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幕が下りたその向こう

 我々は代金を払うまでもなくレストランを叩き出された。

 そしてそのレストランが続く限り、永久に出入り禁止の処置がとられたらしい。

 まあいいけど、二度とこないし。

「マンドリン、僕はどうしていいのか」

 テイミーはマンドリンの足元に跪いてかき口説く。

「君の冤罪を信じ切れなかった僕を許してくれ、やっぱり君を」

 そのテイミーを見下ろすマンドリンの目は永久凍土より冷たかった。

「ねえ、テイミー、彼を覚えている?」

 そう言ってマンドリンはアンリさんを指さす。

 結局証言するまでもなく一件落着してしまい、何をしに来たかわからないアンリさんを。

「私と貴方で、一緒に聖女マーニの祝祭の日食事に行ったわね」

「ああ、そうだね、僕たちは一緒に食事を」

「なのに、どうして、私がハットン氏と聖女マーニの祝祭の日、デートしてたって与太話を信じることができたの」

 空気が重さを持った。硬ささえ感じるほどの密度だ。

 アンリさんを見ればアンリさんも重々しく頷いている。

 伯父様は苦虫を噛み潰した顔をしていた。

「君が、その日ハットン氏とマンドリンがあっていたと信じたから私も信じてしまったんだ。何しろマンドリンはその日君とデートするって言って出て行ったからな」

「馬鹿?」

 思わず口をついた。そしてメアリアンも深いため息をついた。

「私もそう思ったのよ」

 アンドレアも、テイミーを何か珍しい生き物を見る目で見ている。

「そう言うわけだから、テイミー,貴方がマリアーヌ嬢と付き合おうとどうぞご自由に、金輪際貴方と付き合う気はないから」

「待ってくれ、マンドリン、やっぱり君を愛してるんだ」

 マンドリンのケープを必死につかもうとしたが、それは伯父様に阻まれる。

「父親として、君との交際は認めない」

 伯父様はテイミーを突き飛ばした。

「どうしてだ、どうしてこんなことに」

 いや当然の帰結かと。

 テイミーを置き去りにして、私たちはマンドリンの家に向かう。

「やっぱり尼寺に行かない?」

 私は思わず提案した。

「私たち男運が悪すぎるわ」

「早まってはいけない、マグダレン。弟には私からちゃんと言っておくから」

 いろいろと事情を聴いた伯父様はそう言って、私とマンドリンを引き留めた。

「まあ、嫁入り前の貴重な時間にあんなスカをつかんだのは運が悪いと思うよ」

 メアリアンの慰めも私達には遠くて。

「大丈夫、ちゃんとお父様はわかってくれるわ」

「さすがに前科が付いたら考えてくれるよ」

 マンドリンとメアリアン二人がそう慰めてくれながら並んで歩く。

 そしてくすくすと笑う。

 喜劇のような悲劇は終わり、やっとマンドリンは家に戻れる、たぶん私も家に戻れそうだ。

「さっきハットン夫人の言ったように終わり良ければ総て良しなのかね」

「ハットン夫人以外は地獄を見る感じだけどね」

 笑いながら私たちは家に帰る。



シェイクスピアの間違いの喜劇という作品のタイトルをもじりました。

終わり良ければ総て良しというもシェイクスピア作品で、突っ込み街としか言いようのない作品です。

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