7話 最悪、こういう方法で仲良くなるしかないよね
俺はイジケながらギルドハウスのカウンターでジュースを飲んでいると、ダレルさんが声をかけてくれた。
「何だよ、タイチ……辛気臭い面して……」
「いや、だって……俺って一人でやっているじゃないですか……」
「あぁ、そうだな。だが、別に珍しい事じゃないだろ? 一人でやっている冒険者はゴロゴロいる」
「そうかも知れませんけど……やっぱ、一人は寂しいッスよ」
初心者講習の件から、ダレルさんとはかなり仲良くなり、何でも話す間柄となっていた。この、モヒカン親父が誰か、良い人を紹介してくれたらどんなに助かるのか……。
「そうだなぁ……それだったら……奴隷を買うって方法も無くは……ないが……」
腕を組みながらダレルさんは答えるが……。いま、奴隷って言わなかった?
「ど、奴隷?」
俺は身体を起き上がらせ、驚いた顔をしてダレルさんの方を見る。
「あぁ、そうさ。奴隷だったらお前の言う事を、何でも聞いてくれるだろうよ」
「ど、奴隷なんているのか……」
奴隷というと、人身売買された人のことだよな……。そんな奴らがいるのかよ……。
「気になるか? 気になるなら場所を教えてやるよ。一度、奴隷を観に行ってみると良い。まぁ……買える、買えないは別の話だがな。ガーッハッハッハッハッハ……」
そう言ってダレルさんは奴隷商館の場所が書かれているメモを置いて、俺の前から立ち去り、俺はそのメモを手に取り、唾を飲み込むのだった。
ダレルさんの言葉が、頭の中で何度もリフレインするのだが、俺に奴隷を確認しにいく勇気は無く、奴隷商館へ行くことはできずに今日もゴブリン狩りをおこなう。そして、貴重な一日が終わる。
翌日、俺がギルドハウスに顔を出すと、ギルドハウス内が騒がしく感じる。何かあったのだろうか……。
「どうしたんですか?」
ギルドハウスの職員に話しかけると、近場にある山の調査隊を募っているということで、ギルドハウス内のホールが賑わっていたのだ。
「おう、タイチ! お前も参加してみろよ!!」
奥にいたはずのダレルさんが俺を見かけ、声をかける。どんなに良い目をしているのだ……このモヒカン親父は。
「お、俺ッスか?」
「だってお前、友達がいないって言っていただろ? こういう時に参加して、お前の力を示せば良いんだよ。お前のことが気に入ってくれる奴がいたら一緒に狩りへ行ってくれるかも知れないだろ?」
別に友達が欲しいと言っている訳では無いのだけれど……。
「な、なるほど……な、なら……俺も参加しようかな……」
編成された調査隊は、調査するのに必要な荷物を各自に渡すのだが、皆、重そうな物を沢山持っている。俺は、この袋に仕舞えば良いだけなので、ほぼ身軽の状態で出発する事ができた。
調査隊には講習で一緒だったキンバレーとロットーも参加しており、二人は俺に話しかけてくる。
「よう、タイチ! お前も調査隊に参加していたのか」
「あ、あぁ……」
「同じ講習を受けたもの仲間同士、仲良く頑張ろうな!」
講習を受けた者同士……。素敵な言葉に聞こえ、俺は少し嬉しくなる。そして、二人はフランクに話しかけてきてくれて、俺は直ぐに二人と打ち解け合うようになった。二人は講習の時に知り合ったようで、それで意気投合したようだった。講習が終わり、二人で狩りを行い、ゴブリンを退治できた事により自信を深め、この調査隊に参加する事にしたらしい。
「俺、絶対に冒険者で成り上がるんだ!」
ロットーが力強く言うと、キンバレーも頷く。二人共、冒険者というものに並々ならぬ思いがあるようで、楽しそうに話していた。
「タイチも冒険者で頑張るんだろ?」
ロットーが俺に確認してくる。
「あぁ、この世界で頑張っていくつもりだよ」
もう地球に戻ることもできないしね。ここで頑張って生活をするしか方法は無い。
「だよな。それに、冒険者はモテると言うしな!」
なに! そりゃマジか! キンバレーの言葉に俺の身体が反応してしまう。
「俺、ガルボを貯めて奴隷を買うんだ!」
ロットーが言う。再び出てきた奴隷と言うワード。そんな簡単に奴隷が買えることが可能なのだろうか。
「な、なぁ、奴隷ってそんな簡単に買えるものなのか?」
俺は気になり、二人に問いかけてみる。奴隷について二人は俺よりも詳しく何かを知っているようだったから……。
「俺が住んでた村の、近所にいた冒険者のオッサンなんだが……万年、女性に声をかけてたりして彼女を探していたんだが、それでも彼女ができなくて……暫く村から姿を消して、フラ~ッと帰ってきたら、急に若い子を連れて村に戻って来ていたんだよ! 話を聞いたら貯めていたガルボで奴隷を買ったらしい」
ロットーが真剣な表情で説明してくれる。
「ま、マジかよ……」
女や人が欲しければ奴隷を買えって話は本当らしい……。俺も奴隷を購入しようかな……。
「だが、奴隷は高いって聞いたぞ。最低でも5万ガルボはするってさ」
キンバレーが水を差すように言う。
5万は高いな……まぁ、先ずは自分の生活を安定させることが大事になるだろう。そうしている内に、ガルボも貯まり……。などと考えながら山で調査を行っていると、他の冒険者がゴブリンとコボルトの群れを発見する。
「コボルトの群れか……かなりの数がいるぞ……」
「あぁ、十や二十じゃ……きかないぞ……一体、何匹いるんだ」
ベテラン冒険者らしき人達が話あっている。俺はその様子を見守っている。ベテラン冒険者なので口を出すと後々面倒くさそうだからだ。俺が持っているマシンガンなどを使えば、こんな奴ら直ぐに倒すことができるというのに……。
この状況をどうするかと、ベテラン冒険者達は話し合っているのだが、キンバレーとロットーはいつでも戦いに行けると言う顔をしていた。
ベテラン冒険者らしき人達は話し合いの結果、ギルドハウスに報告するということで終わらせる事にしようという答えになった。理由を聞いたら俺達新人冒険者の事を考えてとのこと。安全第一、無事に戻るのが冒険者の務めということらしい。
だが、ベテラン冒険者は教えてくれる。山などには、あの様に群れをなしているコボルトの他に、ゴブリンやオークなどもいるとの話を……。だが、あのように群れをなしている場合には、必ず上位種の魔物がいるらしい。その場合、ベテラン冒険者でも勝てない事があるとの話であった。そのため、若手が多い今回は、ギルドハウスへ報告のみで終わらせるという結果になったという訳だ。
山を下りた俺達は町に戻りギルドハウスで報告をすると、一人頭100ガルボを貰う。今回の依頼はギルドハウスから出した依頼だからだという理由らしい。翌日には、昨日のコボルトの群れを駆除する依頼が掲示されていたのは言うまでもなかった。
2017/04/15 修正および文章追加しました。