第1話「御舟炉衣は戯れたい」
チュン。チュンチュンチュン。
御舟炉衣は目を覚ます。
朝は… 嫌いだ。
朝は不平等な現実を、
ボクたちにつきつける。
それに比べて、寝ている間は、
どんな、能力でも、容姿でも、境遇でも…。
人種でも、信条でも、性別でも…。
本質的に平等なのだろう。
だからボクは、 夜が好き。
「行ってきます……。」
玄関を出る時、空っぽになった家に向かってそう告げる。誰に対して言うわけでもない。自分がしたいからそうしているのである。
その家の中には、鬱屈とした闇が広がっているだけで、御舟に返事が返ってくることはなかった。
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《アサダヨ~。オキナカッタラ、オキナカッタラ。スゴイコトスルヨ~。アサゴハンニマヨネーズカケチャウヨ~。》
某アパートにて。目ざまし時計が鳴る。南米系外人の目覚ましボイスだ。
バンッ。少女は思いっきり叩いた。目覚まし時計が吹っ飛ぶ。
……ガシャ。
少女A「は…!!」
少女A「朝だッ---------!!」
目を覚ますと同時に、布団を吹き飛ばして、少女は飛び起きる。少女の名は彩華唯。今は高校一年生で、御舟と同じクラスだった。
彩葉「てッ。もうこんな時間じゃない。」
時計は7時30分を指していた。目覚ましセットしておいて、このザマである。
彩葉「急がないと遅刻しちゃうわ。」
少女はパンを咥えて学校に急ぐ。
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一方、通学路にて~
一人の男子生徒が歩いていた。
モブA (オレの名は(モブA))
彩葉「ハッハッ。」(走る、吐息)
モブA(どこにでもいる普通の高校生だ。)
モブA(うん。今日もいい天気。)
モブA(この角を抜ければ、すぐに校門。)
ダッダッダ。少女Aは角の近くを走っている。
モブA(今日は一体、どんな一日になるのかな----。)
彩葉「あッ。」
ドゴォッ。
モブAと彩葉唯は交差点で衝突した。
ドタッドタ。2人は地面に倒れこむ。
モブA「いってて。」
モブA(ん?)
〈もみもみもみ。〉モブA(この胸の感触は…一体?。)
モブA(ひょっとしてこれは、マンガでよくある…)
モブA(エッチなシーンなのでは!!?)
モブAはうきうきして目を開けると、
彩葉が、モブAの胸を揉んでいた。
モブA「っってt、ええぇ。なんでそうなるッ。」彩葉「フッ。」
彩葉「いつからお前は、男が、女の、胸を揉むものだと錯覚していたッッ--。」
彩葉「揉むのは私だッ!!」
モブA「!!?」
彩葉「オラオラオラオラオラオラオラオラオラッッ!!!」
モブA「ひゃ…ひゃうぅあ。」
モブA「だ、、誰かーー。助けてェェー。強姦だァッー。」
ザワザワ。人が集まり始める。
彩葉「っち。図ったな。」
ダッ。彩葉は走り去っていく。
モブA「はぁ…。はぁ…。」「今の、彩葉唯だな…。まじで許さんぞ…。」
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彩葉唯は、1年2組の教室に入った。
彩葉「よーし。間に合った。」
少女B「おっはよ~。」
彩葉「おはよう!!」
少女B「今日は何かするの~?」
彩葉「フフッ、もう派手にやらかしてやったぜ。」
ピンポンパンポン。放送が鳴る。
彩葉「げッ!」
高等教育官《え~。2年2組、彩葉唯ィッッ。教室にいることはわかっている。担任がこちらから向かうので逃げずに待っていること。もし逃げたらこの私酒井が、死ぬ気で捕まえにいくので、大人しく観念するがいい。》
ピンポンパンポン。
彩葉「モ、モブA!!。さてはチクったわね~~。」
少女B「彩葉ちゃん、それ自白だよ…(チクったって。)」
彩葉「いや、まだだ。まだ勝算はある。」
すると、モブAを連れた担任が現れた。
担任「彩葉、モブA君にぶつかって倒れた際、胸部を揉むなどのセクハラをしたと聞いたのだが、本当か?」
モブA「「胸を揉むのは私だ」とか、言ってました。」
そう聞いて、急に女らしいしぐさになる彩葉。
彩葉「な、何よ…。私がそんなこと、するわけないじゃない…。」
彩葉唯は涙目になっている。
彩葉「モブA君。ひどいわ。」
モブA「は?え?ナニコレ…。え?」
モブA(ま、まさか…)
女子「うわ~。またモブAの妄想?」「やめてよね~ほんと。」
男子「自意識過剰すぎ。」「謝っとけよ~後で。」
モブA「……。」
モブA(まじかよ、最悪だァァァ…。ふざけるなよお前ら。彩葉が何かやらかしたに決まってんだろぉ。おれを陥れて楽しんでんだろぉ、コラッ!!。)
担任「モブA君。彩葉は本当にやったのか?」
モブA(くそ、担任まで。女が男に強姦するなんてありえないもんな。そうだよな。)
彩葉(よっしゃぁぁあああッ。おしおき受けずにイタズラ成功。彩葉ちゃん、完全優勝。)
少女C「え~でも見たよ、私。彩葉ちゃんが、『いつからお前は、男が女の胸を揉むものだと錯覚していた~』とか言ってモブA君の胸を揉むの。」
一同「……。」
彩葉(し、死んだァ。)
担任「だ、そうだぞ、彩葉。どうなんだ?」
彩葉「……。くっフッフ。」
彩葉「バレては仕方があるまい。」
彩葉「だが聞けッ!!!。」
彩葉「偉大なるCMプランナァァッ、木野忠保はこう言っているッ。」
彩葉「常識を超えたところにこそ、革新的なアイデアの種はあり、日ごろからそれを超えていく姿勢を保ち続ける必要があるとォッ!。」一同「おぉ…。」
彩葉「つまり私のこの行いは、勉学に必要な行いであり、学校側はそれを認可しなくてはならな」ドゴッ。モブAによるチョップが炸裂した。
彩葉「ぶへぇえ。」「何すんのよ。」
モブA「お前、CMプランナーじゃねぇだろ!」
担任「やめないか2人とも!!。」少年達「おーやれやれッ。」
彩葉「ニカ生主※だもん。」(※ニカニカ動画で生放送を配信している人のこと。)
モブA「関係無い!!」
彩葉「ユーテューバー※だもん。」(※ユーテューブで動画を配信している人のこと。)
モブA「関係ない。」
ぎゃーぎゃ。2人の論争は続く。
御舟「あっはは、ははははは。」
カオスな空間に思わず笑ってしまう。御舟にとってこの時間は癒しに他ならなかった。
彩葉唯はコメディアンなのだ。
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キーンコーンカーンコーン。
8限を終え、5時40分に帰りの会が終わる。
少年達「なぁ、カラオケ行こうぜぇ。」「おうよ。」「おれ部活あるから。」
みんな部活動や遊びに向かう時間だ。
御舟(ハハハ。今日も楽しかったな……。)
乾いた笑いが出る、御舟は家に帰るのが嫌いだった。
御舟「はぁ…。」
6時00分帰宅、夕食を終えて、6時45分に家を出る。
7時から10時まで、飲食店でバイトした後、帰宅し、風呂などを終えて11時。
12時までネットや映画を見て、就寝する。
別にだからどうって話では無い。料理を作るのは好きだし、それほど嫌ではなかったが、そういう問題ではないのだ。
「たとえるなら空だ。」
御舟は寂しかった。誰でもいいから、泊まりに来てくれないだろうかと、よく思うが、口に出せたことは無い。
(。)
御舟炉衣は寝床に就く。
御舟には映画を流しながら、寝るクセがあった。
寂しいからという理由だけではない。誰にも近づけないけれど、誰かの人生に寄り添っていたかったのだ。
御舟「……。」
(静か。)
(寂しいなぁ。)
ポロ。ポロ。
(なんで僕は、一人ぼっちなんだろうか。)
ツーーーー。御舟の顔に涙が流れた。
コンコン。コンコン。
すると、右の窓から、音が聞こえた。
御舟「ん?」
コンコン。コンコン。
コンコン。コンコン。
御舟「うそ。ひょっとして、ゆうれい?」
キィィ。
窓が開き、人影が、部屋に降りる。
御舟「な、何。誰?」
ガタガタガタガタ。御舟は震えている。
?「そう怖がらないで。私よ。」
彩葉「御舟炉衣ちゃんよね。」
炉衣「い、彩葉ちゃん?」
彩葉「きちゃった☆。」
炉衣「どうして、ここに…。」
彩葉「終電、逃しちゃって。」
彩葉「泊めてもらってもいいかしら…。」
炉衣「う、うん。」
-不思議だった。誰でもいいから泊まってほしい。そう思ってたら、彩葉ちゃんが来てくれたのだ。
その日は彩葉ちゃんと、ゲームしたり、トランプしたりして、5時まで遊んだ。そしてそのまま2人とも寝落ちして、起きたのは10時。遅刻した2人は、仲良く学校へ向かったのだった。