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脅しには絶対に屈しないミラアさん(ドM)

「お前の能力、『妖狐の黒籠手』は自分の防具から武具を作り出す能力だということは周知の事実だ。しかし、作り出されたアイテムはそもそもお前の防具だったはず。実際、使っているプレイヤーはステータスが上がっているが……お前はどうだ? ツキトの話では急にステータスが上昇したと聞いたが? ふふふ……」


 黙秘権を行使します。


 ミラアさんの能力により、見知らぬ空間に飛ばされてしまった私は『妖狐の黒籠手』の能力について尋問されていました。私が一番聞かれなかった事です。


 ミラアさんは楽しそうな笑顔でこちらを見つめてきています。前に見たご褒美を欲しがっているのとは違う好奇心に溢れた笑顔をしておりました。


「黙秘権? 知らない言葉だな、私がほしい言葉はそんな物ではないが?」


 む。


 ドMの癖に生意気な、貴女はそういうキャラ似合いませんよ。特に人語を解しているところが気に入りませんね。


 私の中の何かに火が付きました。調子に乗っている姿にちょっとイラッとしたのです。


 先ずは地面に四つん這いになってぶーぶーと懇願してみたらどうですか? そうしたら私の機嫌もよくなるかも知れませんよ?


 そのくらいどうってことないでしょう? やらないんですか? やれ。早くやれ。


 私はそう言いながらその辺にあった椅子に座ってふんぞり返りました。


「え……い、いや、今はそういう気分じゃないんだが……」


 人語を喋るなぁ!


 私は即座に黒籠手から鞭を生成、ミラアさんの足元に目掛けて振るいました。


 なんですか? 自分の立場を考えて行動しなさいな、そんな態度でいいと思っているんです?


 それと、既に貴女は散々辱しめられている事を忘れてしまったんですか? あの時はとても楽しそうにぶぅぶぅ鳴いてくれたのに……残念です。


 今の私のステータスは前とは全く違うというのに、あの時よりも貴女を喜ばせてあげることだってできるんですよ……?




 例えば……こんなふうに。




 私は地面の中から刃を噴出させ、ミラアさんの周囲にあるものを作っていきます。


「これは……」


 それはあまりにも有名な拷問器具でした。


 いわゆる鉄の少女といわれる物で、一般的にはアイアンメイデンという名前で呼ばれていると思います。


 女性を象った箱の中部には幾つかの長い針が並んでおり、中に入れられてしまったらひとたまりも無いでしょう。


 既にミラアさんはその中心に収まっており、後は蓋を閉じれば針はその身を突き刺し、想像できない程の苦痛が彼女を襲うはずです。


 そんな状況になってしまったミラアさんの顔に変化がありました。


「こ、こんな脅しには屈しないぞ……! 痛みで私の事を自由にできるなんて思わないことだな!」


 ちょっと楽しそうです。……え~? 本当に痛みで言うこと聞いてくれないんです~?


 ちょっと閉めてみよっと。


 私は両開きになったアイアンメイデンの蓋をゆっくりと閉めようとしました。長い針の切っ先がゆっくりとミラアさんに突き刺さります。


「んくぅ! この程度で……屈するものか……! ハァハァ……」


 屈しないそうです。


 実のところ、本人を拘束していないので逃げようと思えば簡単に逃げられたんですけれどね? 逃げなかったということはそういうことです。


 私はそう判断して口元を歪ませました。


 ……違うでしょう? 貴女が言いたいことはそんな事じゃないはずです。


 自分の欲望に忠実になりなさいよ、私が知っている顔はそんな物じゃありません。素直になって私に媚びちゃいなさいな。


 もっともっとって……。


 私が囁くようにそういうと、ミラアさんは困惑の表情を浮かべました。


 そして、少し間をおいて、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、震える声でこう言うのです。






「ぶ、ぶひぃ……」






 つまんな。


 私はアイアンメイデンの蓋から手を離し、先程座っていた椅子に座り直しました。……そこはお願いしますって言うところでしょ。じゃないと罰を与えられないじゃないですか。素直に従っていれば上手くいくなんて思わないことですね。


 はい、それじゃあお話でもしましょうか。私の黒籠手についてですねー。


「なっ……!? ここで止めるとはどういう事だ! せっかく気分が高まって来たというのに……焦らすような真似をしないでくれ! ハァ……ハァ……」


 ミラアさんは人語を取り戻し、頬を紅く染めながら私を見つめてきます。


 うるさいですねぇ~。ほら、むち打ちしてあげるから大人しく出てきなさいな。聞きたいんでしょう? もぅ。


 私は調教を懇願するドMをアイアンメイデンから引きずり出して、その辺の床に転がしました。


 その後、数回ひっぱたいてあげると、甘い声を部屋に響かせてくれます。


「ひゃ……! きゅっ……ん、前より……ずっと凄いぃ……」


 気持ちわる。


 どうしたらこんなに気持ち悪くなれるのか甚だ疑問に思いますが、理解したくもありません。


 しかも凄いと言っている割には全然傷が付いていませんし。相変わらず鬼のような耐久ですねぇ。


 でも、こんなんじゃまともに戻るまで待っていたら日がくれてしまいますね。もうこのまま話を始めてしまいましょう。


 ……さて、ミラアさん。私の黒籠手武器ですけれどね。


 貴女の言うとおり、他人がそれを使って戦うと、経験値が僅かながら私にフィードバックしてきます。ツキトさん何かしら勘づいていたみたいでしたが……ね!


「あぅっ! あぁ! んぁっ……」


 すぱーん、すぱーん、すぱーん。


 ミラアさんの悲鳴と、鞭がその身体を痛みつける音が響きます。やはりまともに返事を返してくれません。


 これでは会話ができませんね。……お仕置きが必要です。


 いやぁ、皆さん私の作った武器で頑張ってくれているみたいでして、毎日、毎日、毎日、なにもしなくても、沢山の経験値を送ってくれるんです。


 おかげで短期間でこんなに強くなれました。感謝感謝ですよぉ……!


 そう言いながら私は更に鞭を振るいます。


 ミラアさんも強めに虐められて嬉しいのか、びくんびくんと跳ね回ります。口からはよだれが出ていて見れる物ではありません。


 ……そうそう、ズルいなんて言わせませんよ?


 使用料金をとってもいいのに無料で差し上げているのですから。しかも、使っていてデメリットの様な物もありませんし?


 今まで黙っていたのは、もしかしたら、私に経験値が入る事を気に食わない人もいるかも知れませんからね。自衛の為です。


 ですので、この事は内密にお願いしますよ? ミ・ラ・ア・さんっ!


「ひゃうんぅ!?」


 より強く鞭を打ち付けると、ミラアさんは嬉しそうな声を上げてピクピクと震えだしました。少しは満足してくれたみたいです。


 私は彼女の近くによってその顔を除き混むと、ミラアさんは満たされた顔をしながら何かを呟いています。……え、なんですか? まだ足りないんです?




「お前が作った武器……プレイヤー間で取引されていたぞ……」




 はい?


 え? どういうことです? 私『ノラ』にしか作って置いていませんよ?


 しかも取引ということは金銭のやり取りがあったということです。私が善意で作った物を……。


 ちなみに幾らで取り引きされていたんですか? 結構便利な成長アイテムですからね、中々いい値段になったのでは?


「そこが気になるのか……。よ、よくはわからないが、安いので50万という話を聞いたことが……」


 ミラアさんの話を聞いたとき、私の中で衝撃が走りました。


 そのくらいの大金があれば大抵の物は何でも買えてしまいますよ。何横流ししてくれてるんです?


 そういえば最近死んでいませんし、クランには黒籠手武器もまだまだ残っているはずです。


 少し確認しにいかなければなりませんね。そして、横流しした奴らから儲けたお金を巻き上げなければなりません。もしくは流通ルートを教えてもらわないと。


 そうなったらこんなところにはいれません。稼ぎ時です。


 私はそう思い、先程作ったアイアンメイデンに飛び込みました。そして無理矢理蓋を閉めて私自身にその針を突き刺しました。自決です。


 こうすればここがどこであろうとも刑務所にひとっとびですからね。


 ちょっと逝ってきまーす。うごぁ……。


 という事で私はミンチになりました。


 南山……。

・残されたミラア

「あぁ……また傷つけられてしまったな……はぅう……」


 存外に満足した模様。

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