69話 言葉って難しいのだ
「アズロット、魔物たちと戦う事になるけど……大丈夫か?」
「構わない……。私は捨てられた身。もう、魔族とはかかわりのない身となったのだ。そして私はお前の所有物……。あの豚野郎みたいに……わ、私の体を……弄ぶ……ことも……す、好きにするが良い……」
最後の方は泣きそうな声だった。
「そんな事はしないよ。大丈夫……君は君がしたいように生きればいいと思うよ……」
「アズロット……」
「え?」
「お前が私に付けた名だ! そう呼べ!」
「分かったよ、アズロット……俺はアズロットが生きたいように生きる手助けをしてあげる。休憩を取るときとか、剣の練習などやってみようか……」
「け、剣の練習か! わ、分かった! 私はお前の役に立てるように頑張るぞ!」
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アズロット……この子は私の敵であることが判明した。この子はタイチさんが好きなのだ……。渡すものか!!
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ここ最近、タイチ様とカベルネ様の仲が良い。それについては少し嫌だったが、ここにきてアズロットと言う子が入ってきた。この子はタイチ様を好いている……言うなればカベルネ様以上に危険な存在だ!
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タイチは良い奴だ。私に対してここまで優しくしてくれた奴はいないし、頭をナデナデしてくれる。それは暖かく優しさを感じる。こんな事、今まで無かったことだ。それに私には魔族の血が流れている……それを気にして魔物についても考えてくれるとは……。新しい主人は最高に優しいやつだ。こいつに一生ついて行こう!
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何やら女性達の目が怖い。カベルネやリタも何か考えているようだし……。何事もなく、平穏な暮らしがしたいものだ……。
それから暫くして、俺達は昼休憩を取ることにするのだが、アズロットがバテており、剣の練習とかそういった事ができる状態では無い。ある意味、駄犬以上に使えない存在だということが分かったのだった。
仕方なくカベルネと俺は食事の準備を始める。アズロットは大の字になって寝っ転がっており、リタはそれを介抱してあげていた。
「カベルネ、彼女の魔力は非常に高い。悪いが、魔法を教えてあげてくれるか?」
「き、キスしてくれたら……考えてあげても良いですよ……」
顔を赤くしながらカベルネが言う。俺は周りを確認してからカベルネの唇にキスをした。
「お願いね?」
「はい……♥タイチさん……♥」
幸せそうな表情をするカベルネ。まぁ俺も幸せなのだけれどね。暫くして食事が出来上がり、四人で食べ始めるのだが、アズロットの食べ方が雑というか、習っていないのだろうという食べ方だった。まるで犬や猫のような食べ方をするので、リタが優しく教えてあげる。アズロットは俺の顔をチラチラ見て、そうした方が良いのか? と、いった表情をする。彼女には人間社会で生きて行く方法というより、全てを教える必要があるという事を俺達は理解するのであった……。
その夜、カベルネは言われた通りに魔法の使い方を教える事にしてくれた。
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「アズロットさん、タイチさんはアズロットさんは魔法のセンスがあると仰っておりました。ですから、先ずは魔法を覚えてみましょう!」
「分かった。宜しく頼む」
「アズロット、教えてもらう時はそういう風に言っちゃ駄目だ。それでは素敵な女性に成れないぞ」
「そ、そうなのか? タイチはそう言う喋り方をする女は嫌なのか?」
「嫌だ」
「で、ではどんな喋り方をすればよいというのだ……」
「カベルネやリタみたいな優しい喋り方を覚えるんだ。そうすればアズロットも素敵な女性に成れる!」
「ほ、本当か! か、カベルネ! 魔法よりもまずは喋り方を教えてくれ!」
「教えて下さいだろ!」
「お、教えて下さい……」
アズロットはタイチさんの言う事なら素直に言う事を聞く。私の言う事も素直に聞いてくれるのだろうか……。まずは、です・ますを教えた方が良いかも知れない……。
「アズロットさんは文字を書くことが出来ますか?」
「出来ん」
「ならまずはそれから勉強いたいしましょう! リタさんも手伝って頂けますか?」
「任せて下さい! カベルネ様!」
この夜、私達三人は本を読む事から始める。タイチさんの召喚能力は本当に便利で、何でも召喚してくれる。この世界の本だって召喚してくれるのだ!
「アズロットさんはお幾つなんですか?」
「歳か? 15になるぞ」
「なら私の方が一つ年上ですね。私はもうちょっとで16になります」
「そ、そうなのか? カベルネ、もうちょっとで16になるのか……そうか、なったら教えてくれるか? 誕生日パーティーを開かなきゃいけないからな!」
誕生日……まさかタイチさんからそんな言葉を聞くとも思ってい無かった。それは嬉しい!
「アズロット、一応私の方が年上だから呼び捨てで呼ばせてもらうわね」
「あぁ、分かった! 宜しく頼む、カベルネ」
「違うだろ、アズロット。カベルネ『さん』だ。自分より年が上なんだから敬わなければいけない。特に俺達は仲間なんだから……。仲間以外なら、『さん』をつけなくても構わないけど」
「そ、そうなのか……む、難しいのだな……人間社会は……」
「これからゆっくり慣れていけば良いんです。時間はタップリありますからね。アズロット」
「おう!」
「『はい』ですよ。アズロット」
「あう……。は、はい……」
「よくできました……」
まるで私に妹が出来た気分だ。私は一人っ子だったから……妹がいたらこんな感じだったのかもしれない。そんな事を思いながら私達は会話を楽しんだのだった。




