第三幕 計画
「それは一体」
二人は何とも言えない顔で私を見た。
マンドリンとメアリアン、二人は私が何を問題にしているかわからない。
アニソンが何かわからないので当然だが、
そもそもアニメーションというものがない。
パラパラ漫画ぐらいなら作れるはずだが、作った人はいないのだろうか。
とにかく、もう私のことはいいと思う。
シェイクスピア作品を紹介したのは私が最初ではないが、小説仕立てのものを発表したものだった。
私は戯曲の形で提供した。それだけの差だが、来月あたり、ハムレットの舞台がこの世界で最初に公演される。
来月までにすべてのケリをつけなければならない。
マンドリンのことも私のことも。
「そういえば先週、こちらに滞在させてほしいと手紙を出したんだけど、届いてなかった?」
届いてないはずがない、出なければどうして伝報で返事が来るのか。
「知らないわよ、だからどうしてマグダレンがここにいるのか本当に不思議だったんだから」
マンドリンが答えたが、それで私の疑問はさらに加速する。
伝報はいったい誰が出したのか。
「心当たりは本当にないのか」
重ねて聞けばマンドリンはしばらく考え込んでいたが、ようやく思い出したようだ。
「最近、手紙が減ったとお母様が言っていたと思うの」
「手紙が減った、ね」
何者かが、マンドリンの家の郵便物を盗んでいく。その動機が分からな過ぎて不気味だ。
「結局、マンドリンそっくりでマンドリンじゃない人がいるって納得すれば、誤解は解けるんじゃないの?」
メアリアンがそう言って私を指さす。
「ここに一人いるしねえ」
いったい何を言っているのかと私は首をかしげる。
「マンドリンの友達の前で、歩き去るだけでいいの、反対方向からマンドリンが来るのを見たら、マンドリンのそっくりさんがいるって納得してもらえるから、納得さえしてもらえれば、説得は難しくないわ」
「しかし、私は何もしていないんだけど」
「それくらいわかっているけど、とにかく、頭から信じ込んでいる相手に何とか誤解を解くにはそれしかないでしょう」
言われてみればその通りだ。
「マグダレン、貴女にこんなことを頼むなんて、本当はいけないことってわかっているけど、お父様だって、信じてくれるかもしれない」
「伯父様はやめといたほうがいい、知り合いを何人か信じさせてそれからだ。何しろ伯父様は私の存在を知っているからね」
その言葉に説得力を感じたのか、マンドリンは頷いた。
「じゃあ、条件に合う人間を割り出そうか」
メアリアンは地図を用意した。
そして地図に人の名前を書き記している。
これがマンドリンの友人の住所ということだろうか。
「幸い、夕方ならかなり確実にその場所にいるってわかっているから、それに、早番にしているから私はその時間帯自由時間だし」
メアリアンはそう提案する。
「確かに、情報不足こそ、いま最も憂慮せねばならないことね」
何に怒っているか対処しなければどうしようもない。
反則のような気がするが、やるしかないだろう。
ちょうどいいものが、私のトランクに入っている。