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はーい、五人組つくってー

 イベントが始まりました。

 ディリヴァ陣営と女神陣営に分かれてのイベントだそうです。それで『ソールドアウト』もいろいろ動くとのこと。


 ま、簡単にまとめてしまうと、『紳士隊』の一部の方達はスパイとして向こうの陣営に入ったそうです。


 あちらの情報を逐一私達にお知らせしてしてくれるのだとか。……そういう仕事もするんですね、なんか特殊部隊感あります。


 で、わかったこと。


 ディリヴァ陣営が本部として使っている場所には、大量のアイテムが貯蔵されていたようです。


 『紳士隊』の宝物庫から盗み出されたアーティファクトから、貴重なポーション、スクロール、魔法書まで、様々な物が。


 特に、アイテム関連については度肝を抜かれたとワカバさんは言っていました。


 彼等は生産職のプレイヤーを使い、市場からアイテムを買い占めて居たそうです。というか、かなりの人数の生産職がディリヴァ陣営についていたそうでした。


 そして、市場を操作することができるようになった彼等の行ったことは、プレイヤーの活動位置の操作です。『クラブ・ケルティ』に異常に人が集まっていた事ですね。


 つまり、一つの街の流通だけを潤沢にすることで、一ヶ所に人を集めることに成功したみたいです。……皆エナドリが飲みたかったんですねぇ。


 一ヶ所に集めた目的は簡単、より多くの人を集めることにより邪神化候補を見つけ、現れた邪神を討伐させる為、全てはディリヴァに力を貯めさせる為でした。


 ディリヴァに力を貯めさせることについてはツキトさんの手によって防がれましたが、彼等の作戦は有効だということが証明されたということです。


 おそらく、他の街に出現した邪神はレベルの低いプレイヤーを狙って出現させたものだったのでしょう。やたらあっさりと倒されていましたしね。


 その証拠に、プレイヤーが多く残留し、強いNPCが沢山いる、私達のクランがあるコルクテッドではチップちゃんが邪神化されていました。


 その位強い人を邪神化させても討伐できるだろうと思っていたからです。……けれど、チップちゃんは予想外の方法で邪神化を防ぎ、自らの手で邪神を倒しました。


 これはディリヴァ陣営にとって衝撃だったそうでした。


 何故ならば、当初の彼等の予定としては、ツキトさんや子猫先輩を邪神化させて、大暴れさせる予定だったのに『覚醒降臨』を防ぐ方法を見つけられてしまったからです。


 もしも討伐されなくても、街に損害を与える事ができればその分あちらの報酬は増えるみたいですからね。……まぁ例に出した二人は『強欲』のギフトを持っているので自力で邪神化を解除できるんですが。


 計画を潰されてしまったディリヴァ陣営は、邪神化させる人員の割り出しで大忙しだそうです。


 邪神化を防ぐことができず、それなりに強いプレイヤーを探さなければなりません。


 当初は『ソールドアウト』のプレイヤーを狙っていたのですが……対策知っていればこちらとしても対抗できますからね。情報の共有ができている私達を狙うことは難しくなったでしょう。


 ……。


 あれ? むしろ本拠地を知っているのなら、こちらから殺しに行けば良いのでは? イベント前に根絶やしにしてしまえば良いのです。


 ちょっと私が行って暴れて来ましょうか。


 そう言いながら、スッと私は立ち上がりました。


「ちょ!? ねぇちゃんイベントの内容も、本拠地の場所も知らないでしょ!? 座って! 座って!」


 む、確かに。後でワカバさんから聞き出して襲撃致しましょう……。


 ウィンドウに目を戻すと、説明が終わったワカバさんが尊大な態度を見せつけながらクキキキ……と笑っております。


『いやぁ、楽しみだなぁイベント。お前らも自分のつきたい陣営につけよ? しっちゃかめっちゃか掻き回してやろうぜぇ……!』


 うわ、この幼女怖い。


 私達の陣営にこの人がいないという事は救いですね。獅子身中の虫ってレベルじゃありませんよ。マジで。


 周りが引いている中、子猫先輩だけは頷きながら楽しそうな表情を見せております。


『そうだね! ワカバくんの言うとおりだと僕も思うな! ……別に女神陣営じゃないといけないなんて事はないさ。自分が楽しめると思った陣営についてほしいし、ディリヴァ陣営についた人を責めたりしないで欲しいんだよ』


 あー、なるほど。


 子猫先輩としては強制したくないみたいです。……そういえば、あっちの陣営につけば『覚醒降臨』が使えるようになるんですもんね。


 覚醒状態を使いたい方もいるでしょうし、それが目的でそっちの陣営にいく人もいるかもしれません。


 でも、邪神を倒すことができれば『強欲』のギフトカードを手にいれることもできそうですけれど……。


『さて、それじゃあ今回のイベントを確認していこうか! それじゃあ、チップ、よろしくね!』


 そう言うと、子猫先輩は下がってツキトさんの隣に立ちました。


 代わりにカメラの前にチップが立ちます。


『クラン『ノラ』のチップだ。まずは女神陣営のイベント内容について説明させてもらう』


 チップちゃんの話をまとめますと……。


 今回のイベントは二つの陣営に別れて行うPvPがメインのイベントです。どちらの陣営につくかで遊び方が違うのだとか。


 女神陣営の主な目的は街の防衛です。


 出現した邪神を討伐をすることができれば、その街に滞在していた女神陣営のプレイヤー全員に報酬が配られます。


 それと、邪神と戦っている際にはディリヴァ陣営が妨害してくるそうです。


 防衛中に倒されると、ログインしなおしても邪神戦には参加できなくなるそうです。復活の魔法も効かないのだとか。


 対して、ディリヴァ陣営の目的は街の破壊です。


 代表者が誰かを邪神化させると、全ての街に邪神が現れるそうです。その邪神と共に街を襲うのが彼等の仕事です。


 そして、あっちは別に街を滅ぼす事ができなくても報酬が出るのだとか。


 倒した女神陣営のプレイヤーの数や、街に出した被害量よってディリヴァから直々にご褒美を貰えます。かなり楽です。貰える報酬も豪華そうなのがなんとも言えません。……運営もディリヴァ陣営に行くプレイヤーが少ないことは予想できたみたいですねぇ。


 ちなみに代表者もディリヴァが指名し、狙うプレイヤーも指定してくるみたいです。おそらく邪神化させられるプレイヤーはレベルの高い方になるのでしょうね。


 皆でプレイヤーを邪神化させるために行動するのはちょっと面白そうですね。


 イベントを盛り上げるために、邪神化させるプレイヤーに頭を下げに行くという方法もアリと言えばアリなんでしょうけれど……なんかディリヴァ陣営には無駄にプライドが高い方が多いみたいなので、そんな事はできないでしょうね。残念な方々です。


 ……と、大体こんな感じでしたね。


 ちなみに黒子くんは女神陣営ですか? お仕事でディリヴァ陣営に潜入という事もしそうですけれど……。


「オレ? 普通に女神陣営だよ? もう黒子仲間で参加するって決めちゃったんだよね」


 ……仲間?


 なんですかね? なんというか引っかかる言い方です。まるで複数人で参加するみたいな言い方なんですけれども……。


「お知らせ読んでないんだもんね……多分その説明もあると思うよ」


 あ、これヤバイやつだ。


 私は直感的にそう思いました。多分これ事前にチェックしておいた方がよかったやつですよ。


 もしかしたら手遅れの可能性もあります。……ちょ、ちょっとウィンドウを出してみましょう。多分杞憂だと思うんですが……。


 私は運営のお知らせをを表示し、必死に確認し始めました。


 すると、ちょうどウィンドウの中の子猫先輩が楽しそうな声を出しました。


『説明ありがとう! さて、今回のはパーティを組んで戦うイベントだっていうのは皆確認したかな? 報酬で貰える『ギフトカード』はパーティ分貰えるからね。自分のギフトや、既に持っている種類は皆で交換するといいよ! ということで、早く五人組を作ってね!』


 ……は?


 な、なんですと?


 パーティを組んで参加? そして報酬はギフトカード? え、やるしかないじゃないですか。


 私がギフトカードを使用すると、何故か尻尾が増えます。そして、私の尻尾が増えると『妖狐の黒籠手』が使いやすくなるんですよ、実質強化された状態になります。


 そして、後から気付いたのですが……全てのギフトカードを使ったら、私の尻尾って最大九本になりません?




 狐で尻尾が九本って、絶対何か起きるでしょ。




 『プレゼント』を開封するには条件を満たす場合があるそうですし、もしかしたら全てのギフトカードを使用して、九尾の狐になったら変化が起きると思ったのです。


 もしかしたら、更なる能力を開花させることができるかもしれません。その為にも、今しなければいけないのは強いパーティ集めです。


 幸いにも、私のは強い方の知り合いが多いですしねぇ。確かに事前に知っておいた方がよかった情報でしたが、一人位、フリーな方はいるでしょう。


 今回のイベントは貰ったも同然です。


 そう思い、私はニヤリと口角を歪めたのでした……。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 会議が終わり数十分後……。


 私はクランのロビーで燃え尽きておりました。もちろん一人です。……めぼしい人が全員パーティを組んだ後だったなんて、そんな事思ってもいませんでしたよ……。


 最初に声をかけたのはチップちゃんでした。


 友達ですし、パーティに入れてくれると思ったんですけどね。もう彼女のパーティメンバーは揃っていました。

 ツキトさんに子猫先輩、シバルさん、メレーナさんというガチで攻略にかかっているメンバーです。やっば。


 チャイムさんもクランの幹部を引き連れて参加するみたいでした。なんかもう少しで落とせそうでしたけど、幹部の皆さんがチャイムさんを連れ去ってしまいましてね、ダメでしたよ。


 師匠にも声をかけたんですけどね、あの人アークさんとの二人パーティでやるって聞き耳持たないんですよ。なんかプライドみたいのがあるみたいですね。


 自称お兄ちゃん'sにも声をかけようとしましたけど、彼等はちょうど五人ですし、もうそのまま参加するのは目に見えています。空気読みました。


 タビノスケさんも自分のクランメンバーと一緒に参加するって言っていましたし、ケルティさんは論外ですし……私の人脈って広いようで意外に狭かったんですね……。


 どうしましょう……いっそのこと一人で参加して大暴れしてやりましょうか?


 沢山のプレイヤーが集まるということは、それだけ多くの貴重なアイテムが集まるということです。


 敵味方関係なく殺しまくって、アイテム回収でもしてしまいましょうか……。


「よぅ。元気してっか? 久しぶりだなぁ、ポロラぁ」


 ……ゲスい声出してんじゃないですよ。なんか用ですか? ワッペさん。


 項垂れていた顔をあげると、そこには憎たらしい顔をした戦士風の格好をした方が立っていました。『紳士隊』のワッペさんです。


「おう、用があっから来たに決まってんだろ。……パーティ組もうぜ、パーティ。俺も女神陣営だからよぉ」


 うっわ似合わな。


 貴方みたいなゴロツキはディリヴァ陣営に入って街の略奪に参加しているのがお似合いですよ。


 正義の味方のふりをするなんてらしくないですね、何か理由があるんですかぁ?


 私はバカにしたようにそう聞き返します。……が、彼の表情はとても真剣な顔をしていました。なんか本当に理由があるみたいです。


「あるんだよ。……イベントの内容を見て、協力者を探してた。俺の知り合いで強いやつって思ったらお前の顔が勝手に浮かんできてな。頼む、パーティを組んでくれ」


 ……さっきから似合わない事だらけですね。


 何があったんですか? ちょっと教えてくださいよ。貴方がそこまで真剣になれる理由が知りたいのですけれど?


 私がそう言うと、ワッペさんは一言。




「このゲーム……年齢制限があるのは知ってるよな?」




 それで、私はハッとしました。


 街を滅ぼす。


 それがどういう意味なのか。


「頼む。情けねぇ話だけどよ、この世界に思い入れがあるとこもあるんだ。仲の良いNPCもいる。俺一人じゃ守れるものも守れねぇ、力、貸してくれ」


 彼の頭を下げる姿を見て、私は完全に考えが変わっていました。


 その考えに賛同できるからこそ、私は彼の手を取らざるを得なかったのです。……わかりました、パーティを組みましょう。リーダーは私ですけどね。


「……っ! お前が手伝ってくれるのは助かる! 気合い入れていこうぜ!」


 そう言う彼の姿を見て、私はふと思ってしまいました。


 このゲームは18歳以上を対象とし、全年齢モードとR18モード選ぶことができます。


 そして、R18モードにして、街を略奪するということは……考えたくもありません。胸糞悪い。


 そんな事させてたまりますか。そんな被害があったなんて後から聞いても嫌な気分になりますよ。


 この時、私の今回のイベントにおける立ち位置が決まりました。私の能力は防御向き、ちょうどいいです。


 ……やってやりますよ。あちらが全て奪うというのなら、こちらは全てを守りきって見せます。


 ゴミ達が好きにできると思わない事ですねぇ……!


 こうして、私とワッペさんは次のパーティメンバーを探し始めたのでした……。


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