88話 新しい生活
翌朝になり、ジョルジーニョが迎えに来てくれた。
昨日はカベルネに対して悔し涙が出たが、既に過去の話。仲間を庇って死んでしまったリタの冥福を祈ろうと思う。
「今日はちょっと案内しづらい場所に行くから……」
その前にコアの売却をしたいとお願いしたらジョルジーニョは町の管理者がいる所へと案内してくれる。受付の人は解体に時間がかかるからと言って、後ほどガルボを回収しに来てくれと言ってきたので、帰りに寄ることにした。
案内し辛い場所……そう言って連れて行ってくれた場所は風俗街。ジョルジーニョが恥ずかしがるのも分かるような気分になる。ピンクな雰囲気で、日本でもそういった場所に行ったことはない。
「あそこにあるのが奴隷商館だ」
やはりここにも奴隷が存在するようだった。理由は沢山あるらしいが、やはり階級層の低い人達が売られ、ガルボに変えられてしまうようだ。
俺は他の場所を案内してもらい、ジョルジーニョと別れ、ガルボを回収した。ダンドリオスの肉は他のギルドに売却したらしく、その分のガルボももらったが、相当な額になった。
その足で奴隷商館へと向かう。生まれて二度目の奴隷商館。一度目はリタだったが、問題を抱えていた女の子。今回はそういった子ではなく、純粋に俺のために働いてくれる子が良いと思いながら扉を開ける。
前に入った時は薄暗く、いかにも悪事をしていますよと言った感じだったが、今回はそういった感じではなく、華やかな場所に案内をされた。
「いらっしゃいませ……本日はどのような物をお探しでしょうか?」
若い店員が話しかけてくる。
「ここって……奴隷を扱って……」
「もちろんでございます……。家事手伝いからなんでも……お客様は初めてですか? いえいえ、言わなくとも分かります。こちらの待合室でお待ち頂けますか?」
そう言われて案内された場所はフカフカなソファーで待たされる。暫くすると、店員が現れ俺を別室へと案内する。10人程女性が並んでおり、俺は唾を飲み込む。
「な、なんで女性ばかりを?」
「お客様が望まれているのがそういった物を所望されているのかと……」
素敵な笑顔で答える。確かにそう言う子がいたら良いかなって望んではいたのだが……俺は顔を引き攣らせながら店員の顔を見ていた。
「違うのがよろしければ……」
ニヤニヤしながら言う店員。俺の心を読んでいるくせに嫌がらせのように言う。
「い、いや、大丈夫だ……です……」
敬語で答えた方が良いのか、それとも自信たっぷりで答えればよいのか分からず、変な回答をしてしまう。
「右から年齢が若くなっております。見るのはご自由ですが、お触りになるのは止めて下さいね」
「は、はぁ……」
取り敢えず頷き、俺は右から見て行くのだが、三人目くらいまでは年齢が10歳いっていなさそうな年齢だった。
「は、話しかけても良いんですか?」
「ご自由に……ですが、触るのは勘弁してくださいね」
話しかけても良いそうだけれど、なんて話しかけようが迷ってしまう。先ずは年齢と名前を聞いて行く。緊張はしているようだが年齢が高いと言っても、俺と変わらないくらいの娘なのだが……。その中には耳が通常のことは異なる子もいた。
「この子は……獣人?」
「いえ、その子は獣人とヒューマンのハーフで御座います。能力的には獣人と変わらないかと思いますが……なんせ奴隷ですからね。しかも……」
そう、先ほどから気になっているのが目だ。俺の事を認識しているのかどうなのかが分からない。
「目が……見えてないんですか?」
「いえ、多少は見えているんです。ですが、そんなに良くは見えていないようで……そろそろ処分なんて考えております。まだ16で若く、初物何ですがね……」
「しょ、処分?」
「炭鉱送りになるんですよ……売れなかった奴は皆炭鉱や鉱山で働かされます」
どこの場所も一緒だな。そんな事を考えていると、俺達の話を聞いていた獣人とハーフの娘は寂しそうに小さく微笑む。炭鉱で働く事になるのは運命だと悟っているかの如く。
「では……この子を……えっと、ミリーを下さい」
目が悪い獣人ハーフのミリーを俺は購入する事にする。あの寂しそうな微笑みが目から離れないからだ。
店員は初物だが、曰く付き物件なので安くなると言い、4万5000ガルボでミリーを買い取るのだが、着ている服というかスケスケの肌着以下の服をどうにかしないといけないと思いながら彼女を見ていた。魔法による契約書のサインをして奴隷契約を結ぶ。
「これで契約は完了です。この子はあなたの物になりました」
そう言って店員はミリーを俺の前に差し出すのだが、ミリーはポカ~ンとした顔で俺の顔を見る。何故、目が見えない私なんかを購入したのかと、疑問に思いながら見ているように見える。
「じゃあ、ミリー。俺と一緒に来るんだ」
「は、はい、ご、ご主人様……キャ……」
足を躓き倒れるミリー。目が悪いから足元がおぼつかないのだろう。立ち上がったミリーは、一瞬後ろを振り返り、誰かに別れを告げるかのように小さく会釈した。
店員に別れの挨拶かと思っていたのだが、一人だけさびしそうにしている奴隷の娘がいて、判りにくそうに小さく手を振って別れを惜しんでいるように見える。目が見えないが、その娘に対して何かを感じて会釈したのだろうか。その子は獣人であり、耳と尻尾が付いている可愛い娘である。
「ミリー? 誰か気になる娘でもいるの?」
俺は立ち止まりミリーに確認する。ミリーは答えて良いのか分からない顔して悲しい目をしていた。
「え、えっと……あ、あの……」
「多分、あの娘に対してでしょうね……世話をしていたから。あの娘も売れ残っていますからねぇ……」
店員が教えてくれる。コイツは商売上手かも知れない……。分かったよ、その子も買えば良いのでしょ! ミリーも可愛いけれどその娘も可愛い。尚且つ、ミリーより胸がある。
「安くして下さい……」
そう言って俺はもう一人奴隷を購入する羽目となった。彼女の名前はシオン。
彼女の名前はシオン。この娘はミリーと別れずに済んで嬉しそうな表情をしており。おれは奴隷契約を結ぶと、嬉しそうにミリーの側へと駆け寄るのだった。まぁ、ミリーも嬉しそうにしているならそれで構わないや。
ミリーの忠誠度が60に対して、シオンは50。俺の奴隷になった事から二人のステータスが見えるようになったのだろう。二人共耳がピコピコして可愛いのだが、服はスケスケの薄着一枚を着ているだけで、パンツ等は穿いていないことが分かる状態(スケスケ過ぎて見えてしまうからだ)。慌てて建物の裏に駆け込み服を召喚し、二人に着てもらうことにした。何もないところからパンツが現れた事によりシオンは驚くのだが、本人も状況を理解しているのかパンツをミリーに穿かせ、次々とおれが召喚した服をミリーに着させていく。
次はシオンの番だが尻尾があるため、彼女に謝罪して一度だけ後ろを見せてもらい、パンツや服を召喚した。
シオンは慌てて服を着込んで、二人は裸同然の姿から、普通の格好になるのであった。
再びジョルジーニョが居るギルドへ向かうと、既に引っ越しを始めており、ジョルジーニョはギルドを退会した事を告げられる。今朝の時点で退会していたらしく、ガルボは踏み倒された形となったのだ。
出会ったら殺してやろうかと思う、今日この頃。
しかし、問題はまだ続く。俺は曰く付き物件を一つだけ購入したのだと思っていたのだが、シオンは喋ることができない。確認したときは店員が教えてくれたのであった。だから喋れないなんてわかるはずもなく、二人はニコイチの扱いになるのだ。なので、二人は格安で購入することができたのだろう。
しかも、二人共レベルゼロ。全くの雑魚である。二人を連れて旅なんかに出たらしんでしまう……俺ではなく、二人がね。仕方無い、しばらくはここで訓練を積みながら生活をするしかないだろう。
俺は町を管理している建物に二人を引き連れ、格安の家がないか聞いてみると、月3000ガルボの2DKを紹介される。せめて三人部屋が欲しいと言うと、5000ガルボの部屋を紹介され、そこに住み込む事にした。
希望した通りの平屋で、建物の改造は自由との事。だが、物件返却時には原状回復費用を支払わなければならないと言われてしまった。まぁ、これは日本でもあった事だし、綺麗にして返せば文句ないのと、バリューアップに関しては原状回復義務に当たらないと説明があった。
「今日から暫くはここで暮らすぞ。まずは掃除をしよう」
そう言うと、二人は嬉しそうに頷いて俺達の住み処に入って行くのだった。




