73話 マッドサイエンスト
再び俺を除いて会議が行われる。二人共俺の話を盗み聞きしていたはずだから今度はしっかりと三人で話ができるはずだ。カベルネは悪い子ではない。だけど、この世界のルールで生きている人間。だから、言っていることは正しいのだと思う……だからこそ、もうちょっとだけ柔軟な考え方が欲しい。
彼女にはそれが出来ると信じている……俺はそう信じているから。
暫くすると、扉がノックされる。先ほどみたいに怖いノックではなく優しいノックだ。
俺は扉を開けると、カベルネの優しい笑みが、俺を迎えてくれる。どうやら話し合いは終わったようだ。
「お迎えに上がりました……。お話をしても大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「話し合いの結果、私達三人でタイチさんを愛することになりました。三人でタイチさんを愛していくということです。ですから、これ以上の女性と一緒になるのは止めて下さいね」
ニコリと笑うカベルネだが、何だかちょっと怖い。俺は小さく頷くことしか出来ず、その笑顔の恐怖に負けたのだ。
「でも、一番は私です。私が正室……あとの二人が側室それは二人共納得してくれました」
そこは譲らないんだね。そして、結婚は前提になっているのだ……。まぁ、こんな美少女を逃す手は無いと思うけれどね。
それから俺達は食事をして、今日は四人でダラダラすることにし、ゆっくりとする事にしたのだった。
しかし、チキンな俺は、三人に手を出すことは出来ずに悶々とする一日であった事は言うまでもない。
翌日、俺達は次の町へと向かう。そこに狼タイプの魔物が俺たちの前に立ちはだかるのだった。
俺達は武器を構え、襲い掛かってくる魔物に対して攻撃を仕掛けた。カベルネは火魔法を唱え魔物を焼き払い、リタは新しく購入した剣で素早く魔物の足を攻撃し、動きを止める。アズロットは怯え、俺の後ろに隠れる……って、おい! 戦えよ……。
「アズロット! リタが攻撃した魔物に止めを刺すんだ!」
「わ、分かったのだ!」
怯えながらも前に出て、藻掻いている魔物の首に剣を突き刺す。魔物は体をビクンッ! とはねらせ息絶え、アズロットは初めて魔物を退治することに成功するのだった。
初めて魔物を倒したことにより、アズロットのレベルが上がる。本人は分からないかもしれないが、それなりに強くなっており、流石は魔族とのハーフだと思わせるほどのステータスであった。
暫く同じように戦いをしていくうちに、アズロットは一人でも魔物が倒せるほどの動きを見せ始める。
「ど、どうだ! タイチ! 私は頑張っているだろ!」
「あぁ、頑張ってる。だけど、あんまり無理して一人で戦おうとはしないようにな」
「な、なんでだ? 私一人でもやれるぞ!」
「いつか一人でやれなくなったらどうするんだ? そういう時こそ、仲間を頼らなきゃいけないだろ……今のうちに仲間の癖を覚えて、戦いを有効にしていくんだ」
「う〜……わ、分かったのだ……」
俺に注意されてから、アズロットはカベルネやリタの動きなどを見ながら戦いをするようになる。そして、俺達は洞窟を発見するのだった。
「洞窟かぁ……」
「多分……いるんですよね……」
「何がいると言うんです?」
まだ洞窟を体験したことの無いアズロットとリタ。俺とカベルネが面倒臭そうにしている意味を理解してはいなかった。
「この中に魔族がいる可能性が有るんだよ」
魔族と聞いて、アズロットは少し機嫌を悪くしたような顔をする。
「アズロット、魔物を倒したということは、お前が俺のもとで生きていくという意思が有ると……思っているが、魔族に対してはどうなんだ?」
「わ、私は処分品と言われたのだ……。た、タイチは私の事をそう思っているのか……」
俺は首を左右に振り否定する。
「アズロットは大事な仲間だと思ってるよ。一緒にダラダラした生活をしよう」
そう言うと、アズロットは嬉しそうに微笑むのだった。そして俺達は洞窟の中へと進んでいく。出て来る魔物は猪豚ファイターやルンドラビット等、食料になりそうな魔物ばかりやって来る。晩飯は肉料理で決まりだと思いながら俺達は剣や魔法で倒していくのだが、思いの外ここの魔物は、通常の猪豚ファイターやルンドラビットとは異なっているようで、パワーに差があるのだった。
「もしかしてコイツ等……」
カベルネが魔法を唱え、猪豚ファイターを丸焦げにしたのだが、生命力が高く、未だに戦いを仕掛けてくる。
「た、タイチさん! 何か召喚の武器で!」
カベルネが助けを求めるように声をあげる。しかし、俺は武器を召喚せずに心臓目掛けて剣を突き刺し、猪豚ファイターを倒すのだった。
「た、タイチさん……ど、どうして……武器を?」
「なんかおかしい。ここの敵は徐々に強くなってる。まるで、調整されているかのように……」
「どういう……事ですか?」
「今までなら、カベルネの魔法で殺られているのに、さっきから全く死ぬ気配がない。これは強くなってるとしか言いようがないって事だ」
「でも、出てきてる奴は同じ猪豚ファイターやルンドラビット等ですよ……」
「そう、だから可笑しいんだよ。調整させられているんじゃないか? もしかして……」
「ち、調整……ですか……そう言えば……我が国の兵士も同じ事を言っていたような……」
俺の言葉にリタが思い出したかのように言う。
「どういう事だ? リタ……」
「い、いえ……眉唾な話だったので……そんなに気にしなかったのですが、兵士達がそんな話をしているのを聞いたことがありまして……」
もしかして魔族が手を貸している? まさかな……。だが、飛空艇をどのルートから手に入れたのか……それすらも分からない。だって、飛空艇についてリタは何も知らなかったのだから。
魔族が何らかの形で力を貸していたとしたらどうだ……飛空艇から石を落としただけでアッサラート王国が降伏するというのか? いや、今はそれを考えている余裕はない。先ずはこの洞窟をどうやって攻略するかが全てだ。俺にはカベルネやリタ、アズロットを守らないといけないという使命がある。こいつ等は俺に命を預けてくれているのだ……それを裏切るわけにはいかない。
そう思いながら先へと進んでいくと、再び猪豚ファイターが現れる。まず先手としてリタが斬りかかりに行くのだが、それが弾かれ、尻餅をつく。
「いった~い……何よこいつ……剣では全くダメージが……」
やはりそうだ。攻撃が効かなくなってきている。と、言う事は……この相手に物理攻撃が効かないと言う事になるのだ。
「てりゃー!!」
アズロットも果敢に攻撃を仕掛け、リタも立ち上がり攻撃を繰り返す。
「二人とも離れて下さい! 【ファイアー】!!」
カベルネが魔法を唱え、猪豚を丸焦げにした……ハズだが、猪豚は殆どダメージを受けている様子はなかった。
「ど、どういう事なんですか……これは!!」
「マッドサイエンストが居やがるのか!!」
俺はステータスを開き、カベルネの魔法を追加させる。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:38
力:58
器用:61
体力:71
魔力:61
スキルポイント:91
【装備】
・バトルソード(剣)
・鋼の鎧(鎧)
・鎖帷子(鎧)
・鋼の盾(盾)
・旅人の服(服)※カシミヤ製
・スニーカー(靴)
【マジックアイテム】
・魔法の袋(神器)※神が与えた魔法の袋。無限に物を詰め込む事が出来る。
【スキル】
・アイテムクリエイト(生物以外を生み出す事の出来る世界で一つのスキル)
・異世界言語
・異世界文字
・射撃:4
・気配察知:4
・剣技:4
・魔法感知
・回復魔法:レティオ(小)
・浄化魔法:ウラア
・飲料魔法:ウォータ
・灯り魔法:ライト
・着火魔法:テンカ
・格闘:2
★――――――★
名前:カベルネ
レベル:32
力:40
器用:48
体力:48
魔力:80+50
信頼度:99
スキルポイント:174
【装備】
・ミスリルロッド(杖)
・ミスリル魔道ローブ(魔法攻撃を含め色々と軽減してくれる優れたローブ)
・銀の髪飾り(兜)
・旅人の服(服)※カシミヤ製
・スニーカー(靴)
【マジックアイテム】
・祈りのネックレス(眠り魔法等に対する効果が軽減される)
・魔法の袋(太一が持っている袋の劣化版。家二軒分くらいの量が入る)
【スキル】
・異世界言語
・異世界文字
・火魔法:ファイア(小)レタファイア(中)
・爆魔法:バーン(小)
・水魔法:ウォーター(小)
・回復魔法:レティオ(小)レベレティオ(中)
・魔法感知
・射撃:2
・料理:3
★――――――★
名前:リタ
レベル:18
力:25
器用:20
体力:35
魔力:35
信頼度:80
スキルポイント:80
【装備】
・プラチナソード(剣)
・ミスリル魔道ローブ(魔法攻撃を含め色々と軽減してくれる優れたローブ)
・銀の髪飾り(兜)
・旅人の服(服)※カシミヤ
・スニーカー(靴)
【スキル】
・剣技:1
・異世界言語
・異世界文字
★――――――★
名前:アズロット
レベル:12
力:34
器用:45
体力:50
魔力:80
信頼度:90
スキルポイント:170
【装備】
・アイアンソード(剣)
・ミスリル魔道ローブ(魔法攻撃を含め色々と軽減してくれる優れたローブ)
・銀の髪飾り(兜)
・旅人の服(服)※カシミヤ製
・スニーカー(靴)
【スキル】
★――――――★
アズロットはまだスキルを覚えていないが、元々の潜在能力が高すぎる。はじめは本当に弱かったが、レベルが上がる毎にその強さは異常なほどになっている。
「カベルネ!」
「は、はい! 【バーン】!!」
爆発系の魔法を唱えたカベルネ。今まで無かった攻撃により、猪豚ファイターのお腹に抉れた様な傷が出来る。それを見逃さなかったアズロットが剣を突き刺し、俺達は何とか勝利を手に入れるのだった。




