65話 予想していた答えとは違う
準男爵の屋敷を出た俺達。
「では、探しに行きましょうか……魔族の住み処を」
カベルネは俺の考えを理解してくれているので話が楽である。
「だな……」
「早く私達のお家を手に入れたいですね」
カベルネは俺の腕に掴まりながら言う。もう少しだけ胸が有ったら……と、思う今日この頃……。
「浮気は許しませんからね!」
既に俺の嫁気分であるが、それはそれで構わない。俺には出来過ぎた彼女なのだから……。リードはこんな良い子を……勿体ない事をしたバカである。だが、幼馴染みだからこそ、分からないこともあるのかも知れない。俺には幼馴染みなどいないから分からないけれどね。
「あ、リタさ~ん!」
「か、カベルネ様! どうでしたか? お話は……」
元姫のリタなのだが、今の状態を見る限りでは……ただの冒険者にしか見えないのである。
「もちろん破談です」
「え?」
「タイチさんが人に命令されて動くようならば、世界を救いに行くはずです。ですが、タイチさんは平穏な生活を求めているんです。平穏とは、穏やかにのんびりとした生活です!」
カベルネは当たり前の事を当たり前に言っただけであるが、その言い方は堂々としており、なんだろう……自信に満ち溢れているって言った方が良いのではないだろうか。俺と交際できたというだけで、ここまで彼女を変えてしまう事になったというのだろうか……。
「い、いや……その意味は理解できてますけど……一応、準男爵だけど……爵位を持っているんですよ? ……あ、後でどんなことをされるか……」
「そんな力がありゃ、この町はこんなに被害がないでしょ? アイツに力がないからこうなった訳だし……元々世襲で準男爵になったんだろ? どうせ……前の人は良かったのかもしれないけど、あいつはダメだ。人望がない」
「じゃ、じゃあ……こ、この町はどうするんですか……」
流石元お姫様。民衆の事を第一に考えているようである。こういう人が上に立つべきなのだろ、俺は改めてそう思う。
「決まってるでしょ? 魔族狩りを始めるよ……俺の睡眠を邪魔した奴は絶対に赦さん! ぶっ殺す!」
★★★★★★
我が主の言葉に嬉しそうにして手を叩いているカベルネ様……この人は常識があると思ったのだが……どこか一本ネジが飛んでいってしまったようだ。私も主と一緒にいたらこうなってしまうのだろうか……。不安でならない。
コアや魔物の死骸撤去は町の人がやってくれるとの事で話がつき、私達は魔族がいると思われる場所を探しに町の外へと向かう。
「魔族がいる場所の目星等はついているのですか? タイチ様……」
「ついているはずないでしょ……適当に探すしかないよ。多分洞窟に居るはずなんだけどね……あれだけの魔物を出したと言う事は相当強い魔族なんだろうね」
何故この人はこんなにあっけらかんとして話をするのだろう。魔族に勝てるとでも言うのだろうか……並大抵の冒険者でなければ勝てないと聞く。もしくは数で押し切ったりするとか……我城の親衛隊でも勝てるものは少ないと言っていた。それほど魔族は強いというのだ。だが、この男は全く気にした様子はないし、カベルネ様は止める気すら感じない。
「か、カベルネ様……あ、相手は魔族なんですよ……わ、我々が勝てるのでしょうか……」
「タイチさんは既に数匹の魔族を屠ってます。それも圧倒的な力で。大丈夫だと思いますよ……だから魔族のいる場所を探しましょう。町の人たちを安心させてあげるのが……我々冒険者の使命ですから」
この人の言う事は正しいのだが、タイチ様が本当に魔族を数匹も屠っているのだろうか……カベルネ様ほどの魔法使いだったら何だか理解できるのだが……。
★★★★★★
実はカベルネに言われて試したのだが……出てしまったのだ。あの宇宙世紀で使われている武器が。しかも人間サイズで……威力は試していないのだが、まさしくアニメや漫画で見たそれだった。ちなみにサーベルも出た。本当にこれを使って制限をかけないのだろうか……。俺は、あの神様は本当は何も考えていないのではないかと思い、溜め息を吐く。ではなきゃこんな武器は出ないだろう。しかも手頃な所に魔物を発見してしまう。試すには十分だろう。
俺はライフル召喚する。そして、構えて……トリガーを引くと、それは光の速さで魔物の体を貫いた。
「ほ、本当に使えたよ……」
「おぉ!! 科学の武器は凄いですね! これが科学という物なんですね……」
これは科学というよりも、悪魔の力にしか感じられない。どういう風にして作られているのかは全く理解できず、どうやってビームを収束して撃ち放つのか……現代科学の推移を持っても解明できない物を俺は召喚してしまったと言う事なのだ。……まぁ、使えるというのなら使わせてもらいましょう。他にも色々あるのなら俺はそれを使用させてもらう事にする。だって、簡単に倒せるなら本当に平穏な生活が手に入るかもしれないし、家を作ることになったら、それはそれは楽になるからね。
一日歩いて探したのだが、洞窟などが見つかる気配はなかった。仕方なしに諦め、俺達は町に戻ると、再び準男爵に呼ばれてしまうのだった。
今回はリタも一緒に付いて来て話を聞いてくれるとの事なのだが、命令されるなら始めから断る気でいる俺。正直、準男爵のために働くのは嫌だし、俺は勇者でも英雄でも何でもない。ただの冒険者というか、カベルネと幸せに暮らせればそれで十分なのだ。
再び準男爵の屋敷へとやって来た俺達。リタは俺が世襲と言った意味を理解したようで、顔を引き攣らせていた。
その容姿が全てを物語っている。まずは運動をしていないと思わせるような体形をしている。そして、女を側に置いているのだが、その姿は破廉恥極まりない姿。こいつの趣味なのだろう。
「で、話とは何ですか? 我々は歩きっぱなしで疲れているんですがね……」
正直、宿屋でカベルネと一緒に食事を作ってイチャイチャしたい。だって18年間も彼女がいなかった俺に、ようやく春が来たのだから。だけれど、エッチなことはしないよ。犯罪だから。カベルネの許可があっても、16歳になるまではキスだけで我慢するのだ。
「な、なんでお前は俺の言うことを聞かないんだ! 俺が誰だか分かっているのか!」
横目でチラリとリタを見ると、顔を引き攣らせている。そして、カベルネは嫌悪感丸出しで、準男爵を睨んでいた。
「気持ち悪いし、臭い。それに、俺はあんたの子分でもなんでもないよ。雇われている訳でもないしね」
「な、何だと! お、お前、何様のつもりだ!」
「何様って……ただ平穏に暮らしたいだけの冒険者だけど?」
興奮している準男爵は、テーブルを強く叩き威嚇するような目で俺を睨み付ける。
「お、お前……俺を怒らせたらこの町で生きていけると思うなよ……」
「分かったよ。今すぐこの町を出ていってあげる。感謝しなよ、準男爵殿……」
「え?」
多分、予想もしていない答えなのだろう。目が点になり、俺を見ている。
「別にあんたの雇った刺客が恐くて言っているわけではない。ただね、いちいちこの町を助ける必要が無いというだけ……良かったね。俺達が出ていったら……あんた、町の人に恨まれるよ? だって、魔物からこの町を救ったの……俺じゃん? 準男爵殿はその時、何をしていたのさ?」
返す言葉があるはずは無い。ただ震えていただけなのだから。
「それに、準男爵殿の雇う傭兵さんたちがこの町を救ってくれるんでしょ? そりゃ手柄を取ったら悪いもんね~。だから俺達はこの町を一刻も早く出て行ってあげるよ」
そう言って立ち上がると、カベルネは当たり前のように立ち上がり、リタは慌てて立ち上がった。
「じゃ、そういうことで……」
俺は手を振って部屋から出ていく。カベルネとリタは一礼をしてから俺の後を追いかけて来るのだった。




