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集合だ!

 これ邪神化じゃないじゃないですね、あれ~?


 子猫先輩を対象にした『覚醒降臨』のウィンドウを見た瞬間に、私は走り出していました。……違いますよ? 逃げようなんて全く思ってませんでしたからね? ちゃんと戦いに行こうとしていました。


 本当に邪神化したんだったら、子猫先輩を放っておくことなんてできませんって。無視したら世界が滅んじゃいますよ、さっき出てきたレベルも異次元……というかカンストしてましたし。


 という訳で、シバルさんと一緒に子猫先輩の元へと馳せ参じようと思っていたのですが……どういうことですか? これ?


「ミー君は『プレゼント』を二つ持っていますからな。不死の『ロータス・キャット』とツキト君から贈られた『祝福の指輪』……当然宿しているギフトも二つあるはずですぞ」


 私の疑問に、シバルさんは走りながら、どこか諦めたような顔をしてそう教えてくれました。


 『プレゼント』が二つあることは知っていましたけど『祝福の指輪』……ですか。


 師匠が前に話していた『強欲』のギフトを持ったプレイヤーの特徴。


 『強欲』持ちのプレイヤーの『プレゼント』は、他人に使ってもらうことで真の能力を発揮するという事です。


 それはきっと、ツキトさんも例外では無いはずです。……確かにお揃いの指輪をしていましたよね、あの二人。


「ええ、しかし本来『祝福の指輪』は六柱の女神の内、一柱に贈る事によって仲間にすることができるといった代物です。それをミー君に差し上げたということは……言わなくてもわかりますな?」


 それは……ちょっと素敵ですね。


 魅力的な女神様達を差し置いて、自分の一番大事な人に指輪を贈ったというのは少し見直すべき話でしょう。


 きっと指輪を贈られた子猫先輩も嬉しかったに違いありません。じゃなきゃ、左手の薬指に指輪なんてはめませんよ。……やっぱり、お二人は特別な関係なんですね。これから助けに向かうのは野暮でしょうか?


 私は少し恥ずかしがりながらそうシバルさんに問い掛けます。


 女神様よりも大事な人と一緒に強敵に立ち向かっているのです。それを邪魔するのは少し気が引けました。そんな事を考えているとは、私の性格では口が裂けても言えませんが……。


「いえ、問題はないですぞ? 結局ツキト君は自力で全ての女神を仲間にしましたからな! 今は拠点に置いてきているみたいですが、強敵と戦うときは女神達を引き連れ戦っていたので、我々が参戦しても問題はないでしょう!」


 オーケーです、全力で殺しましょうか。


 前言撤回……やっぱり浮気者ですよアイツ。


 聞いた感じ、女神様を仲間にしたのは子猫先輩に指輪を贈ってからで間違いはないでしょう。完全に浮気です、殺さなければなりません。


 あんなに可愛い彼女さんがいるというのに、新しい女を求めるなんて言語道断。誰かが天罰を与えなければ。


 しかし、頼りの女神様達は浮気者に籠絡されてしまった模様。だから代わりに罰を与える人間が必要です。……私しかいませんねぇ。


 さぁさ、覚悟しなさいな。もう言い逃れはできません。その浮気癖ごとすり潰して差し上げましょう……ウジ虫ぃ……。




 ……おや?




 クックックと含み笑いをしていた私の目の前に、淡いピンク色の花びらが漂っていました。


 今まで前進してきた森には、花なんて全く咲いていませんでした。なので、ヒラヒラと舞っているそれは、雪景色も相まって綺麗に感じますが、とても場違いに見えてしまいます。


 思わず足を止めて、手を伸ばしてしまったのもそのせいなのでしょう……こきゃあ!?




「みゃああん!」




 こ、子猫先輩!?


 目の前で漂っていた花びらはぽんっ、という軽い音と共に黒い子猫に姿を変えました。

 見た目はまんま子猫先輩です、というか本人じゃないんですか、これ?


 黒猫は伸ばした腕に乗っかり、そのまま私に飛び付き……胸の中に入っていってしまいました。まるで吸収されたようにも見えましたね。


 って、何が起きたんです!?


 シバルさん、これはいったいなんなのですか!? 私には何が起きているかさっぱりですよ!


 私は反射的に振り返り、シバルさんに助けを求めました。……しかし。


 「みゃー」

              「うみゃああ」

      「ごろろろ……」


「ハハハ……なんなのでしょうな?」


 シバルさんは困惑した笑顔しながら、子猫達のキャットタワーになっていました。どうやらわからないこともあるみたいですね。


 まぁどう考えても子猫先輩の『覚醒降臨』の効果なんでしょうけれど、いったいどんな効果なのか全く予想がつきません。


 先程のウィンドウから考えるに、子猫先輩の能力は『輪廻のカルリラ』に関係するものなのでしょう。……確かカルリラはこの世界の死を司る女神でしたね。いわゆる死神さんです。


 そんな彼女の力を取り込んだ能力……いったいどんなものなのか……。


『あー、あー、あー。聞こえているかい? ま、僕の分身を取り込んだ人にしか聞こえていないから、どうせ聞こえているんだろうけれど』


 !?


 思考を巡らせていると、私の頭の中に子猫先輩の声が聞こえました。いつも通り、楽しそうな声です。


『ちょっと説明してあげるねー。君達が見たであろう蓮の花弁は僕の分身だ。取り込むことで完全に身体が回復するよ、バフもちょこっとかかる。デメリットはないから安心して。それと、僕の声が届くもの効果の一つだよ』


 あ、そうなんですか。安心しました、デメリットは無いみたいです。


「完全回復の能力……擬似『ロータス・キャット』とは、驚きましたぞ」


 シバルさんは自分の身体を登っていた子猫を抱き上げて驚きの声を漏らしていました。……驚いているところ悪いですが、子猫先輩の元へ急ぎましょう。


 こうやって私達の場所に能力が現れたということは、もしかしたら追い詰められているのかもしれません。


 強化もされているみたいですし、ちょっと急げばすぐに追い付けるはずです!


 私はそう言って遠くに見えている『アーマーズ・ロード』に向かって駆け出そうと一歩踏み出しました。


 そして、目の前の木にぶつかりました。……は、はい? 速すぎじゃありませんか?


 一瞬なにが起きたのかわかりませんでしたが、振り替えって見ると先程いた場所から数十メートル離れた場所に、私は倒れていました。


 たった一歩踏み出しただけでこれです。


 慌ててウィンドウを開き、ステータスを確認してみるととんでもない数値が加算されていました。私自身の覚醒も合わせると、普段の倍以上のステータスになっています。


 これはちょっとというレベルじゃありませんね……。


『今の現状を伝えておくね? 今、ツキトくんがキーレスと戦っている。僕はこの能力を使っている間は動けないから、早く皆にも来てほしいな』


 ……!


 チャンスです、浮気者の魔の手から子猫先輩を解放する機会が巡ってきました。


 ここでツキトさんから手柄を奪い、彼女の目を覚まさせてあげるのです。


 私は立ち上り、大爪を大量に展開しました。スピードに馴れていない内は、目の前の障害物は全て壊して進みましょう。……今いきますよ!


 ロケットの如く、目標に向かって私は飛び出します。


『……それから、この能力は僕の理想なんだ。僕自身は強くなくたっていい、戦えなくてもいい』


 目の前に立ちはだかる木々や、生き残っていた敵兵士を凪ぎ払いながら、私は真っ直ぐに進んでいきます。


 止まるつもりなど、微塵もありません。


『僕は、皆に強くなってほしかった。強くなっていく姿を見るのが、楽しくて仕方がなかった』


 あともう少し。


 もう見えてきました。崩壊した『アーマーズ・ロード』と、戦っているロボットとツキトさんの姿が確認できます。


 崩壊した残骸からレーザー銃が現れ、ツキトさんを狙っていました。子猫先輩を狙うものは彼女の魔法によって破壊されています。


 なにが凄いって、レーザー攻撃を見切りながらキーレスさんの攻撃にも対応しているんですよね。まさに達人芸です、後ろからの攻撃見えているんじゃないかと思うような動きです。


 あんなに活躍されたら困ります、早く私がキーレスさんを殺さなければ……きゃん!?


『だから、この能力を貰えたのは幸運だった! 僕が君達を導く! 君達の命の火を、絶対に消させない! 『ソールドアウト』集合だ!』


 背中に衝撃を感じて、私は立ち止まりました。


 その後、尻尾を撫で回されるような感触があり、背中にゾクゾクと電流のようなものが走ります。こ、この感触、しっているかも……。


 そう思いながら、恐る恐る振り向くと……。




「もっふもふだぁ……、ケルティちゃんの為に、こんなに魅力的になってくれるなんて、私は幸せだなぁ……」




 七本の尻尾に包まれて、恍惚の表情をするケルティさんの姿があったのです。……い、イヤァァァァァァァァァ!? れ、レズエルフ、レズエルフだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?


 前にマッサージをされた記憶が甦り、私はパニックを起こします。


 とにかく逃げようと前に走りました。なんかお互いに大技を出そうとしていたツキトさんとキーレスさんを弾き飛ばしたり、タビノスケさんやチャイムさん達の姿があったりした気がしましたが、そんな事を気にする余裕は無かったのです。


 だ、誰かこの変態取ってください~!! びょおおおおおお!?


 半狂乱になって叫びながら、私は狩りをする狐さんみたいに頭から残骸の山に突っ込んだのでした……。


 い、痛い……。


・輪廻の『カルリラ』

 人々の生活を司ると同時に、生命の輪廻を管理する女神。大鎌を手にした村娘のような姿をしており、儚げな印象が強い。しかしながら、その正体は前時代の邪神達を殺し尽くした『神殺し』。カルリラの前ではいかなる生命も畑に生える雑草と変わりない。


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