56話 素早い魔物はこうやって片付けよう
メルトと別れて数日が過ぎる。俺達は分岐点に立っていた。
「こっちへ行くとパサージュの町で、あっち側がグランベルの森……か。リタ、何か知ってる? カベルネも知ってたら教えてくれると助かる」
そういうのだが、二人は首を横に振り分からないと答える。
パサージュの町へ向かうか、グランベルの森へと向かうか……どちらかしかないのは確かだろうが、気になるのはグランベルの森という名前だ。普通に考えて森に名前が付いていると言う事は、何かしら厄介な匂いがして好奇心を誘ってくれる。ここはパサージュの町へ向かい、情報を収集した方が良いかも知れないが……。
「二人はどっちに向かいたい?」
「え? ……えっと……出来たら町がある方へ向かいたいですが……」
「私もそうですね……」
「よし! ……森へ向かおう!」
では、何で聞いたのだと二人は思いながら俺の後を付いてくるのだった。
★★★★★★
タイチさんが森へ向かうと言った意味が理解できない。何故、危険だと思われる森へと進んでいくのだろうか。タイチさんは怖いという気持ちが無いのだろうか。
★★★★★★
我主は変わった性格をしている。人が嫌がると思うことを平気で言うし、平気でやる。だが、それは何かを考えての事だというのは分かるのだが、唐突過ぎるのだ。メルトの時もそうだった。メルトは泣きながらも付いてくると言って、縋りついてきたが、我主はそれを突き放すように町を出て行く。
暫くはメルトも付いてきたのだが、主は不思議な武器で脅し、町へと帰らせたのだ。確かに主が持っている武器は物凄く強く、恐ろしい。メルトは独りでやっていけるのだろうか……。
★★★★★★
俺達は森へと向かう事にした。理由は簡単。普通に考えて誰も危険だと思う森には入ったりしないと思うからだ。しかし、この森が本当に危険かどうかは誰に聞いた訳でもないから分かるはずは無い。ただ俺達が危険だと思っているだけである。もしかしたら危険じゃないが、何かが生息している可能性があるだけの話かもしれない。
森の中に足を踏み入れると、何処かで見た事のあるような岩等が転がっている。
「た、タイチさん……あれって洞窟……ですかね?」
カベルネが指差す先には洞窟があるが、それはどう見ても天然の洞窟に見える。溶岩洞のような気がする。
「多分……天然洞窟だろう……もしかしたら面白い物が見れるかもしれないぞ」
「お、面白い物……ですか?」
「あぁ、それは行ってからのお楽しみって奴だけど、俺の想像が正しければ、この洞窟は寒いんじゃないかな?」
チラリとリタを見る。リタの服装は布の服だけで、腰には町で買ったロングソード一本だけであった。
「その格好だと寒いだろな……リタ、これを着ると良い」
俺はコートを召喚して、リタに渡す。何故かカベルネが頬を膨らませていた。
「カベルネも寒い? 大丈夫?」
一応、声をかけてみる。
「大丈夫です……ふん……」
何が何だか全く分からないが、寒く無いというなら放っておこう。そして俺達は中へと入って行く。やはり天然の洞窟……というか溶岩洞だった。
「な、なんですかこれは……」
「これは溶岩洞だね……。溶岩でできた天然の洞窟だと思うよ」
「よ、溶岩でできた……洞窟……」
リタが驚きの声を上げながら中を見ている。
「この先には魔物はいないだろう。だが、中は危険だから、これ以上入って行くのは止めておこう」
二人は返事をして俺達は洞窟を出て行く。
「世界には不思議な場所が沢山あるんですねぇ……」
「そうだよ。あれが見れたのはある意味ラッキーだが、ここら辺は火山があったと言う事になるね」
「か、火山……ですか……」
「うん。それが森になり、グランベルの森と呼ばれるようになっただろう。だが、他にもお客さんがいるようだけどね……カベルネ。戦闘準備を怠るなよ」
「わ、分かりました!」
リタは初めての戦闘になる。カベルネはそろそろ自分の身は自分で守れと言ったらしい。言い方は優しいけれどね。
「右から三、左から五……襲い掛かって来るぞ!」
魔法を唱えるよりも銃の方が早いと判断したカベルネ。ホルダーから銃を取り出し、俺が言った方向に銃を構えた瞬間に魔物は襲い掛かってくる。魔物は虎のような奴で、鋭い牙をしている。それが一斉に俺達に向かって襲い掛かって来たのだった。
俺はベレッタを召喚して虎のような魔物に向けて撃つ。だが、相手の動きの方が速く、躱されてしまう。
「早い! これでは当てる事も出来ない!」
ピョンピョン岩を跳ねて攻撃を躱す。カベルネも狙いを定めて撃っているのだが、掠りもしなかった。
「こ、こいつは手ごわいな……」
グルルルルルゥ……威嚇するような声を上げ、俺達にじりじりと近寄ってくる。
「た、タイチさん! な、何かないんですか!」
「カベルネ! 火魔法を唱えて牽制するんだ! リタ、お前はこれを耳に装着してカベルネにも渡せ!」
そう言ってイヤーマフとサングラスをリタに渡すと、リタはイヤーマフを装着して、カベルネに渡す。
カベルネは直ぐにイヤーマフを装着してサングラスを掛ける。リタはカベルネが慌ててサングラスを装着させるのを俺は確認する。そして、閃光音響弾を何個も召喚してピンを抜き投げまくる。
色々な場所で大音響と光が発生して魔物は音と光で動けなくなった。
「な、何が起きたというの……」
リタは驚きの声を上げながら周りを見渡す。先ほどまで涎を垂らして憎たらしいほど睨んできていた魔物が完全に怯えている状態なのだ。
「これで始末する事が出来るな……」
そう言って俺は、ベレッタを召喚して眉間に数発銃弾をぶち込み、魔物を駆除するのだった……。




