6話 危険な場合は仕方ないよね
翌日、約束通り俺はギルドハウスへとやってくる。すると、リードとカベルネは既に到着していたようで、カベルネは俺に手を振ってくれる。
「ごめん、待たせちゃったか?」
「――いえ、私達も今来たところです」
「悪いな、今日は宜しく頼むよ……」
リードは俺に握手を求めてくる。どうやらリードは悪いやつでは無さそうなので、俺はホッとする。嫌な奴だったらどうしようかと、少し考えてしまった。
「じゃあ、行こうか……動物狩りで良いんだよね?」
俺は今日の内容を確認するように二人に質問をする。
「は、はい! 宜しくお願いします!」
カベルネは頭を下げ、俺達は移動を開始する。町の入り口にいる兵士にギルドパスを見せ、待ちの外へ出ると、広大な草原が広がっている。カベルネとリードは初めて町の外に出たようで「おぉ……」と声を出して感動していた。
「二人は初めて外に出たの?」
一抹の不安を抱き、二人に質問してみることにする。もし、初めてだったら少し考えながら行動をした方が良いかと考えた。
「俺達、ついこの間冒険者になったばかりなんだ」
「へぇ……そうなんだ……」
やはり初めてなのだと思い、どのように振る舞うのか考え始めながら二人の会話を聞いていた。
「それまでずっと町で暮らしていてね。やっと15歳になったから……」
「親の反対を振り切り、勘当同然で冒険者になりました」
カベルネは恥ずかしそうに答えているが、冒険者で生計を立てないといけないと言うことを理解していないような言葉に聞こえ、一瞬だけ不安がよぎる。
「二人共、15歳なのか?」
「あぁ、俺達は幼馴染みでね……」
「リードは直ぐに無茶をするから……」
カベルネは顔を赤くしながら言うということは……この娘はリードの事が好きなのだろう。……べ、別に悔しくないもん!
暫くして、俺は動物の気配察知を使用して、動物を探すとウサギを発見する。
「――おい、二人とも、ウサギがいたぞ……。それで……リードはどうやって戦うんだ?」
「俺はこれで戦うんだよ」
リードは自分の腰にかけている剣をポンポンと叩く。
「じゃあ、ウサギと戦えなくないか? ウサギは逃げて行くぞ……人間を見たら」
俺の言葉にリードは驚いた顔をする。コイツ、講習での話をしっかり聞いていなかったのか? ダレルさんが講習の始めに説明していたじゃ無いか……。本当に大丈夫か? コイツら……。
「そ、そうなのか!」
「ダレルさんが言うには、弱いと判断した人間には、ウサギとか他の動物は襲い掛かってくるらしい。――お前、初心者講習を受けたから……多分、逃げていくんじゃないか? ダレルさんもその様な事を言っていたぞ。 まぁ、アーチャーなら、ここから狙う事もできるだろうが、お前……弓矢を持ってないだろ?」
「ま、マジかよ……そ、そしたら……いきなりゴブリンと対峙するのか……」
普通に考えてそうなるだろうな。もう少し考えて行動しないのか? コイツは……。
「そうなるかもな……森の方に行ってみるか? 経験のために」
俺の言葉に二人は頷き、俺達は森の中へと入っていく。初めてゴブリンと対峙する二人は、少し怯えた様子で俺の後ろをついてきていた。
「あ、オオカミだ……」
魔物の気配がすると思って近寄っていくと、そこにはオオカミがおり、俺達には気がついてはいなかった。アレだったら逃げたりとかしないだろう。さて……どうするかな……。
「ば、バカ、ありゃバウンドウルフだ! ゴブリンよりも強いと聞いているぞ……掲示板に載っていたのを覚えてる。生で見るのは初めてだが……」
リードが教えてくれるが、俺にはただのオオカミにしか見えない。撃ち殺せばイチコロだと思いながら獲物を見つめるのだが、リードは脅えている。
「あ、アイツは止めとこうぜ……」
リードが後退りして引き返そうとする。だが、カベルネが枯れ木を踏んでしまい、音を立ててしまう。ある意味ドジっ子だね。すると、バウンドウルフはこちらに気が付き「グルルルゥ……」と、威嚇を始める。
「や、ヤバイ! に、逃げるぞ!」
リードは一目散に走り出し逃げ出そうとする。カベルネも慌てて逃げるのだが、途中で転んでしまい、バウンドウルフに追いつかれてしまう。それに気が付き、リードは引き返してカベルネの前に立ち、剣を抜いて構える。俺は二人が分からないように銃を召喚して状況を見守る事にする。
「か、カベルネ……た、立てるか……」
「う、うん……」
カベルネは立ち上がり、杖を構える。先手を取ったのはバウンドウルフで、鋭い牙で襲い掛かろうとする。リードは剣を振ってバウンドウルフに斬りかかるのだが、バウンドウルフはステップを踏んで攻撃を躱す。中々白熱した戦いだと思いながら俺は見つめる。
射殺すれば直ぐに終わるのだが……。
カベルネは杖を振り上げ、火魔法を唱える。杖の先から炎が飛び出しバウンドウルフに襲いかかるのだが、バウンドウルフは攻撃を躱し、カベルネから距離を取る。すると、バウンドウルフは俺達が厄介だと思ったのか、雄叫びを上げる。
「お、雄叫び?」
突然の事で俺達は戸惑いを見せるのだが、俺の気配察知にいくつもの反応が現れ、俺は周りを見渡す。すると、バウンドウルフが四匹も現れ、俺達を囲むように唸り声を上げて睨み付けてくる。
先程の雄叫びは仲間を呼ぶための物だったと言う事になる。状況的には不利なのだが、俺にとってはカモが増えただけ。だが、リード達にとってはピンチになっただけだ。
「こ、こりゃ……ヤバイな……」
リードが小さく呟き、カベルネを守るかのようにリードは立つ。バウンドウルフの様子を窺うが、奴らは何時でも襲い掛かってくる準備ができているようで、「グルルル……」と唸り声を上げながら俺達を睨む。
二人に任せていると本当にヤバイと思い、出し惜しみしている状態ではないので俺はサブマシンガンを召喚する。
そして、マシンガンを乱射してバウンドウルフを一掃すると、二人はその威力や光景に驚く。やってしまった事に後悔する俺だが、状況を考えたらこれは仕方がない。殺られる前に殺ッただけ……。しかし、言い訳を考え二人に言う。だって、あっという間に魔物を倒してしまったのだから。
「い、今のは……魔法だ! そう、魔法だよ!」
誤魔化すように俺は言うのだが、どう見てもその言葉には無理があり、二人は顔を引き攣らせていた。
「ま、魔法……そ、そうか……ま、魔法か……」
リードは無理に納得してくれようとしているが、カベルネは怪訝な顔して俺を見つめる。何か言いたい事があるのだろうか……。
いつまでもこんな場所にいる必要は無いので、バウンドウルフの死骸を回収し、俺達は町へ戻る事にする。その間、俺達の会話はなかったのは言うまでもない。
そして、ギルドハウスへ到着し、換金したガルボを三人で分け合い、俺達は別れることにするのだが……二人は俺を脅えるような目で見て、逃げるように俺の前から去っていく。
再び俺は一人となってしまうのであった。
2017/04/15 修正+文章追加