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架空歴史小説の話  作者: ゴルギアス
10/11

武威帝マクシミリアン④

ある日砲兵少将に進級したマクシミリアンがウォルフガングをつれ、というより泥酔したマクシミリアンをウォルフガングが宥めて家まで帰そうとしているところに、部隊の宿直の軍曹があわてて掛けてきた。砲兵隊の部下が騎兵連隊の一部と喧嘩を始めたというものだった。

 こともあろうにマクシミリアンはこれを制止するどころか酔いに任せて喧嘩に参加し、4人をうちのめした。これに蒼い顔をしたのはボロディンである。騎兵連隊は貴族でも高位の子弟がつくもので砲兵隊は逆に市民階級からの兵士が職業軍人として鍛えられたベテランの部隊である。もとより嫌い合っている部隊同士だったから喧嘩自体もその処理方法もボロディンを悩ませることではなかったがそこに兄がいて、しかも子爵を2人もぶちのめしたということになれば話は別で、ボロディンは父に報告する前に飲めない酒をグラス2杯煽った。


 ボロディンは殴ったものにマクシミリアンが書面で謝罪するということで了解を取り付けたがマクシミリアンはこれを承知せず決闘を再度申し込む次第。あきれたボロディンは前日にマクシミリアンに深酒させ、寝入っている間にウォルフガングに代理を頼んでボクシングで決着をつけさせた。ちなみに相手側も、どこかの酒場で雇ったような乱暴者の代理を立てたので、ウォルフガングは自分より頭一つ分も大きい巨漢と二連戦する羽目になった。これには流石に腹に据えかねたウォルフガングは、襟にはねた泥と血もそのままにボロディンに護衛の辞表を突き付けた。腫れた青あざで右目が隠れてしまったウォルフガングを前にして流石にボロディンも辞表を突っ返せず、ジギスムント帝が直々に諭して続けさせた。



こういった暴れ者ぶりをみせていたマクシミリアンが英雄の相貌を見せ始めるのは彼が砲兵と軽装の山岳兵の連携の可能性に気付き始めてからである。彼はもともと平民上がりの兵を勤勉さと頑健さの故に好んでいたが特にこの二種類の兵装の連携に可能性を見出し、どちらかというと子供じみた好奇心から、初めて父に地位をねだった。


軍需省の一部局の次長にあたる地位をねだったマクシミリアンがまず整えたのは小型だが悪路の輸送に耐える砲の整備であり、力のあるもの2人なら人力でも山道も押せるものであった。それまで砲兵はどこか陣地に固定して運用するというのがその戦術であったが、マクシミリアンはもっと柔軟な展開を要求した。短射程でよいから山岳兵の機敏な動きについてこられる砲兵機動部隊を求めた。ただし、この仕組みは機構上打ち出す砲弾の火薬量と口径が精密であることを要求したことと、砲撃直後に山岳兵が機動的・奇襲的に動かなければならないということで、準備に金と時間がかかった。


このアイディアは当初、物好きな実験というくらいにしか考えられていなかったが、多数を持って圧倒することができないような持久戦の場面で、均衡状態一気に突き動かすことができる意味で功を奏した。機動性のある砲兵隊は平民の兵の間では人気のものになり、マクシミリアンがこの部隊で得た知己はなにかと重宝したし、民衆の方でもマクシミリアンの華やかさは人気を博した。この職にいる3年間、マクシミリアンは軍服の姿を圧倒的に好み、マクシミリアンの王位の間に鋳造された貨幣にはこの時の姿が彫られていた。二七を超え、体力気力の充実した時期であった。

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