84話 げ、ゲームじゃなないよね?
正直、歩いていくのは面倒だったので、電気バイクを召喚して先へと進むことにした。街道に出るまではこれで良いだろうと思い、一時間ほど走らせていくと、町のような城壁を発見する。
まぁ、海に近い場所だから、近くに町があるだろうと俺は思っていた。その通りに町があり、俺はホッとして召喚を解除して、歩いて町へと向かっていく。
町の入口らしき場所に到着すると、いつもなら門番兵らしき人にギルドパスを見せる筈なのに、門番兵らしき人物がいない。まさか廃墟かと思い中に入っていくと、町はかなり賑わっており、呆気にとられてしまう。
「ど、どうなってるんだ?こりゃ…」
俺は周りを見渡し、見た目による状況判断を開始する。だが、答えが見つかる訳ではなく、余計混乱するだけであった。
「ちょ、ちょっと話をして良いですか?」
これ以上情報を手に入れるには人に確認するしか方法が無いため、仕方なく俺は通行人を呼び止めたのだ。
怪訝な顔する通行人。見た目から可笑しいらしく、俺は田舎者のように見られているようだった。
「えっと…何処から話せば良いのか…あ、ギルドはどこですか?」
「ギルド?…もしかして…ホールの事を言っているのか?」
「あ、そ、そう、ホール!名前が出てこなくってさ…」
「俺達のホールはあっちにあるぜ…」
男は指を差し、方角だけを伝える。どうやらギルドだけでは伝わらないようだ。と言うか、コイツは「俺達の」と言っていた。俺は建物の影に隠れ、着ている鎧を脱ぐ。そして、街の人が着ているような服を召喚して着替えをして街を歩くことにした。
町は普通の町というよりも、活気にあふれた物凄く都会的に感じ、ちょっと懐かしい気分になった。店を見て回り、解体屋という店を発見した俺。早速本日手に入れた魔物の解体を行う。
「おぉ、ボビックスじゃないか。こいつを解体すりゃいいのか?」
「あぁ、それと、俺ってば漂流者でさ、こっちの世界が全く分かんないんだよね、教えてくれない?」
「ん?漂流者?どういう事だ?」
海を越えようとしていたのだが、船が壊されこの土地に漂流したことを説明する。すると、店の者は仲間を呼んで、俺に説明をするよう頼んだ。解体するのに集中したいらしい。
再び先程の説明をすると、仲間の男は笑いながら話を聞いてくれる。ちょっとムカつくが、まぁ教えてくれないよりはマシだろう。すると、男は俺に言う。
「ここにはギルドパスなんかない。ガルボと絆が全てだ」
「ど、どういう事ですか?」
「お前がいた大陸はど田舎の大陸だったと言う訳だよ。ここではギルドというのは集団を表す。ギルドパーティというのがギルドの事で、ホールというのは俺達の根城。パーティには名前が付いていて、それは俺達の誇りだな。マスターがギルドを管理している。俺達はそいつの事をギルドマスターと呼ぶんだぜ?多分こう言ったのをマネしてお前らの大陸は作られたんだろうな。」
「そ、それって‥」
「それにここで働いている奴は皆ギルドに所属している奴らさ、俺達のギルドは食料ギルド『食卓の騎士』だ。ウチのギルマスは飯には煩く尚且つ戦う集団だ。だからこういう名前を使っているという話らしいぜ。他の店も他のギルドの連中だろう」
おいおい、ここはどっかのMMOかよ。今までのRPGとは異なるじゃないか。
「仲間になるのは自由さ。仲間から抜けるならギルマスに一言言うのが礼儀だ。一人で旅をしている奴もいる。ただし、お前が持っているパスは皆必要なんだ。それは冒険者の証というより、身分証明書って奴だからな。ちょっと貸して見な…おや?全く更新されて無いじゃねーか?町の中央に大きな屋敷がある。そこに行けば城から派遣されている町の管理者が居て、そいつがそれを全て管理してるんだ。こいつがそれを発行してくれるぜ。まぁ偽造や自分で作った物なら…分からんがね」
その男は笑いながら説明を終わらせ、ボビックスを捌いている奴の作業が終わり、俺にガルボを要求してくる。
「五千ガルボになるぜ。まぁ、田舎者で何も知らなさそうだから今回はタダにしといてやるけどな」
そう言って俺は肉を渡される。
「が、ガルボはどうやって稼ぐんですか?これじゃあ、稼ぐ事なんか出来やしないじゃん。前はギルドハウスでコアを買い取ってくれたけど…」
「コアを買い取る?コアだったら錬金ギルドに渡せば何かしらの道具に替えてくれるぜ?純度によりけりだがな。ガルボは…テメーで考えな。テメーも冒険者の端くれだろ?取り敢えず田舎者が持っているガルボが本物かどうかだけ確認してやるよ」
俺が持っているガルボを見て本物だと教えてくれる嫌な冒険者。先ほど捌いていた奴が教えてくれる。
「ここでは仕事をしてガルボを稼ぐんだ。お前がいた世界でも仕事は有ったろ?それと同じだよ。コアの交換でガルボを集める時代は終わったのさ。今は商売でガルボは成り立ってる。町は城から派遣されている奴が管理している。出会いと別れもそれで行われたりするんだ。城から依頼が有ったり、町の人から依頼が有ったりするとそこで受け付けてくれ、仕事をくれる。まぁ、最近は直接ギルドにお願いして来たりするがな。そこでガルボを稼いで、こうやって生活を安定させれる仲間を探すか、魔族や魔物を倒して素材を売ったりしてガルボを手に入れてくるのが早いんじゃないのか?」
「ま、魔族がガルボになる?」
「おいおい、お前がいた場所はどんな田舎だ?もしかしてエンジェルティアーズの先からやって来たのか?それなら時代が遅れ過ぎているのが分かる。あそこは一千年ほど歴史に差があるからな…」
「え、エンジェル…ティアーズ?」
エンジェルティアーズとは、俺達がいた大陸を差していた。ここ最近、やっと俺達の住んでいた世界に飛空艇を送り、この大陸が発見されたとの話だ。それまではそんな世界なんて物は伝説級のうわさ話でしかなかったらしい。一千年前の冒険者が、何かの理由であの大陸にやってきて勇者や英雄となり、魔族を倒して平和を訪れさせた…というのは建前で。そいつらはここの大陸の漂流者で、天使の涙の魔物が弱すぎて、冒険をしながら生活の基盤を作り上げたのではないだろうかと言われている。その名残がギルドハウスとなり、今のギルドが出来上がったのだと推測されるが、そんな金にもならない大陸を調べる価値が無い。なので、暇すぎる冒険者が遊び半分で大陸を渡ったりするが、そんなに交流があるわけでは無かったらしい。あの程度の魔物に苦戦するくらいなら、別に滅びてくれて構わないというのが大陸のお偉いさん達が出した答えだそうだ。飛空艇に関しても、魔物が襲ってきたからでは無く、交流する価値が無いから適当な理由付けで飛ばさないようにしたらしい。
この大陸の名はビギニンワルフルドという大陸で、隣にはジオネデルモンドという大陸があるという事が確認されている。他にも五つの大陸があり、システムはここと変わらないというわけである。また、先程の話で分かる通り、職業に関しても沢山あるようだ。ここの食卓の騎士ギルドの他に、錬金ギルドなどもあるという事だから、本当にMMOと変わらないのだろう。
もしかしたら俺と変わらない能力もあるかもしれない。そんな事を考えながら俺は話を聞いていたのだった。
暫くして俺は、城が派遣して管理していると言われている建物へ向かう。今のままではパスの意味を成していないからである。城が管理している建物は大きく、そこでは家や土地なども販売をしているらしい。ギルドの連中はそこで根城を確保したりしているとの事だった。中に入って見ると、あっちの大陸に比べて文明も結構進んでいるように感じられる。
受付の女性らしき人にパスを見せると、何かの機械に入れ込み、パスが本物か確認しているようだ。機械というか、コアを基盤とした魔法のシステムで読み取りや書き込みをしているらしく、俺のパスは大昔の物と判明された。そのため新しいパスへと切り替わる。まるで町役場のようだ。
そのパスを受け取ると、本当に一新されており、俺のレベルやスキルなどが記載されていた。だが、特殊スキルである感知やアイテムクリエイトは記載されておらず、不明スキルとだけ記載されていたのだった。
受付は町の役所と同じで色んな窓口があり、新規に冒険者が集まりソロでやるか、どこかのギルドを紹介してくれるかと案内をしていたりしていた。どっかのゲームでの出会いと別れの酒場のような感じだ。
基本的に俺はソロでやるつもりだ。確かに知り合いは多いほうが良いかと思うのだが、カベルネやリタ、アズロットなどの事を考えたら人が作ったギルドに入る気になれない。
総合窓口のような場所で色々話を聞き、ここで食料ギルドや服飾ギルドから出されている依頼をもとに仕事を探し、ガルボを稼ぐというやり方。次に魔族を倒してガルボを稼ぐやり方などがあるらしい。
魔族にも色々いるらしくパトリコットリベルトのような奴は魔族と言うより、魔物。あれは魔物が進化した姿だということが判明する。そしてこの大陸ではどこでもいるような魔物だと言う事も分かった。俺ってば弱すぎる。俺のパスを見た受付の女性も、「このレベルで良く生きて来れましたね」という始末。俺がいた大陸は本当に終わっている大陸だと思った。
この大陸でもガルボが使用されている。ガルボはコアで作られているらしいというのを教えてもらったのだが、作り方までは分からないとの事だった。だが、錬金ギルドがあるので、何かしらの方法で作られているのは確かである。しかし、錬金ギルドでもガルボを作ることは出来ないのだった。これは世界で誰も解き明かす事が出来ない謎の一つとして扱われており、調べる事は禁忌とされているとの事だった。
俺は再び説明を受けると、色んな人種がいるらしいことも判明する。基本的にはヒューマン…俺みたいのを差す。他には獣人などもいるらしい。エンジェルティアーズにはヒューマンタイプが多く、獣人タイプは少ないとのことだった。こうやって聞くと、改めて異世界だと感じるし、ゲームチックにも感じる。
全ての魔物は素材になるらしく、コアには魔力が含まれているため、魔物や魔族は魔力を求めるためにガルボを食べるらしい。なので魔族や魔物を倒せばガルボが手に入るとのことだ。稀にガルボが手に入らないというときは、ガルボがコアに吸収されてしまっているから無くなっており、そういった場合は純度の高いコアが出来上がるというわけである。こう言った魔物がドラゴンなど、素敵な名前の魔物達である。しかも、コアは武器などにも使用されている。これはエンジェルティアーズでも同じことだが、作りや素材等は異なるものであった。
基本的にコアは町の管理者が買い取り、ガルボに替えてくれる。城から派遣されている管理者が、為替と言う組織と繋がっているらしく、そいつらがガルボを管理しているとのことだった。多分、口外厳禁の何かがあり、為替という組織は銀行のようなものなのだろう。話に聞くと、こっちの大陸にも洞窟があるのだが、中は向こうの大陸とは異なり、本当にダンジョンや遺跡などあるらしく、そこには宝箱等も有ったりしてガルボも入っているとの事だった。他の町にも為替はいるらしく、それもギルドではないかという噂があるが、それは謎で調べる事すら禁止されてるため、謎が謎を呼んでいるだけだった。
聞けば聞くほどMMOそのものだ。だが、異世界とはそういった物なのだろう。それを俺達地球人がそういった物をゲームとして売り出したり、小説や漫画など物語を書いたりしているのではないだろうか。まぁ…現実、ここにその世界があるのだから、今目の前に起きているこの現実を信じるしかないのであった。




