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※動物を吸うのは程々にしましょう

「君は悪い狐さんだ……俺のマントをゲロまみれにするなんて……もふもふ……もふもふ……」


 くっ……こんな奴にモフられるなんて……殺せッ!


 お酒の飲み過ぎによってケモモナに迷惑をかけてしまった私は、そのケジメとして尻尾をモフられてました。しかも黒籠手を起動した状態ですので尻尾は三本です。こんな屈辱があってたまりますか。


 ケモモナは未だに『黃衣の王』状態なので触碗を器用に使いこなし私のもふみを堪能しております。いわゆる触手攻めというやつで……あひぃ!?


「おっと、殺せなんて言われるから力が入ってしまったな。大人しくもふもふさせてくれれば手荒な真似はしないさ……ところで吸っていい?」


 それやったらマジで串刺しにしてぶっ殺しますからね!


 そう言って私は睨みつけますが、ケモモナは全く気にしていないみたいです。一応ここ拠点なんですけれど? 誰かに見られたらどうするんです?


 五分だけという約束でしたが……もう後悔しております。こんなに長い五分は体験したことがありませんよ。


 しかも触り方が上手なせいで妙にぞわぞわします。くっ殺。


 そんな私の表情をみたケモモナは異形の顔をニンマリとさせて口を開くのです。


「おやぁ? ゲロまみれにしたお詫びをしたいと言って来たのはそっちじゃなかったかなぁ? ちょっと深呼吸するくらい構わないだろう? クククク…………」


 このケモナーがぁ!


 しかしながらケモモナの言うとおりなんですよねぇ……流石に吐瀉物まみれにしたのは罪悪感ありましたし。


 一回吸えば気が済むというのならばちょっと位は多めに見てあげてもいいのかもしれません。結構キモいですけれども。


 ……あーもう! わかりましたよ! 吸いたいならば吸えばいいじゃないですか! その代わり汚したりしたらどうなるか……。


「マジで? よっしゃああああああああああああああ! 吸うぞおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ちょ!? 素のテンションに戻るんじゃ……こゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?


 ケモモナはまるで今まで息をしていなかったのではないかと思う程に、尻尾を吸引し始めました。ダイ○ンもビックリの勢いです。って、匂いを嗅ぐな! 変態! ケモナー! 異常性癖者!


 流石に我慢できなくなったので私は尻尾を振り回して逃げようとしますが、ケモモナの触手の力と量は凄まじく、逃げ出すことはできませんでした。……こ、コイツ!


「まだまだぁ! 時間は後二分残っている! この機会に堪能し尽くしてやるからなぁ! あと、グッド獣臭スメルだ! 健康的だぜ!」


 感想を述べるなぁ!


 その後、残りの二分の地獄を耐え抜いた私は固く誓うのでした。


 嫌なことがあってもお酒に逃げるのだけはやめておこう、と……。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 初っ端から私の精神は死んでしまいましたがイベント8日目です。


 先日のリリア様vsディリヴァの動画が公式から発表された後、最終戦についての情報が開示されました。


 簡単にまとめますと、リリア様に敗れて逃げ帰ったディリヴァを追い詰め、トドメを刺すという内容だそうです。今ディリヴァは自分の本拠地である空間で傷を癒やしているのだとか。……やっぱりというとなんですけれど、勝てなかったんですね。知ってた。


 そこでプレイヤー達は、複数のパーティで協力して戦う事になるそうなのですが……。


 今までのパーティの戦績に合わせてディリヴァの強さが変わる、という内容が記載されていました。無駄だと思っていたMVPの発表には意味があったと言うことです。


 倒したプレイヤー、邪神への攻撃回数、与えた損害から強さが割り出され、実力が近いと思われるパーティを自動でマッチングしてくれるそうでした。


 そして、最高難易度のディリヴァに挑むパーティは本気のディリヴァと戦う事ができるそうで、真エンディングを見ることができるのだとか。


 しかも、報酬は願望の杖に加えてレベル上限の開放まで付いてくるそうです。……トッププレイヤーの皆様向けの難易度って事です。私達には関係ない話ですね。


 まだレベル上限も達していませんし、そこそこの難易度でディリヴァをわからせる事ができるでしょう。虐めて差し上げます。


 ということで、皆さん準備はいいですか? 今日は最初からフルスロットルでいってもらいます。


 私はそう言って、拠点に集まった皆さんに今日の作戦を伝えました。


「要するに作戦ねーのな! ヨッシャ! 何も考えずに大暴れしてやらぁ!」


 既にスケルトンの姿になっているワッペさんがノリノリで叫びます。まぁそういう事です、他のパーティの皆さんの迷惑にならないように気を付けてくださいね?


「戦闘が始まったらすぐに『覚醒降臨』を使う……ということでいいのでしょうか? 自分としては少し様子を見たいところもあるのですが……」


 いえ、オークさんはすぐに覚醒してください。組むパーティにもよりますが、オークさんの全体サポートは詰み防止になります。あるだけで全然違いますからね。


「そうだよシードン! 私達だって役に立てるって事を見せてあげよう!」


 金髪ちゃんは今日も元気です。


 彼女の能力は多数に対して有効に働くものなので、今回はオークさんの支援にまわってもらう予定です。いつも通りですねぇ。


 けれども実際の話、覚醒したプレイヤーというのはとても重要になってくると思います。周囲に対する恩恵がかなり大きいですしね。


 特に、今日覚醒状態になれるのはオークさんくらいですし、最後まで頑張ってもらいましょう。


「おう。どっかの誰かさんがちゃんと『覚醒降臨』の効果を説明していればこんなことになんなかったのになぁ〜。そうすりゃもうちょい楽できたのによ」


 うるさいですよ、骨っ子。犬の餌にしてあげましょうか?


 ここぞとばかりにワッペさんが煽って来ました。骸骨なので表情はありませんがカタカタと音を立てているあたり笑っているのでしょう。


 私は黒籠手を起動状態に変えてワッペさんに向き直りました。先にわからせてやらなければいけない相手ができたのです。死ねぇ……。


「コラコラ、戦闘前なんだから喧嘩をしちゃあ駄目じゃないか。仲良くいこう? 仲良く、ね」


 武器を生成しようと構えたところ、上機嫌のケモモナが割り込んできました。構えた腕を触手で絡め取られてしまいます。


「ちょ、触手やめろ! またバラバラになる!」


 ついでにワッペさんも巻き込まれていました。


「最後まで皆仲良くいこうじゃないか。なぁポロラちゃん? 君もそう思うだろう?」


 あ、はい、そうですね……。


 コイツなんか怖いんですけれど。もふもふしたのがそんなに嬉しかったんです?


 満足したみたいなのでおかしな事はしないはずですが……早くイベント戦始まってくれませんかねぇ?


 そう思っていると私達の目の前にウィンドウが現れました。そこには時間になったので戦場へ移動するかどうかを問う文章が書かれてあります。


「お!? 時間か!」


「……覚悟を決めましょうか」


「頑張りましょう!」


「ああ、必ず倒してやるとも」


 皆さんも準備は良いようです。……さぁ決戦の時です! ディリヴァの泣き顔を見に参りましょう!


 私はウィンドウに表示されている『移動する』という項目に軽く触れました。


 すると、目の前の光景が変わり、広大な何も無い空間が現れます。以前にディリヴァとカルリラが戦っていた場所ですね。


 しかしながら、肝心のディリヴァの姿はどこにもありません。他のプレイヤー方々もです。


 もしかしたら、参加するパーティが全員集まってから戦い始まるのでしょうか……おや?


 辺りをキョロキョロと見渡していると、何も無いと思っていた空間が歪み始めました。今から転移して来るんですかね?


 いったいどんな方が来るのでしょう? どうせだったら知り合いか、強い方が良いの……です……が……。




「おっ、ポロラさんじゃん。いや良かったわー、知り合い居て」


「やぁポロラ! 元気してたかい?」


「ハッハッハ! ワッペ君もいるではありませんか! しかも本気の姿で!」


「おっ、復活地点が居るのかい? いいねぇ死んでも大丈夫なのは心強いじゃないかぁ」


「MVP取ったって聞いけど……一緒に戦えるのは頼もしいな。よろしく、ポロラ」




 嘘でしょ。


 私達の目の前に現れたのはツキトさん、子猫先輩、シバルさん、メレーナさん、そしてチップちゃんの最強パーティでした。誰がそこまで強いパーティを呼べと言ったのですか。


 そして、彼らが現れたということで私達が戦うディリヴァの難易度が判明しましたね……。




 最高難易度です。余裕なんて一切ありません。




 それからも続々とソールドアウトの皆さんが集まって来ました。知っている顔ばかりです。


 えぇ……完全に私達場違いじゃないですか……最後まで生き残っていたら御の字って感じですよコレ。


 ほら、金髪ちゃんですら表情が固まってしまっています。どう考えても不味いですね。


「今の内に復活地点作っとくか……」


 ワッペさんも諦めモードです。さっきまであんなに元気でしたのに……。


 オークさんとケモモナは大して変わりませんね。流石覚悟完了しているだけはあります。


 ……まぁ、ここまで来たんですし、せっかくならやってやろうじゃないですか。最高難易度。


 私達だって強くなっているということを教えて差し上げますよ! びょおおおおおおおおおおおおおお!!


 そうやってヤケクソ気味に自らを鼓舞すると、唐突に変化が訪れました。


 空中に魔法陣が出現し、身体がガチリと固くなります。……いつものやつですね。来ます!


「まったく……とうとうここまで来たのですか。しかしながらもう手遅れです。わたくしは決めました。どんな手を使ってでもこの世界を我が物にすると……!」


 魔法陣から現れたディリヴァは、険しい表情をしながらそう叫びます。


 その姿はボロボロで、本当にリリア様にやられた後のようです。なんなら私でも倒せそうですが……そう簡単にはいきませんよね。




「蓄えてきた全ての力よ……わたくしに従いなさい! 『覚醒降臨』!!」




 ディリヴァのスキルの使用と共に、彼女の姿が変化していきます。凄まじいエネルギーが放出され、空間全体を揺らしていました。


 さぁ、これが正真正銘のラスボス戦です。


 どこまでできるかわかりませんが……楽しませてもらいましょうか!








 この時の私は、完全に油断していました。


 ソールドアウトの皆様が集まって来て、絶対に勝てると心のどこかで思ってしまっていたのかもしれません。


 だから気が付かなかったのです。


 これだけの人材が集まったのは……。




 それが前提の難易度であるということに。

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