82話 新たなる旅立ちと、約束する別れの再会
それから2週間経ってから、俺達はロンダバリツ城に辿り着いた。女性が多いパーティだから移動がそれなりに大変なのだ。お前にはその意味が理解できないだろう……パトリコットリベルト……。
そして、飛空艇乗り場で乗ることができない事が発覚する。その理由は、魔族と空の領有権巡っての戦いが始まってしまったからである。
パトリコットリベルトが言うように、魔族との本格的な戦いが始まったのだ。旅の途中でも、かなりの量の魔物に俺達は遭遇し、それを駆除したりしていた。
結論から言うと、空が無理なため、船で海を渡るという事になる。この城から1週間程歩くと、マサワッツの町があり、そこには港と言う所が存在しているらしい。そこから隣の大陸へ船を出してくれるそうなのである。
いつ海が支配されるのか分からないため俺はあまり使いたくない手段を使用することにした。
「本当に楽ちんな馬車だな! これは」
アズロットが楽しそうに言う。俺としては別に大したものではない。ちなみに、距離を稼ぐ為にアクセルをベタ踏み状態であるからあと一時間もすれば到着するので有ろうと思われる。
そして、俺達はあっという間にマサワッツの町に辿り着き、船を出してくれるようにお願いをすると、高額なガルボを要求される。しかし、この大陸では既に幾つかの町で争いの話が出ており、この大陸から逃げようとしてしている人が大勢いるとのこと。人々が逃げるとなると、パトリコットリベルトの言う通りになり始めていることが分かる。仕方無しに俺は高額なガルボを支払い、隣の大陸へと海を渡ることにしたのだった。
船に乗るのは生まれて初めてである。ゴムボートなら何度か乗ったことはあるのだが、それは河原などの渓流での話。こんな大海原を渡るための船なんて初めてである。だが、それ以上にカベルネやリタ、アズロット達である。海というのを初めて聞き、そこへとやって来たのである。驚きと戸惑いは半端ない物であった。
「こ、これで……この水溜まりを渡るんですか?」
「そうさ、こいつでここから先へ進む」
「お、落ちたら死んじゃいますよ!」
「皆死んじゃうかもね。俺を除き」
「そ、そうか! わ、私達には、タイチさんがいるんでした! きっと大丈夫……」
カベルネ達は呪文を唱えるかの如く俺がいるから大丈夫と呟き。心を落ち着かせていた。俺がいても駄目なものは駄目で、良い物は良いだけの話なのだけれどね。
船に乗り込み、俺達は押し入れ小屋のような場所に押し込められる。四人で20万ガルボも支払ったというのにこの部屋というのは正直如何なものなのだろうか……。そんな事を思いながら船は陸から離れ、海原へと旅立ち始める。
そして分かった事。俺達の食事がないということ。流石に温厚であるカベルネが激怒する。船員に文句を言いに行くのだが、返ってくる言葉は……。
「だったらここで降りるかい?」
で、あった。これを言われてしまうとカベルネも下がるしかなく、部屋に戻り俺に泣きついてきた。
俺はと言うと、新大陸について、どんな所かと心を躍らせながら本来、二人部屋なのだが、四人で泊まっている部屋の片隅で今まで起きた事を書き記している。
神様と思われる少女から雑な説明を受け、この世界で生活を始めるところからこの船に乗るまで……かなり沢山の出会いと別れを繰り返してきた。メルトは戦争を避けているのかなど、考えることは沢山ある。連れてくれば良かったかも知れない。今更な話だし、戦争の話も知らなかった事だ。運が良ければ新大陸で出会えるかも知れないであろう。
俺はカップラーメン等を召喚して、簡易的な食事を作ったりする。三食同じような物が続くと人間は飽きてしまったりするものだ。アズロットが頬を膨らませながら肉が食べたいと小さく呟く。残念だが、肉は召喚できんのだ。
船旅二日目が過ぎると異変が起き始める。
「ま、魔物が出たぞ!」
どうやら甲板に魔物が現れたらしいが、俺達は請け負っている仕事ではなく、しかも支払っているのでお客さん側の立場なのだ。だが、どんな魔物が出てくるかは気になる所ではある。
アズロットが確認のために外で魔物の姿をチェックしてきたらしい。アズロット曰く、口が尖って変な武器を持っていると言っていた。こいつにそういった物を確認するのは諦めたほうが良いということを改めて認識する。
仕方なく自分の目で確認すると、魚人らしき生物だというのが分かる。手に持っているのは碇に似た武器で、鈍器のように使用するのだろうか。そんな事を思いながら、始末された魔物を確認していた。
「よう、兄ちゃん……冒険者に興味があるのか?」
「まぁね」
既に冒険者だが、そういう事にしておくか……この人から見たら俺なんて若造だし。
暫くして俺は不穏な気配を感じる。これはドラゴンのときに感じた気配に近い。慌てて三人のもとへ行くと、カベルネが嬉しそうな表情で迎えてくれた。だが、そういった場合では無い。
「状況によりけりだが、リタとカベルネにはこの武器を渡しておく。アズロットにはこれを……」
「これって……漫画で読んだ武器じゃないですか……」
「使えることは証明済み。後、これも持ってろ……この二つは絶対に無くすなよ」
「ど、どうしたんですか……」
「嫌な気配がする。この船のどっかからしているんだ。……これは救命胴衣っていって、体を浮かせるための道具だ。もしもの時はこの紐を引っ張れ」
「な、何を……」
リタが喋ろうとした瞬間、どこからか大きな音がして船が大きく揺れる。
「最後に……これを三人とも受け取ってくれるか……俺は人に物を上げるのが苦手でね……何を渡して良いのか分かんないんだが……これは無くさないで、いつか再会したときに……」
そう言ってプラチナでできた指輪を三人の左の薬指に付ける。カベルネとリタは、本を読んでいたのでそれの意味を理解する。
再び船は激しい音と共に傾き始める。この船は沈むのだろう。
「カベルネ! リタ! アズロット……必ず生きて再会をしよう……俺はお前達を愛してるよ」
「わ、私達だって!」
外から叫び声が聞こえる。クラーケンが現れたと騒ぎ立てている。そして船の傾きは酷くなる一方だった。
「必ず……再会しよう!」
そして俺達は海に投げ出されるのだった。




