232.鬼人幻燈抄 ☆
[作者]
モトオ 様
[あらすじ]
『人よ、何故刀を振るう』
江戸時代、まだ怪異が現代より身近で鬼が跋扈していた頃のこと。
江戸より百三十里ほど離れた山間の集落“葛野”にはいつきひめと呼ばれる巫女がいた。
護衛役である甚太はいつきひめの為に刀を振るうが、何一つ守れず全てを失う。
巫女を、惚れた女を殺したのは大切な妹。
彼女は百七十年後、全てを滅ぼす鬼神となって再び現世に姿を現すという。
憎しみから鬼となった甚太は、何を斬るべきか定まらぬまま、遥か遠い未来を目指す。
鬼に成れど人の心は捨て切れず。
江戸、明治、大正、昭和、平成。
途方もない時間を旅する、人と鬼の間で揺れる鬼人の物語。
[感想]
この作品、前から知っていましたがあまり好みではないかなあと思って手を出してなかったのですけど、エッセイの感想欄で非常に唆られる紹介文を頂いたので読んでみたら見事にハマってしまいました。
内容としては、江戸時代、とある集落で妖怪狩りをしている主人公が妹に愛した女を殺されて、復讐するために170年鍛え続けて平成で最後の戦いが始まるといった感じです。最初は復讐心しかなかった主人公が170年という長い時間で多くの人と出会い、別れを経てかけがえのないものを沢山手にし、徐々に変わっていく姿は涙なしには読めませんでした。
基本的に、復讐という感情が一番強いので結構暗めの作風になっています。主人公はかなり強いですけど、妹を筆頭にそれ以上の猛者が普通にいるので負けることもあります。なので強さの割には無双という感じはないのかなあと。
妹は元から鬼でしたし、主人公もある理由から鬼となるので170年という長さも寿命的な問題はありません。戸籍などの問題も妖怪退治などの仕事上、権力者と関わることが多いため大丈夫だと作中でありました。
「人」というものにしっかりと焦点を当てられているので、他の作品に比べて主人公以外の登場人物たちが引き立っています。とにかく敵味方問わず全員に魅力があり、そういうところにグッときましたわ。
あと、個人的には主人公の不器用な生き方を苦笑しながらもカッコいいなと思ってしまいました 笑
文字数を見ればわかると思いますが、江戸→平成にかけてどの時代も濃く書かれているので、昔の時代を知るといった意味でも楽しめるかと思います。平成編ではちょっと昔のオカルト話とかも出てくるので面白かったです。
ちなみに全部読み終わった人は最終章のタイトルに隠された秘密を探してみるといいかもしれません。
復讐に囚われた男が多くの別れと出会いを繰り返し大切なものをみつける、そんな物語を読みたい人は是非一度読んでみてください。
[評価]
総合評価:10
恋愛:3
ハーレム:3
無双:4
[その他]
完結済み作品
書籍化作品
文字数:210万文字
読了時間:70時間程度
作品URL:https://ncode.syosetu.com/n4442da/




