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覚醒します

 炸裂音という言い方だけでは、その衝撃を表現するには不足でした。


 私を取り囲む、小型アーマーズを身に纏った機械兵達は、こちらに向けて無慈悲に機銃を乱射してきます。


 先程の雑魚達が使っていた銃とは全くの別物なのでしょう。


 その射撃音は最早爆発と言っていいほど強烈で、身体にビリビリと衝撃が響いて来ています。


 そして、その衝撃と共に射出された弾丸は、木々をやすやすと撃ちぬき、私の大爪さえ徐々に削りとっていくのでした。……流石に今までのようにはいきませんね! 開け!


 そう念じると、大爪から刃が花開くように拡散し、射撃をしている彼等に向かって伸びて行きます。串刺しにして差し上げましょう。


「散開! 射撃は継続しろ! コイツ狂暴だ!」


 機械兵達はその言葉と共に、私の攻撃を回避しました。木々の間を華麗に移動し、陣形を取り直します。


 真面目な話。


 この人達、私よりも速いですね。足元の雪に足を取られてしまっているということもありますけれど、あのジェット移動は実に厄介です。一気に距離を離されてしまい、反撃の機会を減らされてしまいました。


 しかし、黒籠手で作った武器を一撃で吹き飛ばせる事ができない以上、防御に関しては私の方が上回って……いえ、それは甘い考えかも知れません。


「銃弾が効かないのならこれであります! 吹き飛べ!」


 私がチップちゃんの戦いを見れたのは幸運でした。


 機械兵その言葉だけで、どんな攻撃が来るのか察することができたのですから。……ミサイルですか!


 咄嗟に黒籠手から刃を伸ばし、自分自身を包み込む様に球形に展開しました。いつもならばこれで終わりですけれど、更に厚みをまして硬度を高めていきます。これならば簡単にはやられないはず……。


 と、十分な厚みが出来上がった瞬間、何かが着弾した様で私は展開した刃ごと宙に浮きました。

 地面ごと吹き飛ばされてしまったようです。周りから爆発音と共に木々が倒れていく音が聞こえてきました。


 やっばい、ミスった。


 衝撃が私を襲う度に、HPがガリガリと音を立てるように磨り減っていきます。防御に徹したのは間違いでした。


 ミサイルの数に制限はあるでしょうけれど、他の装備が無いとは言い切ることができません。……ヤバイヤバイヤバイ! このままじゃマジで死にますよ! まだ刃は球体を維持していますけど、崩壊するのは時間の問題です!


 ミサイルなんて直撃したらHPぶっ飛びますって!


 なんとか……なんとかしなくては。


 もうこの時点で、私ができることはかなり限られていました。


 苦し紛れにアイテムウィンドウを開き、突破の方法を探します。……あっ! テレポートのスクロールあるじゃないですか! これでとりあえずは脱出できます!


 ……けれど、そこからの反撃の手段がありません。さっきみたいに距離を取られてしまっては、また同じ状況になってしまうでしょう。


 こういう状況で魔法が使えないのが痛いです。


 なにか……なにか逆転の一手を……。




 あ。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




「止めだ! 『串刺しフォックス』! フル……バーストぉ!」


 アーマーズの一機から大量の弾丸とミサイル、レーザー光線などが発射され、刃の球体に襲いかかりました。

 かろうじて形を保っていた私の砦は、その攻撃によってバラバラに吹き飛んでいます。


「しゃあ! 所詮は新顔だ! 『ペットショップ』には遠く及ばねぇ!」


「ちょっと~、フルバーストってなによ。まだ戦争終わって無いのよ? 油断しすぎじゃ無いかしら?」


 女性の方はそういいながらクスクスと笑っています。……辺りの様子は先程と全くの別物になっていました。生い茂っていた木々は折れて地面に横たわっており、爆発の影響なのかよく燃えています。


 ここだけ見晴らしが良くなってしまいましたね。もう彼等を守るものは何もありません。


 まったく、そんなミサイルやらレーザー砲やら強そうな装備をして……。




 嫉妬してしまいますよぉ……!




 私は倒木の間から飛び出し、身体から黒い波動を打ち出しました。それは円環状に広がり、三機のアーマーズを巻き込みます。


 強襲された彼等は、咄嗟に回避行動に移りますが既に手遅れです。


 『嫉妬』のギフト影響からは逃げられません。


「バカな……!? 事前情報では『強欲』のギフト持ちだったはずであります……! ぐぁ……」


 アーマーズは燃料が失くなったかのように、ゆっくりと降下し始めました。目に見える位に、その動作が緩慢になっていきます。……エネルギーを吸われたからですかね?


 いやぁ、先程はよくもやってくださいましたねぇ。死んじゃうかと思いましたよ。今は貴方達のお陰で元気いっぱいですけど……。


 ……おや? おやおやおや?


 どうしたのですか? 私がこうやって出てきたんですから戦いなさいよ? 私を倒せば階級が上がるのでしょう? そうやって這いつくばっている暇は無いですよ。


 それとも……。




 二階級特進がお望みですかぁ?




 私はニヤリと笑いながら、ウジ虫の如き醜態を晒す彼等に対して調子に乗りました。


 テレポートのスクロールを見つけた後、私の目に飛び込んできたのはアイテムボックスの奥底で腐っていた『ギフトカード』達でした。


 使った時のデメリットが怖くて使う気になりませんでしたし、持っているだけで邪神化を防いでくれますからね。


 ですので今まで大事にとっていましたが……そんな事を言えるほどの余裕は無くなってしまいました。


 私はスクロールを使用し、球体の中から脱出。すかさずギフトカードを使用しました。エナジードレインを使うことのできる『嫉妬』の能力が、この場には最適と判断したのです。


 そして、彼等が油断した瞬間に姿を現した、というところですね。……さぁ、戦闘再開です。貴方達には死んでもらいましょう。


「ふざけるんじゃ……無いわよ!」


 アーマーズの一機が力を振り絞り、こちらにレーザー砲を向けました。


 そこから打ち出された高速の光は、全ての物を射ち貫き、まっすぐに伸びて行きますが……、そんな震えた照準で当たるわけがないでしょう?


 私は向けられた砲口がそれた瞬間、彼女に肉薄して槍を振るいました。


 機動性を重視していたのでしょう。装甲はそこまで厚くは無いみたいで、簡単に貫くことができました。


 彼女は呻き声を漏らすとミンチになり、機械の残骸と共に散らばってしまいました。……次は貴方です。


「な、なめんなでありま……!」


 はいおそぉい!


 倒木の間に隠れていた間に作っていた大爪を操作して、地を這っていた口調が変な方を串刺しにしました。


 攻撃にされる前に倒してしまえば何も怖くありません。機体の性能に頼りすぎじゃないですか?


「く、糞が! さっきまでは俺達が有利だったはずなのに……これが『串刺しフォックス』……!」


 そんな二つ名知りませんよ。失礼な。


 私は槍で失礼なウジ虫さんの四肢を切り飛ばしました。……あれ? 血がでない? もしかして人体を直接改造してアーマーズにしてるんです? こわ。


「へ、平気な顔してエグい事してきやがった……。サンゾーさんの言うとおりだ……」


 私が疑問に思っていると、おかしな二つ名を付けた犯人の名前を口走りました。


 そういえば串刺しにして放置したこともありましたね。ちょっとハリネズミにした位で風評被害をばら蒔くとは、心が小さい人です。


 酷いですね~、私の事を指差して『串刺しフォックス』とは。私、そんな残酷な性格じゃないです~。


 不機嫌になった私は情報提供をしてくれたウジ虫さんを殺しました。やはりアーマーズごとバラバラになってしまいます。


 できることならば、アーマーズも欲しかったんですけれどね。残念ながら奪い取る事はできないみたいです。


 おそらく身に付けるだけで相当な強化をされているでしょう。もしもこれが敵の標準装備だったら私達の勝利は厳しいものになると思います。


 それと、遂に使ってしまいましたよ、ギフトカード。


 今のところ、特におかしな感じはありませんが多用はしない方がいいでしょうね。


 特に『嫉妬』の能力は使いすぎるとオーバーフローを起こして自滅してしまうと聞いています。そんな死に方はごめんです。


 ……と、あれこれ考えるのはここまでにしますか。


 今の戦闘でわかった事は多いです。


 新型兵器の正体に、装備。


 これらを皆さんに知らせるだけで私達の勝利はより堅実なものになります。


 早速チャットで報告を……!?


 私がウィンドウを表示しようとした瞬間。


 『警告』という一文がのったメッセージウィンドウが現れました。続けて更にウィンドウが表示されていきます。




『プレイヤー『キーレス』がギフトの力に飲み込まれました。周囲のプレイヤーは迅速に避難してください。『プレゼント』が暴走します』


『測定中……』


『判明』




 そんな、あり得ません。


 チップちゃんやヒビキさんが見張っているというのに、敵の勢力が邪魔をしてくるなんて私には考えられませんでした。……いえ、待ってください。


 この文章は私が『強欲』のギフトを使われたときと同じものです。他の方達とはちょっと違っています。


 もしかして……キーレスさんも『強欲』のギフトを……?


『種族『アンドロイド』。職業『機械化兵』。Lv17936……覚醒します。覚醒します。覚醒します』


 ウィンドウは止まりません。


 な、なんですか、この文章? 私の知っているものと違うんですけれど……。いつも通りなら強欲の《キーレス》となるはずなのに……。


『人々の営みを守るため、それは生み出された。人の身を素体に作り上げられた古の機械少女。彼女は守るために自らの知識を人々に伝えた』


『しかしながら、人々はその力を争いのために使った。人の身に余る技術を与えた自らの行いに、少女は深く後悔した。それからは、彼女は人々の前に現れることは無くなった』


『長い時の中、暗い牢獄で彼女は信じる』


『いつの日か、『機械』という技術が人々を守るということを。自分の力を宿した贈り物が、世界を平和に導くことを……』


 ウィンドウはバグってしまったように次々と増えていきました。……これは女神『キキョウ』のことですか? 贈り物って……『プレゼント』?


『……覚醒終了。女神の力は解き放たれた』


 ウィンドウが出た瞬間、遥か前方で強い光の柱が現れました。いったい何が起きているのか、私にはまったくわかりません。

 困惑していると、目の前にあったウィンドウが全て消失し、最後の一つが私の前に現れました。




『アーマーズ・ロード『キーレス』。女神『キキョウ』の名に置いて、お前に立ちはだかる害敵を排除せよ。仲間を、守れ』


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