終幕 激怒
拳の周りが淡い光を放つ、相手が魔力を放とうとしたのを悟った公務員二人がとっさに抑え込む。
「大丈夫ですか」
二人がかりで体当たりをぶちかまし、男を下敷きにした体制で公務員の一人が訊いた。
「それはそうと、ここでの騒ぎ、迷惑ですよ、早急に解散してもらえますか?」
にっこり笑って手にした手錠を男に掛ける。
男を二人がかりでお尻に敷いて、公務員はどこでも伝話で緊急呼び出しをかけ始めた。
「テイミー私を信じて、あれがマンドリンの正体よ」
マルチーズ系の女がかき口説く。そして、テイミーは恐る恐るという顔で、マンドリンのようなものを見つめた。
「信じられないよマンドリン、それにその派手な化粧、全然似合ってない」
うん、もどきってわからないの。がっかりだよ。
「マンドリン・カーフィールですか」
公務員の一人が座ったまま聞いた。
「ええ、そうよ」
もどきが答える。
「奇遇ですね、私もですよ」
公務員がフードを下げる。
フードの下にはまとめられたレッドブロンド。マンドリンがそこにいた。
まあ、マンドリンは魔法局の公務員なので、制服を着ていただけだ。帰宅途中に制服姿でいるのは別に違法じゃない。
そしてまわりは本気で気づいていなかったらしい。
チェスタトンだっけ、公務員の制服は人を簡単に透明人間にするといったのは。
「本当ですか?」
マンドリンがにっこりと笑う。
「ハットン氏、本当にマンドリン・カーフィールと付き合っているんですか」
パクパクとマンドリンを見て口を開閉するが、言葉は一言も出てこない。
伯父様は心なしか安堵の表情を浮かべている。
これで一難は去ったと思っているらしい。しかし無実のマンドリンを尼寺送りにしようとしたことはまだ解決の糸口にすらたどり着いていない。
後でマンドリンとゆっくり話し合ってほしい。
「違うわ、私は本当はマンドリンの従姉妹のマグダレンなの」
思わず食べていたお肉を吹き出しそうになったのを必死にこらえる。
相手は内の親戚関係まで知ってるくらいカーフィール家に親しいってこと。
「はあ?」
マンドリンがこちらを見た。私は肩をすくめてみせる。
マンドリンのお尻の下で馬鹿が暴れ始める。
「マグダレン、どうして、こんなに愛しているのに、君は僕のものだってずっと前から決まってたのに」
決まってねえよ。
思わず手に持ったカラトリーをひん曲げそうになった。
「あの、出たほうがいいのでは」
私の前に座っているアンリさんがそう言ったので、私も立ち上がる。
「それじゃ、一緒に出てくださる?」
アンリさんは私を紳士的にエスコートしてくれた。
「マンドリン、私以外に従姉妹のマグダレンはいるの?」
私はマンドリンのそばまで歩いていき、鬘を取り去った。
ふと、視線を感じた。軽く首を回すと、アンドレアが私を睨んでいた。どうやらからくりに気付いたようだが、マンドリンは嘘をついていないし、それを信じてもらう状況を作っただけ、我々には恥じる要素は何一つない。
「マンドリン、どちらが従姉妹のマグダレンかしら」
私はにっこりと笑う。
「もちろん貴女よねえ、そうでしょう、お父様」
「嘘だ、いるはずがない、結局来なかったと」
ハットン氏が私の顔を見て発狂している。
どういうことだ、考えてみて私は思い出す、私の手紙は届いていないとマンドリンが言っていたのを。
「もしかして、カーフィールの家の郵便物を盗んでいたの?」
私の手紙を盗んで何かに利用してやろうと思ったのなら私の存在を知っていておかしくない。
さらなる犯罪行為に伯父様はこめかみに青筋を浮かべた。




