96話 神々の悪戯
俺は再び白い世界に居た。またあの子に呼び出されたらしい。何かステータスに変更や、召喚能力に変更があったのかと思うと恐怖しか感じない。
『そう思われると私は悲しくなるよ…太一君』
「うわっ! きゅ、急に後ろに現れないでくれよ!」
『うふふ…君が私を女の子扱いしてくれるのが嬉しくてね‥‥。今君のいる世界はどうだい? 恐ろしく恐怖に包まれているだろう…』
「え? あ、あぁ…そうだな…」
『それは私達の思惑通りだな。良かったよ』
「その分、犠牲者が出たぞ…それについてはどう答えるんだ?」
『君は勘違いしている。世界はみな平等と…』
か、勘違い?
『地球には魔物がいないんだ。死ぬ方法は自分で命を絶つか、交通事故、不慮の事故…殺人等々だ』
「な、何を言いたいんだよ…」
『君達には予期せぬ死が待っているかも知れないけど、他の世界というか、普通の世界では魔物や魔法などが存在して不慮の事故というのは存在しないんだ。だって生き返らせる魔法が有るんだから』
生き返らせる魔法?
『地球人には魔法が使えない特殊な生物。それは我々が実験している生物の中でも予定外のことが起きる生物なんだよ。だからこうやって君達だけは他の世界に誘う事が出来る…』
「俺以外にも…あの世界に?」
『いや、あの世界には君しかいない…というか、最近できた惑星だからね…君しか送り込んでいないテスト…いわばモルモットと言う訳さ…』
「も、モルモット…」
『悪い意味でとらえないでくれよ…こっちも言葉を選ぶべきなんだが…君と何回も会っているし、知らないなかでもないだろ? だから直に言わせてもらっている。あの世界には君しか送り込んでいないよ。そしてこれからも送り込むことは無い。違う世界に行ってもらっている…』
俺は唾を飲み込み、状況の整理をしようとした。だが…。
『面白い話をしてやろう…君がいるレグリダソーダには二種類のタイプがいる。ステータスを見ておかしい事に気が付かんかね?』
ど、どういう事だ…。
『世界には二種類の人間、私達が作ったのは何もできないか弱き人間と、何でも可能性を秘める特殊タイプを作った。君の仲間はどっちだったかな? 最初に仲間になった少女…彼女のステータスは…覚えているか? 全く魔法が覚えられないで苦労していたな…簡単である、生活魔法をすら覚えられず、攻撃魔法を覚えていたな…。ありえないんだよ。特殊タイプは生活魔法を普通に簡単に覚えてしまう。か弱き人間タイプはある程度の攻撃魔法だけは覚えるが、生活魔法は覚えられない…うふふ…あははは!! 今の仲間とどう違うのか…おかしいと思わないか? ステータスに違いがあり過ぎると思わないか?』
この子は気が狂っているのか…そう感じてしまうほど俺は恐怖に襲われてしまう。だが、言われて気が付く。確かにそうだ…全く異なるアズロットに関してはハーフだからだとずっと思っていたが、ミリーやシオンに関してはどうだろうか…ちゃんと調べた事がない。
『君は特殊タイプにさせてもらっている。それは自分で確認ができるだろう…まぁ、この世界に二つタイプの人間を作ったのは我が父なのだが…面白半分に作ってしまったためどうすることもできん。だが、そろそろ世界にその事実が伝わることになる。それはギルドという組織が発表するだろう。書物を発見するんだ。それから世界は大きく変わる…面白くなるぞ? 世界が大きく変わるんだ…君には世界でたった一つの能力を持ち、世界には二つのタイプの人間がいる。勘違いするなよ? ヒューマンとか獣人とかそう言った物ではない。君も知っているだろ? MMOとか言うゲームを知っているだろ? リアルに楽しめたら面白いとは思わないか?』
気が狂っているのか? この子は妖艶な笑みを見せながら俺に語りかける。全てを持っていかれる気分になり、俺はその話を聞き入ってしまう。
『呼び方はどう決まるのかな? 世界はどういう風に判断するのかな? 面白いだろ? 想像したら笑いが込み上げてくるよ…』
俺は唾を大きく飲み込む。ゲームをリアルにしたと言う事は…どういう意味か、その意味だけが頭の中に渦巻く。
『人は争いを始めるだろう…君は特殊タイプ…か弱き人間タイプどうなってしまうのか…面白いなぁ…太一君』
「あ、あんた…お、俺に何を求めているんだ!」
『何も求めてはおらんよ、世界を有るべき姿に戻すだけだ…君が知らない世界がそこにはある…。先ずは生き残るんだ…特殊な人間とか弱き人間。名前は決まっているが、それは今知る必要はないだろう…。差別が始まり、区別が始まる…ただそれだけだがね…ククク…』
悪戯な笑みを浮かべながら上目遣いで俺を見つめる女の子。この子は神なのか悪魔なのか…。
『それは君達が勝手に決めたもの…我々が決めた訳じゃない。世界は想像でできていると言っても過言ではない。我々は創造主…だから君の能力に制限をかけさせてもらったんだがね。我々の力が宿るその能力に…』
声も出していないのに…頭の中が読まれているというのか…。
「わ、我々の…力…」
『二つのタイプは共存できるのか…出来ないのか…それだけの話だ。悪かったね。私の戯言に付き合ってくれて…』
「ちょ、ちょっと待ってくれよ…ひ、一つだけ…戯言を聞いたんだ…願いを叶えてくれないか…」
『ん? 願い? 面白いことを言うね…。特別に話だけ聞いてやろうじゃないか、太一君』
「が、ガーディアンを作ってくれないか…」
『意味がわからん』
「二種類の人間に分かれるということは、世界が分断されるという事だ…君が言うように…特殊な人間と普通の人間。分からないことは特殊な人間がどうやって生まれてくるというのかとか、色々あるかと思うんだけど、町の中では争いをさせないで欲しい。町には関係ないだろ…そこで生活をしているんだから」
『それは君たちの理屈だろ?』
「ガーディアンは最強と言っていいくらい強いものにして構わない。これは町だけに配置をしてくれれば良い…城は兵士が勝手に守るんだろ? あんた達にはただのゲームだ。それにはルールが必要になる…今は投げっぱなしでルールもへったくれも無い。だからルールを作る一族でもいいから配置してくれよ」
『なるほど…管理者…と言う訳か。我々は高みの見物をしてそいつ等に命令をすれば良いと言う訳か…為替のように』
為替…確か、コアをガルボに変える銀行のような連中だったな…それは彼女らが送り込んだ管理者と言う訳か…。
『ご名答…そこから情報を吸い上げ、世界の状態などを確認していたのだが…彼らはそれに飽きてしまったようなのだよ。そのタイミングで君のような人間が現れ、世界を確認することができたのだ。ガーディアンを置く意味を教えてもらおうか…』
「よくあるでしょ? MMOでも、町の中では争いが禁止されているという事が…か弱きタイプの人が争うのには問題がないが、俺達特殊タイプは、確実にか弱き人間の上に立ってしまう…。だから、ガーディアンを配置するんだ。特殊タイプ同士の争いを禁止する。しかし、ガーディアンは魔物と戦ってくれない。ただの監視者という扱いだ。特殊タイプ同士が町中で暴れていたら裁きを…判断は君たちに任せるよ」
『考えておこうか…しかし、世界は二分するだろう。君たち特殊タイプと、か弱きタイプに。特殊タイプは管理局と言うものの統制に入ってもらうことにしよう…面白いなぁ…世界を作るというのは…』
ニヤリと笑う女の子。正義か悪なんてこの子達には関係のない話なのだろう。ただ、面白ければそれで良いと言うだけだ。
『随分と時間をかけてしまったな…。君が起きたら、世界は変わりだす…。最後に…この日記を君に渡そう。何か気がついたことがあったら書いてくれたまえ。日本人というクリエイティブな生き物は面白いことを考える。こうして欲しいやこうなったら楽しいなど…様々なことを考える生き物だ。…最後に、特殊タイプは王様になる事ができない。君達が世界を支配してしまうからだ。それはつまらない…だから王様にはなれないのだよ…。ガーディアンの件に関してはそのノートに答えを書かせてもらおう。そのノートは絶対に無くならない神器のノート。答えは書かせてもらうから大丈夫だよ。安心したまえ…。これで会うことは最後になるだろう。それでは楽しい冒険生活を作ってくれたまえよ…太一君』
彼女がそう言うと、世界の景色が変わりだし、俺は目を覚ます。体を起こすとシオンとミリーが心配そうに俺の手を握って起きるのを待ってくれていた。
アズロットは椅子に座って優しく微笑み「おはよう、タイチ…外が騒がしいけど、タイチじゃないと理解が難しそうでね…」と言って、起きたことにホッとしてくれているように見えた。
「わかった。直ぐに起きるよ…」
そう言って、二人の頭を撫で俺はベッドから起き上がる。世界が変わる…神々の悪戯に我々は巻き込まれてしまったようだな…やれやれ。




