にポーズをとっています。




 …………。


 いやなんで!? 今ラスボス戦ですけれど!? なにを始めようとしているんですかねぇ!?


「ご存知ないでござるか? ……彼女こそ! ソールドアウトトップのバッファー、小人のアイドル、りんりんでござるよ!」


 そう言ってタビノスケさんはサイリウムを取り出します。これから戦闘を始める姿とは思えませんね。……こんな時にふざけないでください、あんなのご存知ないでござ……いや、ありますね。以前タビノスケさんと戦ったときに見ました。


 確かに敵全体にバフ効果が発生していたみたいですけれど……え? ソールドアウトトップのバッファー? あれが?


 私は信じられずにもう一度ステージの方に振り返りました。


『イェーイ! みんなー! りんりんライブ始めるよぉー! 知っている人も知らない人も盛り上がっていこーねー!』


 戦いに来たんですよね……?


 よく見るとステージの前には三名のプレイヤーがサイリウムを振り回しています。おそらくタビノスケさんのパーティメンバーでしょう。ライブを観戦にきたんですね。理解理解……。


 いや戦いなさいよ。


「観客が居ないライブはつまらないでござるからな。……それに、ライブが始まればその効果もわかるでござるよ」


 タビノスケさんは悠長にそんな事を言っていますが、その身体は少しづつ敵によって削られています。


 他の方々も頑張っているようですが、どちらかと言うと防戦一方です。損害はありませんが、いくらでも湧いてくるモンスターに足止めされている感じにみえました。


 これをなんとかしなければ、ディリヴァに刃を突き立てる事は難しいでしょう。


『それじゃあいくよー? みんなを支える応援歌! 死ぬまで聞いていってね!』


 そんな中、りんりんさんのライブが始まりました。


 フリフリなアイドル衣装に負けない中々の歌唱力です。スピーカーのおかげで彼女の歌はこの空間全体に響き渡っています。


 そして、肝心のバフの方なんですが……。




 何が変わったんですか?




 ステータスを見てもいまいち強化されている場所がわからずに、私はタビノスケさんにそう質問しました。パッと見ほとんど変わってないんですけれど……多少は強化されてますが微々たるものです。


 私の質問に対して、タビノスケさんは大きな1つ目をニッコリとさせます。


「戦えば……わかるでござるよ。じゃ、そういう事で……うぉおおおおおおお!! りーんりーん!」


 そして全力で去って行きました。……まさかバッファーって嘘なんです!? ちょっと、ちゃんと説明していきなさいなぁ!


「ポロラ! タビノスケさんが抑えていた奴らが来るぞ! くっ……! 『ライトニング・レーザー』!」


 タビノスケさんを追いかけようとしようとすると、ケモモナの呪文詠唱が響きました。


 雷の帯が向かってくる女悪魔に向かっていき、その身を包み込みました。


 直撃した女悪魔はビクビクと痙攣し、地面に倒れ付します。そして、ミンチとなって弾けてしまいました。……あれ? 倒せちゃった?


 『黄衣の王』のステータスは破格ですが、現れたモンスターを一撃で倒す事ができるほどでは無いはずです。


「……マジ?」


 使った本人も驚いております。


 女悪魔だけで無く、魔法が通った射線にいた敵は全部吹き飛んでしまっていました。


 何かしらの強化されているのは確実なんですけれど……何をしたんですか?


「んだよ、オメェら知らねぇの? りんりんのバフは言うならばダイスの増加だ、根本的な攻撃力と運命力が爆上がりすんだよ! いけぇ『アンデット・プロミネンス』!」


 ワッペさんから吹き出した炎は向かって来る敵を包み込みました。確実にHPを削り取っていき、大きく動きを鈍らせることに成功しています。


 ダイスの増加……つまり攻撃の発生回数や判定が増えるということでしょうか? いや、普通に強いですね、それ。


 要するにスキルレベルが上がっている状態と同じですからね。魔法の威力も上がっているということは、回復魔法や支援魔法も強化されているということです。


 これとオークさんの能力が組み合えば……かなりの戦力強化になるはずです! 私達も普通に戦えるかもしれません!


 私は細かい刃を作り出し、散弾銃のように打ち出しました。弱っていたモンスター達に突き刺さり、確実にダメージを与えていっています。


 溢れ出るモンスター達もケルティさんの高速攻撃でどんどん死んでいきますし、チップちゃんの狙撃で攻撃を加えようとする相手を倒していますので、今のところは大きな被害もありません。


 人型のモンスターはメレーナさんが内蔵を抜き取り確実に殺していますし、シバルさんの攻撃も一撃一撃が強力なものです。


 そこに師匠やヒビキさんの攻撃が加わっていくので先程よりもこちらが優勢です。


 遠くに見えるツキトさん達の様子を見る限り、もう少しでディリヴァに到達できそうになっています。


 もうあそこまで来たら問題は何もありません。しかしながら、ここで黙っているのも性に合いませんね……そうだ。


 ケモモナ! ちょっと私を掴んで上まで運んでください!


「ん? 魔法で敵の数を減らした方が……いや、何をするのか見せてもらおうか」


 そう言うと、私は触手に絡め取られました。そのままケモモナは上方へと浮かんでいきます。


 見下ろすとモンスターが出現してくる魔法陣がよく見えます。……あそこから出現してくるって事は、あれを塞いでしまえば出現しないということですよね?


 私は大爪を多数作り出し、魔法陣に向かって打ち出しました。


 そして、着弾したと同時に魔法陣を覆い隠すように刃を広げました。蓋をするような感じですね。


 すると目論見通りモンスターの追加が止まります。……これで敵が減りますね! いきなさいケモモナ! 吹き飛ばすのです!


 私がそう命じると、ケモモナはクックと笑い声を漏らしました。かなり愉快そうです。


「まったく……扱いが雑だな。けれども、確かにここからなら狙い放題だ。消し飛ばしてやろう……『マジック・ストーム』!」


 ケモモナは右腕を突き出すと、空中に巨大な魔法陣を作り出しました。


 そこから魔力の嵐が吹き出して、湧き出したモンスターをバラバラに吹き飛ばしていきます。


 ふふふ……素晴らしいじゃないですか。


 確かに私達は場違いかもしれません。それでもこうやって足掻くことはできるということです。


 ということで、私も戦闘しに行きますか。


 このまま私を落としなさい。殲滅してきます。


「わかった。俺はここから魔法を打っている、暴れてくるといい!」


 ケモモナの言葉と共に、私の身体は宙に浮きました。下には私を捕食しようと植物が大きな口を開けて待ち構えていました。


 他のモンスター達も同じようなものです。私を狙っています。


 いいでしょう。楽しくなって来ました。


 そちらにも戦う意志があるというのなら好都合です。全員まとめてかかってきなさいな! 皆殺しにしてあげましょう!


 私はアイテムボックスから槍を取り出して着地と共に食虫植物を惨殺し、残っているモンスターに対して構えを取りました。


 戦闘が始まって数分、ようやくまともな戦いができそうですね……!


 私はニヤリと笑みを浮かべると、そのままモンスターの大群に向かって駆け出したのでした。

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