91話 一人回収
夕食を食べながらキングストンの町について質問すると、どうやら隣町らしい。近くにあることにホッとするのだが、歩いて3日はかかるとの話である。
食事を終わらせ、家に帰る。二人はそのまま休ませ、俺は単車を召喚する。
「悪いが留守番をしといてくれないか。夜中には帰ってくるから」
そう言い残して俺はバイクを走らせ、あっという間にサキカワの町を後にするのだった。数時間も150キロを超えるスピードでバイクを走らせていると、新しい町が見えてくる。流石単車のスピードは違うと思い知らされるが、正直言って事故を起こすかもしれない怖かった。
情報では療養中と書いてあったので、宿屋をあたってみる。数件の宿屋を訪ねてみると、それらしき人物が泊まっていると、宿屋の店員から言われ、案内される。
「アズロット?」
「……た、タイチ……タイチなのか……?」
「あぁ、迎えに来たよ」
「し、死ぬ前に……タイチと出会えたのだな……良かった……」
「大丈夫さ、アズロットは死なないよ。だって、俺が助けに来たんだもん……【ディスペル】!! 【レティオ】!」
真っ青な顔していたアズロットだったが、徐々に顔色が良くなっていく。
「何かにやられたのか?」
「ど、化石に……」
「そうか、間に合って良かったよ」
ん? 化石と言ったか? 今……。
「魔物退治してガルボを稼いでいたんだ。タイチを探すために。そしたらガゴイル? とか言う魔物に呪いのような魔法をかけられてしまって……」
言葉がかなり上手くなっているように感じる。
「さぁ、帰るぞ。二人が待っている」
「え? リタは待っているかも知れないけど……カベルネは……」
アズロットはカベルネの事を何か知っているようだ。だが、そんなことは後回し。今はアズロットが無事でいることが何よりも大事なのだ。
「違うよ。俺の新しい仲間だ。後はお前だけだったんだよ。向こうについたら説明をする。だからお前も……」
「う、うん! 一緒に行く!」
治ったばかりで身体がおぼつかないのだろう……ふらついている。俺は肩を貸し、宿屋を出て行く。そして、新たにバイクを召喚してアズロットを後ろに乗せる。
「俺に掴まってろよ! 飛ばして帰るからな!」
「う、うん!」
車は乗ったことはあるのだが、バイクは初めてだから緊張しているようだった。アクセルを吹かし、フルスロットルで出発した。
「う、うぉぉぉぉぉ!」
味わったことのないスピードを体感し、アズロットは声を上げる。俺はそれが楽しく笑うのだった。
まだ日が昇らない頃にサキカワの町に辿り着く。俺はゆっくりと扉を開けると、奥の方で灯りがついているのが分かった。アズロットは俺の後ろから付いてきているのだが、怯えているように見える。灯りがついているのはリビングの方で、俺達は奥へと進んでいくと、ミリーとシオンがウトウトしながら椅子に座って俺の帰りを待ってくれていた……。
「お、お前達……眠ってなかったのかよ……」
驚いた俺が声をかけると、二人はハッとこちらを見て、直ぐに立ち上がる。
「お、お帰りなさいませ! タイチ様!」
「お帰りなさいませ……タイチ様」
眠気からテンションがおかしい二人。だけど、主人の帰りを待ってくれているのは非常に嬉しい。
「ただいま……二人共。悪かったな、置いていって……」
「いえ、お帰りになるのが遅くなると仰っておられましたから……」
シオンが笑顔で答える。
「そちらの……方は……」
後ろにいるミリーが気が付いたようで恐る恐る聞いてくる。
「彼女はアズロット。ミリーと一緒でハーフだ。まぁ、人間と魔族とだけどね。だけど今は俺の仲間だよ。二人共仲良くしてやってくれないか」
「かしこまりました、アズロット様」
ミリーとシオンは片足を突いて頭を下げるのだった。
「さぁ、三人は眠ってくれよ。起きたらまた忙しいぞ」
二人は畏まりましたと言い、部屋に戻っていく。アズロットは俺の部屋にやってこようとするのでリビングにベッドを召喚してそこで寝るように指示をすると、唇を尖らせながら布団に入って行く。俺はそのまま布団に入り、眠りについた。
翌朝になり、厨房が使用できない二人、朝食を作る事が出来ない状態で戸惑いながらコンクリで固められた床を見つめていた。
「おはよう、二人とも……昨日は悪かったな……」
俺が声をかけると、二人は慌てて振り返り挨拶をする。
「た、タイチ様、朝食は如何いたしましょう……」
ミリーが悲しそうな表情で聞いてくる。
「外で適当に何かをつくり、食べるでよくないか? 大丈夫だって……心配するなよ」
「は、はぁ……」
「二人はバーベキューと言うものを知らないのか?」
「ば、バーベキュー……? ですか?」
首を傾げながらシオンは聞き返す。そして外に出てバーベキューセットを準備する。
「冒険に行ったらこうやって外で食事をするんだ。まぁ、これほどの設備はないけどね」
「ぼ、冒……険……ですか? わ、私達が……冒険者……に?」
「そうさ、お前たちと共に冒険をするんだ。確かに家を買って、のんびり暮らすのも良いかもしれないけど、人生は一度きりだ。楽しもうじゃないか」
二人は膝を突き、頭を下げる。
「ぼ、冒険者だなんて……ありがたき幸せです!」
「一生タイチ様と共に!!」
深々と頭を下げ、二人は言う。なんて嬉しいことを言ってくれるのだろう……。感動しそうだった。アズロットを起こして四人で朝食を取り、改築作業を再開させるのであった。
アズロットには改築作業に向いている訳ではないため、狩りに行かせ、俺たち三人で作業をすすめる。厨房のコンクリートが乾いていることを確認し、給排水配管を組み立て下地を作り、12 mmの合板ベニアを張っていく。排水配管の位置に穴を開けベニアをセットしたら部屋はスッキリしたように見える。
キッチンシンク台をセットしてシングルレバーをセットしたらキッチン周りは完成。次は給水ポンプを設置して各所に水が流れるようにしていく。トイレ回りや台所の排水を作る。排水に関してはある程度設備が整っているというか、トイレは汲み取りに来てくれるので、残りは廃水処理だけになるのだ。調べたところによると、生活排水は、川などに流れるように作られており、浄化装置がある訳では無いらしい。仕方なしに家の周りに浄化装置を設置することにしたのだった。
残りは家の中である。家の周りに配線を隈なく回して、電気の道を作りスイッチ一つで明かりが点く様に改造しまくる。お昼を食べるのを忘れてだ。
アズロットが狩りから戻ってきてお腹が空いたと言われたときに、俺はようやく昼ご飯を食べていない事に気が付いた。二人は文句も言わずに俺の言う事を素直に聞いてくれていたため、全く気が付かず、俺は申し訳ないと感じ、晩飯は豪勢にふるまうのであった。




