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嘆き
ああ、もしこれを読んでいる方がいるのであれば、もうそろそろお気づきではないでしょうか。私はこの時、Aが自分の小説を再び読んでくれることに浮足立ってしまっていましたが、本当ならばどこかがおかしいと気付くべきだったのです。どうしてあれほど読書嫌いだったAが突然私の小説を読みたいなどと言い出したのか。なぜAは、読書嫌いから抜け出すことができたのか。例えこれに気付くことが出来ても、後に知ることになる真実に近づくには難しかったかも知れません。しかし、少し考えてみれば分かるはずだったのです。そしてもし、その時その、とても些細だけれども重大だったことに気付ければ、あんな取り返しのつかない事態は避けられたかもしれないのです。