58話 嫉妬の心
「お城だね……」
目の前にそびえたつ古めかしい城。
「お城ですね……」
口をポカーンと開けながらカベルネは答える。城を見るのは俺もカベルネも初めてだからだ。
「禍々しい感じの……お城ですね……」
俺は何も考えていないが、カベルネはリタの言葉に少し顔を引き攣らせている。リタに至っては、嫌そうな顔してそのお城を見ていた。流石元姫様。城を見慣れている感じがした。
「あの城……なんて城か分かる人はいるか?」
誰も知るはずのない質問をしてみる。一応確認と言うやつだ。やはり町へ行って、情報という物を集めてからやって来るべきだったのかも知れないが、今更というものだろう。
「因みに言うと……あの中、魔物だらけだよ」
見た目から予想をしていたのか、俺の言葉に項垂れるカベルネとリタ。
「で、ですよね~……そんな気がしていたんですよ……」
「どうする? 手荒い歓迎を受けにでも行こうか? もしかしたら、金銀財宝が隠されているかもしれないし、レアなアイテム……道具があるかも知れないよ?」
「で、ですが、手荒いんですよね……」
少し嫌そうな声を出すカベルネ。
「もしかしたら……大歓迎を受けるかも知れないよ?」
「だ、大歓迎って……魔物ですよね……」
嫌そうな顔してカベルネは答える。
「取り敢えず……行ってみましょうか……冒険者なんだし……一応……」
リタも顔を引き攣らせてはいるが若干、期待したような目をして見ているような気がする。
「リタ、一応言っておくけど、俺は勇者じゃなければ英雄でもないからね? それだけは忘れては駄目だよ?」
「そ、そうなのですか?」
あ、この子は素直な子だ。
「俺は自由気ままに生きていきたいの! リタだってそうでしょ?」
「ま、まぁ……そうですが……それだけのお力が有りますから……」
「力ある者が絶対にそれをしないといけないと言う理由にはならない。俺はのんびりとゆっくりダラダラ暮らしをしたいんだよ」
「だ、ダラダラ……ですか……」
「俺は家を手に入れて、そこでノンビリと生活をするのが今の目標だ。今はかけ離れた生活をしているがね……」
できたらカベルネとリタの三人で縁側に座ってダラダラしたいとは……言えるはずはない。言えない俺は臆病者だ。
勇者や英雄などでは無いという言葉にあまり納得をしてくれた様子はないのだが、リタは頷く。まぁ、主人の命令だから言うことを聞くしかないというべきだろう。こんな場所で立ち止まっても仕方は無いので俺達は城の探索を始めることにする。
城と言っても廃城になっているようで、かなりボロボロになっている。
「随分と……ボロボロだな……」
「は、廃城……ですからね……」
「かなり前に廃城になったようですね……こんな紋章見たことも聞いたこともありません」
元姫であるリタが言うと説得力があるが、ただの世間知らずかもしれないため何とも言えないのが本音だ。
中を歩いていると、スケルトンタイプの魔物が現れる。もしかしたら元兵士なのかもしれないが、現在は魔物と化しているため俺達は持っている剣で叩きのめしていく。そして、コアを手にすると、スケルトンは動きを止めるのであった。
「元々人間だったのかも知れないな……恨み辛みや悔しさなどで魔物になってしまったのかも……」
「可能性は考えられますね……」
カベルネはスケルトン達に冥福を祈るかのようにお祈りをする。この子は優しいね。リタは自分の城を思い出しているかのような顔をして少し影を落としているように感じられた。
城を見て回ったのだが、特に目ぼしい物は無く、俺達は城を出ることにして次の場所へと向かっていく。魔物からは大歓迎を受けたのは言うまでもなく、全てに対して暴力という名のお返しをさせてもらった。
森は道無き道のため、どこに向かって歩いているのか全く分からずにいる。方位磁石だけが俺の中で頼りとなり、歩き彷徨う。
そして、魔物などの相手を繰り返すこと二日が過ぎる。カベルネやリタも疲れた表情をしており、いい加減何処かでしっかりと休む必要があると考えられる。
彼女らは男の俺と異なり女性。何をするにもそれなりに気を使うので精神的なダメージは強く重いだろう。
「大丈夫か? 二人共」
「だ、大丈夫……です……」
疲れた顔してリタが言う。
カベルネは優しく微笑み、自分の状態よりも、リタを気にしてほしいといった表情をした。
本当にこの子は優しいね。
「次の町で暫くはゆっくりしよう。追っても来ないはずだし……」
二人は頷き、納得をしてくれる。
それから二日ほど過ぎると町の城壁が見え始める。
「やった〜! 町だ!」
嬉しそうな声を上げ、飛び跳ねるリタ。元姫が、こんな事をするなんて誰が想像できたであろうか……。
「暫くはこの町で生活するんですか?」
「一応ね……と言っても、町の状態を見てからになるから……数日しかいないかもしれないよ?」
そう言うと、リタは少しだけ頬を膨らませて俺を上目遣いで見る。可愛い。文句などは言わないし、俺達はかなり打ち解けてきた気がする。
「ご主人様はそう言って意地悪を言うんです……。ぶぅ〜」
「まぁ、先ずは中に入って様子を確認してみようじゃないか」
俺は笑いながら言うと、リタも嬉しそうに笑いながら頷くのだった。
★★★★★★
なんか嫌な気分がする。二人の雰囲気が良い気がする。モヤモヤするこの感じが嫌だ。こと有る毎にタイチさんはリタさんを気にする。彼女は奴隷だが、元お姫様。確かに気品に満ち溢れているし、メチャクチャ可愛いし、キレイである。タイチさんの事をどう思っているのだろう。私のような田舎者なんかよりも彼女の方が……。




