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運命は廻る

『プレイヤー『ポロラ』がギフトの力に飲み込まれました。周囲のプレイヤーは迅速に避難してください。『プレゼント』が暴走します』


『測定中……』


『判明』


『種族『獣人』。職業『魔法戦士』。Lv5729……覚醒します。覚醒します。覚醒します』


 邪神化とは違う通知が、私の目の前のウィンドウに現れました。

 先程のキーレスさんの通知とほぼ同じものです。


 完全に賭けでしたが……上手くいったみたいですね。私の身体が光に包まれていっています。


 このままなにもなければ……と、思いましたけれど、そう簡単にいかないのは当然ですか。


「ビルドーぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 覚醒を止めろぉ! 何をボサッとしておる! それだけはとめるのじゃあ! ……ぐぅ!」


 サンゾーさんはそう叫びながら標的を私に変えようとします。しかし、その一瞬の隙をシバルさんは見逃さず強烈な拳の一撃をくり出しました。


 『憤怒』の能力によって石の巨人となったビルドーさんは、まったく動く様子は見せません。まるでこちらを見定める様に見下ろして来ています。……こちらを舐めているのかなんなのかは知りませんけれど、好都合です。ぶっ壊して差し上げます。


『彼女はこの世界の映し身、世界の守護者。されど、そうあるべきかは誰からも求められず、彼女自身も知ることもない』


 次のメッセージが現れます。


 どうやらこれは、女神達の誰かの事を示しているようです。おそらくは『プレゼント』に合わせた女神様の文章が出ると思うんですけれど……。


『されど運命は廻る』


『異世界の神々に虐げられた少女達は、世界の化身である彼女の元に集う。邪悪なる神々と、愛する者達が住む世界を守る為、世界の管理者となる為、彼女達はひたすらに戦った』


『そして、神々の戦いが終わった後、彼女は女神として全ての生命の前に立ち、世界を自身の祝福で満たしたのだった……』


 ……文章としてはリリア様のお話で間違いはないでしょう。けれども、彼女と私の能力にいったいどんな関係が?


『……覚醒終了。女神の力をお貸しします』


 一斉に、目の前のウィンドウが消滅しました。


 私の身体を包み込んでいた光は更に輝きを増していき、空の向こうまで届くような光の柱を作り上げます。


 その中心で、私は自分が光の粒子になって溶けていく感覚を覚えました。そして、目の前にリリア様の姿が現れます。


 彼女は慈愛の込めた表情を見せ微笑みました。




『漆黒具足の神喰い狐『ポロラ』。女神『リリア』の名に置いて、あなたを祝福致します。世界を……守って!』




 その言葉と同時に、私の身体が再構築されていきます。


 新しく作り替えられた私はまったく同じ姿というわけではなく、『妖狐の黒籠手』の色が深い色に変わっており、脚部にも真っ黒なグリーブが装備されていました。


 それ以外に変わった変化はありませんけれども……なるほど、『神喰い狐』ですか。


 私は追加された幾つかの能力を確認して、覚醒降臨の変化をまっていてくれたゴーレムさんに対面します。


 彼の方は既に準備万端の様で、両の拳をガンガンと叩き私が動くのを待っているようです。


 先程は大盾が無くなったゴーレムさんの動きに追い付くことができませんでした。けれども、これから先はその様な事は起こりません。……なぜなら。




 ここから先は、全て私の思い通りになるからです。




 石で出来上がった巨人の周囲に、漆黒の色をした大杭が数本出現しました。それは宙に浮かび、狙いを付けるかのようにゴーレムさんの周りを旋回しています。


 それに反応した彼は、素早くそれらを叩き落としました。


 けれども、叩き落とされた瞬間に再び大杭は再構築されていきます。……どうしたのですか? 私は指先一つ動かしておりませんよ?


 ビルドーさんが慌てる姿を見て、私は笑っていました。


 今までのように、黒籠手から刃を生成するのではなく、何もないところから武器を作り出しているのです。どこから攻撃が来るのかも予想できないでしょう……ふふふ……。


 まずは一つ目。


 これが覚醒した黒籠手の能力です。『無からの創造』、相変わらず作る事ができるのは小さな刃の集合体ですが、これの使用用途なんて戦闘くらいですから問題はありません。


 そして、二つ目なのですが……。


 私はアイテムボックスから残っているギフトカードを全て取り出しました。『暴食』に『傲慢』、『怠惰』……まぁ、試運転ですから、全力でいきましょう!


 取り出したギフトカードを、私は躊躇なく使用しました。


 それと同時に、腰の辺りが一気に重くなります。具体的にいうと尻尾が三本分増えた感じがしましたね。


 どうやら私がギフトカードを使用すると、尻尾が増えてしまうみたいです。『強欲』のギフトと無関係とは思えませんが、今は保留しておきましょう。


 メリットだけに目を向けるべきです。……さて、色々試してみましょうか!


 私は旋回させていた大杭を適当に地面に突き刺しました。そして、それを足場にしながらゴーレムさんの目の前に飛び上がったのです。


「guuuuu……GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 雄叫びと共に、宙に浮いた私を叩き潰す石の拳が左右から迫ります。


 その一撃を受ければただではすまないでしょう……が。


 今の私なら、この程度の攻撃はどうって事無いんですよねぇ!


 攻撃に合わせるようにして、私は両腕で石の拳を受け止めました。身体に衝撃が走りますが、気に止める程のものではありません。


 ゴーレムさんはそのまま押し潰そうと力を込めますが、逆に彼の手にダメージが入り、ピシピシと何かが割れるような音が聞こえて来ます。……味方が死ねば死ぬほど強くなる。これが『傲慢』のギフトですか。


 メレーナさんはざっくりとした説明をしていましたけれど、効果が発動している時のステータス上昇量は素晴らしいですね。さっきは押し潰されてしまいましたけど、もう同じ目には合いませんよ!


 更に力を込めると、ゴーレムさんの力が弱まり、私は地面に落とされました。


 華麗に着地したところに、石の拳が叩き落とされます。


 『憤怒』のギフトによる超重量の攻撃。


 強力な攻撃ではありますが、ここまできた私に守るという選択肢はありません。全力で立ち向かいます。


 石の拳に向かって、私も拳を突き出しました。


 拳と拳がぶつかり合い、辺りに衝撃が走ります。ビリビリとした感覚が、どれ程の力がぶつかり合ったのかを物語っているようでした。


 ……きっと、このゴーレムさんは礼儀正しい方なんでしょうね。


 だからこそ、さっきから小細工の一つも無しに真っ向勝負を仕掛けて来ます。実力と経験を考えればいくらでもやりようはあるでしょうに。


 先程は私の変化を待ってくださいましたし……いいでしょう。やってやりますよ、殴り合い。


 ゴーレムさんは再び殴りかかって……いえ、その重量のせいで、もはや押し潰そうとしか見えない攻撃をしてきました。


 私はそれをおもいっきり殴り返します。


 パワーでは勝っています。しかし、攻撃の速さとHPはあっちの方が遥かに高いと感じました。こっちの攻撃が効いている気がしません……!


 『憤怒』の能力で再生能力が強化されているのかもしれませんが、この固さは流石盾約といったところでしょう。 ……それならば、更にダメージを加速させるまで! 『属性付加エンチャント』ぉ!


 黒籠手、そして足のグリーブに、全ての属性が付与されました。強大なオーラ発生し、まるで火炎の如く沸き上がります。


 私はその状態で一歩踏み出しました。


 上から容赦無く振り下ろされる豪腕を弾き返しながら進み、彼の足元へと潜り込みます。


 巨大化して見上げるほどの大きさになってはいますけれど……どこに攻撃を当ててもダメージはダメージです! 足元から砕いてさしあげますよぉ!


 オーラを纏ったまま、私は回し蹴りをぶち当てます。


 黒いオーラはまるで波紋の様に彼の身体を伝わっていき、至るところで状態異常を引き起こします。


 一部では炎が燃え上がり、違う場所では毒によって融解が始まりったしていました。……ステータスが上がったので、付与された属性も強力になっているみたいですね。


 自身の身体の異変に気付いたゴーレムさんの攻撃は、更に激しさを増しました。


 今度は全体重を乗せて私を倒すつもりなのでしょう。大きく足をあげて、踏み潰そうとしています。……それならば、これで終わりにしてあげます。


 展開……!


 私の周囲に、七つの大爪が現れました。


 全て属性付加されてあり、私の意思によって自由に動かすことができるのです。何の考えも無しに尻尾を増やした訳じゃありませんよ。


 展開した大爪は、一斉に飛び出してゴーレムさんを突き刺しにしていきます。


 身体を削り取り、節々を破壊して、着実に自由を奪っていきました。


 にも関わらず、ゴーレムさんは動かなくなった場所を無理矢理動かして攻撃をしてきます。


 普段の私だったら、確実に死んでいた攻撃です。まさか、自分の身体が崩壊しても構わず攻撃するなんて思いませんでしたから。


 けれども、勝敗は決しました。


 自重を支えきれなくなってしまったゴーレムさんは大地を振動させながら、地面に倒れ付します。


 身体の至るところで発生している状態異常が、彼の命を燃やし尽くそうとしているのがわかります。


 しかし、私は展開した大爪を手元に戻していました。そして、すぐさま射出できるように、照準を定めます。……私の勝ちです。何か遺言は?


 そんな状況になってでも、ゴーレムさんは口を開いてくれませんでした。


 悪態の一つでもついてくれるんじゃないかと思いましたが……なんですかそれ、死ぬ前の行動がそれでいいんです?


 ゴーレムさん……いえ、ビルドーさんは私に向かって手を伸ばし、親指を立てていました。そして、石でできた顔でニヤリと笑っております。やりきった顔です。


 それを見た私は、すぐさま止めを刺しました。……これで見逃すのは逆に失礼に当たります。


 ありがとうございました。貴方のおかげで私は次に進むことができましたよ、感謝します。


 私は笑って見送りました。


「いやはや……よもやここまでするとは。このシバル、少々貴女を見誤っていりました。素晴らしい戦果ですな……!」


 パチパチという柏手に振り替えると、鮮血に染まったシバルさんの姿がありました。その笑顔からして、決着は付いたみたいですね。やっぱりつっよ。


 ……当然です。本気を出せばこんなものですって。


 ちょっと強がってみた私を見て、シバルさんはなにも言わずに微笑みました。なんか見透かされているのが気に食わないですけれど、気にしないことにしましょう。


 そ、そんなことよりも!


 キーレスさんの元に向かったツキトさんと子猫先輩が気になります! 簡単にあれを倒せるとは思えませんし、早く加勢にまいりましょ……!?


「……! こ、これは……まずいかもしれませんな……!」


 私の目の前に、またウィンドウが現れます。


 その内容は純粋な絶望であり、信じたくない文章でした。




『プレイヤー『ミーさん』がギフトの力に飲み込まれました。周囲のプレイヤーは……』




 子猫先輩のギフトは『嫉妬』。『強欲』ではありません。


 つまりこれは子猫先輩が邪神化したというお知らせということです。……は?




 え、ちょ。


 子猫……先輩? 何してるんです?


 貴女が邪神なんかになったりしたら……。




 いったい、誰が倒せばいいんですか?

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