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浮気者には制裁を

 ……という事で、私が知っているのはここまでですね。この後の事は貴方にお任せしますよ。これ以上は私が首を突っ込む話ではなくなってきますし。


 私が説明が説明を終えると、ツキトさん「そうか」と一言だけ呟いて少しの間黙ってしまいました。

 なお、私は未だに地面に転がされております。


 そして、次に口を開いたとき彼はどこか切なそうな顔をしておりました。


「……この事さ、先輩には話してないよな?」


 ええ、もちろんですとも。


 本人に直接言うよりは貴方から話してあげたほうが良いと思いましたしね。言うも言わないも貴方の判断でどうぞ。


 正直に言ってしまいますと、私はツキトさんに連行されなくてもその内この事は話していたでしょう。姉から話を聞いていましたし、子猫先輩も知っておいた方が良いと思いましたから。


 けれども、お二人の関係を考えたら子猫先輩にだけ教えるというのは良くないと思ったのです。交際関係にある以上、これは二人の問題ですので。


「わかった、教えてくれてありがとう。……悪いね、無理矢理連れて来ちゃって」


 ツキトさんはそう言いながらバツの悪そうな顔をして立ち上がります。……別に気にしてはおりませんよ。というかここどこなんですか? まるで私たちがいつもいる世界とは別の場所のように見えるんですけど?


「ん? ……ああ、ここね。そうだな……簡単に言えば裏ダンジョンって奴かな? この世界全体がデカいダンジョンになっているんだよ」


 私の質問に、ツキトさんはさも当然というように答えました。いや、多分貴方位しか知らない情報ですよね?


「女神様達の家もこの世界にあってさ、遊びに行くと固有イベントが始まるんだ。結構良いものくれるんだよな、これが」


 で、貴方達はそんな場所に拠点を構えていると……いったいどんなプレイをしていたらこんな場所に辿り着くんですかね?


 普通に攻略の最前線突っ走っているじゃないですか。裏ダンジョンとか一言も聞いたことがありませんよ? こちらの世界にいる攻略組が聞いたら泣き出しそうですね……。


「んー、アイツらもたまに入り口辺りを彷徨いてるけどレベルが低すぎてなー。最深部はおろか、中間地点のセーフゾーンにも来れて無いんだ。……さて、そろそろ無駄話はやめるか、クランに帰してあげるよ」


 え、まだ聞きたいこと沢山あるんですが?


 この場所への行き方も気になりますし、女神様のお家に遊びにいったらどんなアイテムが貰えるのかも大変気になります。教えてもらえればモチベーションもガッツリ上がるというものです。


「そういうのって自分で見つけた時の方がテンション上がるじゃん? ……よっと」


 ツキトさんは私のお願いをやんわりと断ると、アイテムボックスから大鎌を取り出して構えました。口調からは想像出来なかった行動に、背中から冷や汗が吹き出しました。


 ……え? 帰してあげるってそういう意味なんですか!? 『帰還』のスクロールくらいなら私も持ってますしそんなことしなくても良いですって!?


 『リジェネレーション』の魔法使ってくださいよ! 貴方のプレイスタイル基本万能型でしょう!? 魔法も使えるのではないんですか!? 回復してもらえれば自力で帰りますって!


 私はじたばたと身体を動かして叫びますが、ツキトさんは申し訳なさそうに……。


「ごめんね。傷を回復魔法で塞いじゃったからリジェネ効かないんだよ。もう一回傷を作ったらHP0になって死んじゃうだろうし、そんな手間をするくらいなら一度殺した方が早いし……」


 頭のおかしいことを言ってきました。……要するにめんどくさいだけじゃないですかー! あ、視点変わった!? 殺されるぅ!?


「やっぱコレが一番早いんだよなぁ……遺言は?」


 優しげな言葉で微笑みながら、ツキトさんはそう問いかけてきました。確実に殺されるみたいです。


 仕方がないので、私はおもいっきり叫びます。




 ……くっ! 私を連行した事は、子猫先輩に報告しますからね! ロリっ娘に怒られて、拷問されるのは嬉しいd




 すぱーん。


 嬉しいでしょうねぇ!と、最後まで言い切ることができないまま、私の首は大鎌によって切り飛ばされました。……なんか私が小さい子に拷問されるのが好きみたいになったじゃないですか。そんな趣味ありません。最後まで言わせなさいよ。


 私は変更した視点のままツキトさんを睨み付けていましたが、彼は散らばった残骸を回収しながら呟いてました。


「……いや、先輩は見た目が幼いだけでロリじゃないから、合法だから……俺はロリコンではない」


 どうあがいてもロリコンの言い訳だ……。


 でも、一応は純愛……なんですかね? まぁそういうことにしておきましょう。……おや?


 いつの間にか、彼の後ろに誰かが立っていました。黒髪で村娘のような格好をしている彼女の背には、美しい白い翼が生えております。……もしかして、輪廻の『カルリラ』ですか?


「ツキト様、どうしたんですか? なにやら誰かとお話をしていたみたいでしたが……」


 カルリラの言葉で、ゆっくりと振り返ったツキトさんの顔は真っ青になっておりました。


「か、カルリラ様。ちょっと聞かなきゃいけない事がありまして、お客さんを呼んでたんですよ。もう帰りました、はい……」


 うっわ、あやしっ。


 目が泳いでいますし、足元に散らばった血痕を隠しきれていない時点でなにかあったことは明白なんですよねぇ……。


「そうなのですか? それでは、少し聞いてみましょう……パスファ」


 彼女がパスファの名前を呼ぶと、ツキトさんのすぐ隣にその姿を現します。妖精の羽と、たわわなお胸が特徴的な女神様です。


「……は? おい、ちょっと待て。お前いつから……」


 ツキトさんはパスファを見て明らかに動揺している姿を見せています。そんな彼の事は放ってパスファは口を開きました。


「カル姉、コイツ女の子連れ込んでいたよ。しかも身動きを取れない状態にして。……確実に変な事をしようとしていたね」


 そのニヤニヤとした表情からは悪意しか感じられませんね。いえ、全部事実なんですが。


「ちょっとおおおお!? 違うだろ!? そんな会話してなかったじゃんかよ! 俺を裏切るのか? 俺達は仲間じゃ……ハッ!?」


 パスファに泣きつこうとしたツキトさんは何かに気付いたようでその動きを止めました。

 その視線の先には包丁を持ってニッコリと笑顔を浮かべたカルリラの姿があったのです。


「また……浮気ですね?」


 ですか?じゃない辺りに圧力を感じますね。


「ち、違うんです。カルリラ様……」


 ツキトさんはそんな彼女の様子に臆したようで、後退りながら早口で言い訳を並べていきます。


「確かに女の子を連れて来たことは認めましょう。しかしですね、彼女は俺のストライクゾーンから大きく離れているんですよ。俺の一番大事な人は先輩なんです。恋愛感情もありませんでしたし、下心なんて一切ありませんでした。本当です。達磨にして運んでいたときも全く変な気持ちは起きませんでした、たまに顔に当たる尻尾がもふいとは思いましたけれど、それは仕方がないじゃないですか。そ、そもそも、浮気の定義ってそんなに広くないですよね!? 女の子と話したくらいで浮気なんて言われたら俺、この家に帰れなくなっちゃいますからね!? 繰り返し言いますが、俺には一切の下心は……っえ」


 いつの間にか。


 カルリラはツキトさんと密着する程近付いていました。


 彼女が握っていた包丁の刃は彼のお腹に深々と突き刺さっています。見た感じもう助からないでしょう。これが浮気者の末路なのですね……。


「そう言って……リリアの頭を撫でたり、フェルシーの尻尾を握ったり、グレーシーに抱きつかれたりしているんでしょう……? 知っているんですよ……!」


 カルリラは突き刺した包丁をそのままぐるりと回転させました。それが止めになったのか、ツキトさんの身体は弾けミンチになってしまいます。


「……私には何もしてこない癖に! 反省してください……!」


 いろいろと事情があるみたいです。全員に手を出してないところが、よりたちが悪い感じします。ハーレムじゃないんですねぇ。


 おっと、もう強制ログアウトまで時間がないみたいです。


 もう少しこのドロドロ劇を眺めていたかったですけれど仕方ありません。大人しくログインしなおしましょうか。


 そう思った私は、殺されたツキトさんへの笑いを必死に抑えながらログアウトをしたのでした。


 ザマァァァァ……。


・包丁

 やっぱり浮気者を殺すのならこれが一番だよねー。カル姉も当然のように常備しているし。でもそれで料理してほしくないんだけどなー。いや、殺されるの見るのは面白いんだけどね?

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