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召喚チート能力者の異世界ライフ  作者: マルチなロビー
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79話 甘い現実から厳しい現実へ

 俺は今まで生きていて、最悪で最低な気分を味わう事となった。


 カベルネの誕生日が過ぎて数日ほど経ち、俺達は飛空艇を目指し旅を続けていた。その中で小さな村を発見し休息を取るために立ち寄ると、男ばかりの村へと辿り着く。それは珍しく、何故だろうと考えるほど、男というか、年寄りしかいない村だった。


 「な、なんかこの村……変じゃないか?」


 「何がですか?」


 カベルネは気が付いていないようだった。どう見ても子供と年寄りしかない変な村だ。俺は町の人に声をかけて事情を聴くことにしたのだが、何を聞いても答えてくれない。何かに怯えている様な感じである。


 カベルネが村の宿屋に一泊しようと提案すると、それを聞いていた村人は言う。


 「この村に女が泊まるのは止めといた方が良い……」


 「え?」


 「君達はおかしいと思わないのか?」


 「そ、そりゃ……年寄りや子供しかいない……変な村だって言うのは思っていますが……」


 「そこまで気が付いているなら、尚更だ……」


 「あ、あの……どういう事なんですか?」


 村人はそれ以上言うのを止め、俺達を泊めようとはしなかった。どうしてもこの村は俺達を招かざる客として扱っているようにしか感じられない。リタもそれに気が付いているのだが、何も答える事はしなかった。


 「おかしい……町の外で一泊しましょう……どうしてもこの村は変です」


 「そ、そうですね! 私達は冒険者ですからね!」


 カベルネは冒険者を正義のヒーローか何かと勘違いしているフシがある。何かをすると、冒険者はちやほやされることがある。多分その事で勘違いしてしまうのだろう。俺は依頼を受けたりすることが少ない。というか、殆ど依頼は受けない。何故なら、大抵は面倒だというのと、稼ぎが少ないからだ。それに依頼にはいろいろな種類があるからだ。


 しかも、俺の能力には、魔物感知があるから、そいつらを感知してやっつけた方が早く、高く稼ぐ事ができ、無駄に人と関わる必要がないのである。普通の人が稼ぐ倍を簡単に稼いでしまうから、カベルネの勘違いが発生してしまうのだ。だが、普通は依頼をこなした方が早く稼げたりするケースもある。しかし、俺は人付き合いは面倒だから……。


 まぁ、そう言う事でカベルネは勘違いしてしまったのだろう。しかも俺の能力は異常過ぎる。自分を救って貰ったりしているからそうやって正義のヒーローと勘違いしている可能性もあったりする。


 カベルネが調査をしたいと言って、リタも賛同するから俺達は町の外に出て、夜になるのを待つ。すると、若い男連中が村へ帰って来るのだが、何やら異常に疲れているように感じる。しかも女はいない。それがまたおかしさを倍増させるのだった。


 家の隙間を覗き、家の中を確認する。すると、子供は母親の名前を呼び泣いているではないか。これはいったい何だというのか……おかし過ぎる。


 翌日になり、俺達は村の中を調査する。だが、有力な情報を得ることは出来ず、村の人の口は堅かった。一体なにを隠しているのだろう。


 「タイチ様、ここまで隠していると言う事は……何か悪い事をしているのかも知れませんよ」


 リタの言いたいことは分かるが、それでも何かがおかしい。


 「リタ、本当にそう思うか? 俺には口封じされているように感じるんだが……できれば関わりたくない」


 「口……封じですか?」


 「嫌な感じがしますね……。明日は朝早くから行動を起こす事にしましょう」


 カベルネの言葉にリタは頷き、俺の言葉はスルーされる。慣れているからいいけれどね。しかし、アズロットは理解しているようには見えないが、村の異常さだけは理解しているようで、頷いていた。


 翌朝になり、村の若い衆が何処かへと向かっていく。俺達はそれを追いかけていくと、鉱山へと辿り着く。


 「こ、鉱……山? 鉱山は城で管理しているか、ギルドで管理をしているものですよ? それなのになんで村が……」


 俺達は物陰に隠れながらそれを眺めていると、リタが小さく疑問を呟いていた。


 「原因はあれだな……」


 俺の指差す先……そこには、どこかの残党兵らしき者たちが、村の男達に鞭を振るいながら作業をさせている。それを見たリタは固まる。


 「リタ?」


 「あれは……あ、アッサラート……兵です……。あれは、アッサラートの兵たちです!」


 なるほどね……残党兵たちが、自分らの金を稼ぐ代わりに村を襲い、女達を人質に取ったのだろう。しかし、ここにアッサラート兵がいるというのが気になる所ではある。カベルネも首を傾げ、疑問に思っている様子であった。だが、カベルネは直ぐに何かを思い出した顔をする。


★★★★★★


 そういう事か! でなければ私達が盗賊相手に、あんな簡単にやられることは無いはず。ここで疑問が全て一つに繋がった。この先は危険だ……。私達を襲った連中は、アッサラートの兵士達だ。それもランクが高い……。


★★★★★★


 「取り敢えず……人質になっている人達を確認しに行こう……」


 「そうですね……先ずはそっちが気掛かりです……。手遅れになっている可能性が有りますが……」


 カベルネの声色が変わり、怒りに満ちている。彼女は正義感が高く、真面目だと感じる言葉である……だが、このとき俺は失敗したと言うことに気が付かなかった。相手は残党兵。完全なる指揮系統がないと言うことは、盗賊や山賊、海賊と言った部類に属するものに変わっていると言う事に。そして、やっている事は最低なことだという最低極まりない事だということ。当然、男をこうやって酷使しているという事は、女に対しては……。


 日本のエロゲーではありがちな話。だが、あれはファンタジーや小説の世界だと言う事だということ勘違いした想像。それは現実世界として起きている事なのだと、ここは異世界なのだと改めて数分後に気が付かされ、俺の心とリタの心は大きく酷く傷つけられるのであった。


 「多分、女性達は何処かに囚われているはずですね。それを開放しましょう!」


 リタが強い口調で言うが、カベルネの表情は険しくそんな簡単なものではないと物語っている様に感じる。


 「タイチさん……銃を貸してください。リタさんにも渡すようにお願いします。私達はこれから現実と言う物を目にする筈です……。それは私達がされていたかも知れない現実です……」


 「か、カベルネ様?」


 「お願いします。銃を貸してください……」


 言われるがまま二人に銃を渡すのだが、俺にはその意味が理解できない。何処かの建物内に捕まっているだけであるなら。油断さえしなければ俺達の実力で勝てる事ができるのではないだろうか……などと考えながら捕まっている場所を探し当てる。こういう時は感知能力が役に立つという事だろう。


 小屋を発見すると、警備している兵士は一人しかおらず、俺達はあっという間に叩きのめす。だが、カベルネは異なっており、銃を握りしめて中をチラッと覗き、険しかった表情が更に酷くなる。


 「クッ……やっぱり……。最低だ……」


 カベルネの言葉とは思えない言葉であり、俺は少しだけ驚く。だが、隙間から覗き……その言葉の意味を理解した。


 「な、なんと言うことを……あ、相手はまだ小さい子だっているんだぞ……!」


 ここが異世界である事を改めて理解する瞬間だった。固まる俺を押しのけるようにリタが覗き込む。


 「な、何を言っているんで……う、嘘……あ、アッサラートの……誇り高き、我がアッサラートの兵が……」


 中を覗き込むリタ。そこで思考が止まり、驚愕に震える。この小屋の中で行われていた事……それは、村の女性を人質という名目により捉え、それを良いことに乱暴を働いているのだった。男共は代わる代わる村娘達の体で快楽を楽しみ、女性達は悔しさを我慢するかの如く、涙を流しながら声を殺していた。


 村の男達はこの事を多分知ることは無い。いつか、自分達の手元に彼女等が戻ってくる事を信じて残党兵の言う事を聞いて鉱山で危険な思いをしながら働いているのだろう。そして、女達はその男達が助けに来る事を信じ、敢えて屈辱に耐えながら残党兵の欲望のはけ口にされているのを我慢しているのでは無いだろうか……。


 カベルネは扉を思いっきり開け、兵士の残党に向かって銃弾を撃ち込んでいく。


 「私達に乱暴しようとした賊は……たぶん、アッサラート王国の残党兵です……」


 銃弾を浴びせながらカベルネが言う。そんなことあり得ないと言う表情をして茫然と立ち尽くし、リタはカベルネの話を聞いていた。


 「生き延びた兵もいたんです。姫と一緒に……だけど、自分達は元はアッサラートの兵士……冒険者に登録するにもそれがバレてしまう。だったら……徒党組んで村を支配してしまったほうが早いと考えたのでしょう。自分達はそれなりに力があり、技術もある。傭兵稼業よりこちらの方が儲かるし女は好きに出来る……」


 新しいマガジンに交換して再び襲い掛かってくる元兵士達を、カベルネは躊躇せずに一人残らず始末していく。


 「タイチさん、彼女達に何か掛けるものや飲み物を……薄汚い思いをさせられたんです……優しさを……せめてこの一時でも優しさと暖かさを……」


 言われるがまま、俺は物を召喚し、飲み物を渡していく。ウラアの魔法を全員に唱え、彼女達を綺麗にしていくのだが、彼女達の心までは綺麗にすることは出来なかった。自分の無力さを改めて痛感する。


 「次々に行動を起こしましょう。他にも捉えられている女性がいるはずです」


 普段の笑顔は無く、険しい顔をする。カベルネの予想通り、残党兵は女性を慰み者にしており、女性は愛する男の名前を虚ろながら言っている者もいた。この悲惨な状況を信じる事ができないリタ。ただ茫然と立ち尽くし、アズロットはその無防備なリタを守るように付き添っていたのだった。

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