90話 期待ほど怖いものは無い
アラームが鳴り目を覚ます。
「くふぁ〜……!! 久し振りに良く寝たよ……」
体を伸ばしてポキポキと身体を鳴らす。二人は起きているのか分からないが、とりあえず飯を作らないとならない。厨房へ向かうと、既に二人は起きており、朝食らしき物を作っていた。なんだろう……こんなこと初めてだ……いつも俺が作っていたし、俺が一番に起きていた。
だが、この二人は奴隷の鑑だ! 素晴らしい! そして俺に気がついた二人は膝を突き頭を下げる。
「「おはようございます、タイチ様……」」
「お、おはよう……。な、何を作っているんだ?」
「ちょ、朝食でございます……タイチ様のお口に合えば良いのですが……」
恥ずかしそうにシオンが言うと、ミリーは優しく微笑む。
「一生懸命作ってくれたものは美味しいと思うよ。さぁ、その朝食を食べさせてくれよ」
そう言って俺達は朝食を食べるのだが、今までで味わったことのない味がして、俺たち三人は手を止めるのだった。
しかし、彼女達が一生懸命作ってくれたものだ。俺は無理矢理喉に押し込み地獄の苦しみを味わう前に【ディスペル】と【レティオ】の二つをかけると、苦しみが消える。
こんな朝食は食べられたものでは無いというのを理解している二人は、俺が無理矢理食べた事に驚きながら見つめて、口をパクパクさせていた。だが、そんな食べ物ではない何かを食べきった事により二人は今まで見せたことの無い嬉しそうな顔を見せてくれる。
「お、美味しかったよ……お詫びに俺が……ふ、二人に作って上げるよ」
「め、滅相も有りません! わ、我々の事なんかよりも……」
両手を振りながらミリーが慌てながら答えるが、俺は立ち上がり食事を作り始める。二人は先程までの元気が無くなり俯いてしまう。
「料理に関しては一緒に作っていこうな……俺が料理の作り方を出来るだけ教えてあげるさ」
簡単にレトルトチャーハンを召喚して二人分作り上げる。朝からチャーハンは重すぎるかと思ったが、手軽だったし、時間はかけられない。
二人は床で食べようとしたので、テーブルの上で食べるように指示。
「わ、我々は奴隷です……同じ席で食べるだなんて……」
「そ、そうでございます……私達はご主人様にあんな物を食べさせたのに罰も与えないなんて……」
「俺のために必死でやってくれている。それは分かっているよ。それが裏目に出ただけだ……大丈夫。ユックリと成長していこう」
「あ、ありがたき幸せでございます……」
ミリーが膝を突き頭を下げる。俺はしゃがんでその頭を撫でると、ミリーは恥ずかしそうにしていた。
「一緒に頑張ろうな。今日はこの家を改造して住みやすい家に変更していく。二人はそれを手伝ってくれるか?」
「「かしこまりました!!」」
シオンは尻尾を振りながら嬉しそうに、ミリーは優しそうな笑顔で返事をするのだった。
俺達は外に出て、庭を見渡す。木造のためかなり劣化が目立ち本当にボロい家だということが解る。庭がついているためもう少し改築できることがわかるし、お風呂すら付いていない家だ。これは作らないといけない。
広げる範囲までを三人でスコップを使い掘り出していく。そして生コンを召喚して基礎を作り上げた。どこから道具等が出てくるのか分からない二人。
だが、立場的に質問ができず我慢をしながら作業を続けていく。生コンが乾くまで電気工事である。脚立を召喚して屋上に上る俺達。二人に落ちたりしないように注意して天井の板を剥がすように指示する。何故剥がすのか意味がわからない二人は言われたとおりに天井の板を外して垂木だけの状態になる。
腐った場所は補強して新たに12 mmの合板ベニアを召喚する。エア釘打機で合板を固定していく。素人であるが、三人でやっているので中々ペースは早い方だと思われる。ベニアを貼り終え、昼ご飯にする。再び俺がオニギリを作り二人は美味しそうに食べてくれた。
暫く休憩して屋根に防水シートを設置(途中工程は省きます)、瓦を置いていき屋根は完成したのだが、やるべき事はまだ残っている。電気の作成である。これからは電気が必要になるので、屋根全面にソーラーパネルを設置していく。二人は初めて見るソーラーパネル。一体何の板なのかわからず首をかしげる。チャージコンバーターや充電、コントロールパネルや配線を出していく。二人には今度こそ家の中を掃除して貰い、その間に俺は配線を繋げていく。
配線が組み上がりコントロールパネルを確認すると、電気が充電されてきており、俺はホッとする。次に給水ポンプ装置を井戸の側に設置していく。二人に厨房を破壊するのを手伝って貰い、厨房はスケルトン状態になる。床は砂なので下地を作るために生コンを厨房一面に敷く。今日一日が終了してしまう。
「今日は外食にしよう」
二人は逆らうこともせず頷き、俺の後ろに付いてくる。その時の話し声が聞こえてきた。
「ご主人様は一体何をお作りになっているのかな?」
「タイチ様は凄い物をお作りになっているんだよ、きっと……私達には想像できない何かを!」
やばいですね。失敗という事が出来ないではないか……。そんな風に期待をされて俺は二人が見た事のない建物を作り上げることを誓うのだった。




