78話 初めて味わう甘いもの
数日が過ぎ、沢山の魔物と戦うことができた俺達。ここ最近増えている魔物は馬のような体をしてカバのような顔をした魔物が多い。
すれ違う冒険者たちに話を聞くと、食料になるらしくその体のロースやカルビはかなりイケる味がするそうで、ギルドでは結構高値で買い取ってくれるらしい。
次の町に到着し宿屋に泊まると、カベルネが嬉しそうに報告をしてきた。
「なんと! 本日は私の誕生日です! これで私も16歳となります!」
「おぉ! マジか! それじゃあお祝いをしてやらないといけないな!」
「お、お祝いですか!」
嬉しそうにカベルネが声を上げる。
「お祝いというと……服か宝石になりますね……」
さすがお姫様。我々と感覚が違う。金持ちならではの答えである。
「いやいや、ケーキなどを作ってパーティーをするんだよ」
「「「ケーキ??」」」
まるで初めて聞いたかのように答える三人。まぁ、アズロットは初めてかもしれないが、まさかカベルネとリタは食べた事くらいあるだろう。
「なんですか? そのケーキという物は……」
二人はキョトンとした顔して俺の顔を見る。嘘でしょ? 誕生日と言ったらケーキを食べるでしょ!
「じょ、冗談で言ってるよね?」
リタはカベルネを見るが、カベルネは首を横に振る。嘘だと言ってよカベルネ!
「それはどんな形をしているんです?」
真顔で答えるリタ。真剣な目で見つめるカベルネ。二人は本当にケーキを知らないようであった。確かにこの世界に来てパンを食べた事はない。だが、そう言った習慣だと俺は思っていたのだが、そういうことでは無かった。そう言えば、以前……カベルネがお米を見て怪訝な顔をしたのを思い出す。
「質問をするが、お菓子という物は知っているか?」
「お、お菓子……ですか? 遠くの国で、そう言った食べ物があるような話を聞いたことがありますが……それでございますか?」
「と、遠くの町で……。お菓子はポピュラーなものでは無いのか?」
そう言えば、ここに来て、お菓子を見たことが無い。あるのは果物ばかりである。
「じゃあ、俺がケーキを作ってやるよ。甘くて美味しいぞ!」
「美味しいのか!」
美味しいという言葉にアズロットが反応し、俺達はようやく笑うことができたのだった……。
先ずはスポンジから作り始める。材料は全て召喚して居るので問題はない。ミキサーも電動だから疲れることは無く、三人は横から俺が作るところを見ている。
竈を召喚して中を魔法で熱くして大体170°程にする。先ほど作ったスポンジを入れて焼き始める。三人はスポンジが焼けて行くところを見て驚きの声を上げる。
「おぉ!! ふ、膨れ上がってきてる!」
スポンジが出来上がったら早めに冷やすために簡易冷蔵庫に入れて、その間に生クリームにチョコを少し混ぜ、ミキサーで掻き混ぜていく。先ほど冷やしたスポンジを取り出して今度はチョコクリームを冷蔵庫に入れる、スポンジをカットして新しいクリームを作り、苺を召喚してスポンジの間に入れていく。三人はその工程を見て驚きの声を上げていた。
先ほど冷やしていたチョコクリームでデコレーションして苺を乗っけ、板チョコにカベルネの名前と歳を書いて乗っけて完成させる。これは全て召喚能力がなせる必殺技である。
最後に数字型の蝋燭を召喚してケーキに刺し、火を付け、俺は歌を歌い始める。
リタとアズロットは俺に合わせるように手拍子をして盛り上げてくれた。
「さぁカベルネ……火を消すんだ」
「ひ、火を消すんですか?」
「15歳にサヨナラをする儀式みたいなものだと思ってくれればいいよ。一発で消すと尚更カッコイイ」
「わ、分かりました! ふぅぅぅ~……!」
蝋燭の火を消して俺は拍手をすると、アズロットとリタも一緒に拍手をする。
仕上げにクラッカーを鳴らしたら三人は驚いた顔をしたのだが、とても面白かったらしく嬉しい顔をしていた。
ナイフでケーキをカットして、俺は三人に配り、一緒に食べ始める。初めて作ったにしては上出来だと思いながら口にしていると、リタが声を上げて驚いていた。
「こ、こんなに甘いものは初めて食べました!! 美味しいです!!」
「ほ、本当です! これは凄い食べ物ですよ! これは売れちゃいますよ! タイチさん!」
「甘いぞタイチ!! 甘々で美味しいのだ」
三人はそれぞれの感想を言いながら食べる。本当に美味しかったらしく、物凄く幸せそうな顔をしていたのだった。
「カベルネ、いつもはどんな誕生日を迎えてるんだ?」
「うーん……正直言うと、何もしてもらってませんね。ただ歳を重ねるだけと言うのが……私達のような一般人の生活です。ですが、15歳になり、大人の仲間入りをするのですが、その時はお祝いをして頂くんです。ですが……私は冒険者を選んでいたため親とあまり……リタさんはやはり、服や宝石ですか?」
「そんなところだったかな……」
カベルネの話を聞いて、言いにくそうにしているリタ。仕方がない話だと思いながら二人の会話を聞いていたのだった。
「タイチさんのところは……今のようなものを食べたりしていたんですか?」
「他にも色々とね……カラオケで騒いだり皆からプレゼントを貰ったりしてたよ」
「ぷ、プレゼント……ですか……」
★★★★★★
タイチさんは私に何かくれるのかな? 宝石? それとも服? いやいや、そういった期待はしてはダメだ……私達は冒険者……贅沢をする事はいけないものだと……ダレルさんは言っていた。
★★★★★★
プレゼントか……それなりの物を考えておかないといけないよな……。多少は奮発するくらいの事はしないと。
そんなことを思いながら夜は更けていくのだった。




