決意
夢を見ていた。空から少女を見下ろしている。金髪ロングの童顔、でも何かを決意したような顔の少女。頼れる人が居ないと思ったなかでようやく見つけた心の拠り所。少女は笑っていた。俺は思った。その笑顔の側に居たい、その笑顔を守りたいと。
少女に手を伸ばそうとしたところで意識は光に包まれた。
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手を天井に向かって伸ばした状態で目が覚めた。ここ一週間の間同じ夢を繰り返し見ている。夢の中身を思い出して疑問が湧く。俺はロロが何か決意した素振りを見ただろうか。第一印象は優しそうな少女だったが特段何かを意識したような感じはなかった。毎日のようにロロに聞こうと思って結局言い出せずにいた。居間の椅子に座って考え事をしていると
「私今日からまた学校に行かないと行けないから、留守番しといてね」
そう告げるとパタパタと音を出しながら部屋から出ていった。もう玄関から出ていっただろうか。家の中は音は静まった。
何か食べよう。テーブルにはパンのようなものがあった。どの世界でも植物の粉と水を混ぜ合わせ焼くという発想は出るようだ。
「果物のソースよりはカレーが欲しかったな」 味はパンというよりナンに近かった。手作りのジャムらしきものをつけて食べると美味しかったがやはり違和感があった。今夜は自分の世界の料理をロロに教えようと思った。
数時間経ってふと思う。俺はこれから何をすればいいんだ。ロロに受け入れて貰ったので衣食住の心配はない。しかし心配が無いからって何もしなければ良いというわけではない。何もしなければロロの負担になってしまうだろう。それは避けたい。
決めた。家の掃除をしよう。この家はホームステイを受け入れてるからある程度は綺麗だ。しかしキッチンの隅や倉庫の全てを掃除できているわけではない。
「まず天井から掃除するか。次にゴミの分別をしてと………」
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「あー終わった。疲れたー。」
俺は部屋を見回しながら満足げにうなずいた。流石にロロの部屋までは掃除しなかったが家中はあらかた片付いたと思う。後は庭だがそろそろ日が暮れてくるし明日にするかなどと考えていると
「ただいま一樹。遅くなってごめーん」
ロロが帰ってきた。
「お帰りロロ。学校はいつもこのぐらいの時間に終わるのかい」
疑問が湧いたので質問してみた。
「うーん今日はちょっと遅かったかな。いつもなら日が暮れる前には帰れるんだけど。それよりは部屋が綺麗じゃん掃除してくれたの?」
「うん。ロロがいない間暇だったし」
「そうなんだ。ありがとう」
ロロの笑顔はすごく可愛かった。やっぱり、覚悟をした顔には見えない。
「そう言えばさ、ロロって何のために学校に通ってるの?」
「私はね、国家魔術師になって安定したお金を手に入れるために学校に行ってるの。」
「どうして金がいるんだい」
「家族に楽をさせてあげたいからだよ。それに…」
「それに?」
「それに友達と約束したから。将来どっちが偉い魔術師になるか。そして偉くなったほうが故郷の復興を進めるって」
思った以上に立派な目的だった。夢の中の自分はこの思いを見抜いていたのか。
「ロロ、君なら頑張れるよ。俺を受け入れてくれたし君は優しい。ホームステイしている間家事のことは任せて学業に集中してくれ」
「一樹ありがとう」
ロロの笑顔が堪らなく嬉しかった。今まで意識してなかったけど、この気持ちを大事にしたいと強く、強くそう思った。