54話 それぞれの思いは探り合い
車を走らせること二日間。飛空艇を撃墜した日から二日が経っていると言う事である。
俺達四人は最低限の会話しかせず、先を急いでいた。多分国境は越えたと思う。キシリトル国からの脅威は過ぎ去ったのではないかと思うのだが、まだ安心は出来ず、俺はひたすら町によることはせず車を走らせる。
日が暮れて、空が茜色になってきた頃に駄犬が腹が減ったと言い出した。
リタに質問をすると、リタは顔を赤くして答えようとはせず、カベルネには聞かずに車を止めキャンプを張ることに決める。
「カベルネ、そっち側を引っ張ってくれる?」
「承知しました〜」
カベルネは相変わらず素直で良い子だ。そして可愛い。
「こちらは固定完了しました。リタの方はどうです?」
「は、はい……こっちも……だ、大丈夫だと……」
リタの言葉に不安を抱いたのか、カベルネは確認する。
「うん、大丈夫だね……じゃあ、食事の準備を始めましょうか!」
★★★★★★
カベルネ様はとても優しい。わからない事は何でも教えてくれるし、魔法の練習にも付き合ってくれる。しかも、自分は苦手なのに、剣の練習にも付き合ってくれて、至れりつくせりな状態だ。ご主人様が一番信頼しているのは彼女であろう。
「カベルネ、今夜は何を作る予定?」
こうやって何も手伝ったりしないのはメルトと言う駄犬だ。主人が犬と言っているのだから、私と同列扱いなのだろう。だから言うことを聞かなくてもご主人様は何も言ったりしてくる事は無い。しかも弱いみたいだ。
「今日はカレーとかいう奴ですよ」
「ゲッ!」
しかも、カベルネ様はおしとやかで言葉遣いも上品なのに対して、メルトは下品だ。何故こんな奴がご主人様やカベルネ様と行動をしているのかが分からない。
私の頭を悩ませるに十分なパーティだと思う。
「リタ、辛いのは大丈夫か?」
「か、辛い……ですか?」
辛いというのが、どれ程のものか分からないのだが、メルトが嫌そうな顔をしているのを見て分かるのは、物凄く不味いのだろうという事だ。主人が作る料理に関して、私は今まで不満を感じたことがない。と言うか、お城で食べた物よりも遥かなほど美味しいものが出てくるので冒険者はこういった物を食べて生活をしているものだと私は思ってしまう。
だが、カベルネ様が仰有るには、それはご主人様が作られるものに関してだと仰っていた。
「カベルネ様、か、カレーと言うのは……一体どんな物でしょうか……」
「美味しい食べ物ですよ? 身体がポッカポカになる不思議な食べ物です。リタも気に入りますよ」
優しい笑顔でカベルネ様は教えてくれる。私のせいで大切な御髪を切る羽目になってしまったのに……。
「カベルネ、リタの方が年上だよ。目上の人に対しては言葉遣いをシッカリした方がいい。特にカベルネはそういう優しく、常識を持って接して欲しい」
何を言っているのか分からない。私は元王女だったかも知れないが、現在は奴隷だ。奴隷は奴隷の生活がある物だと私は城で習ったのだが……。
「はい……。分かりました」
「それに、リタは俺の奴隷だ。何人たりとも俺以外の命令は聞いてはダメだ。まぁ、カベルネの言う事なら聞いても構わないけど」
言っている意味が分からない。自分の言うこと以外は自分の意思で判断しろという事だろうか……。
「何言ってんの! アンタ……コイツは奴隷だよ? 何で人と一緒のように接しないといけないのよ!」
メルトの言う通りである。言う通りであるのだが……何だろう、こいつに言われると、無性に腹が立つのは何故なのだろう。
「黙れ駄犬。俺からしたらお前も奴隷と同じレベルというか、それ以下の存在だ。言葉に気をつけろよ……駄犬。俺がリタを大事に扱うと判断しているんだ。それが俺の総意である。お前みたいな駄犬と一緒にするなよ」
メルトは私以下の存在……確かにそう言った。その言葉を信じて良いのか正直不安だが、一応……最低限の敬意を持って接する必要はあるかと思うので、言葉を鵜呑みにするのは止めておこう。
そして、「カレー」と言う食事が出来上がったらしく、私の前にカベルネ様が用意をしてくれる。大変に申し訳なく感じる。私が……たぶん、一番下っ端なのだから、準備などをしなければならないはずだ。
「明日からリタにも食事を作るの手伝ってもらうよ。大丈夫かい?」
「は、はい……は、刃物は持ったことが無いので……大変申し訳ありませんが、教えてくれると……」
「刃物も持ったことないの? これだから王族ってやつは……」
ムカつく女だ。
「黙れ駄犬。テメェも飯の一つでも作れよ……クソ犬。リタ、大丈夫だよ。カベルネが優しく教えてくれるし、俺も出来る限り教えるから」
「あ、ありがとうございます」
このご主人様は優しい。流石、ペルマン……人を見る目があるといったところだな……。ついつい甘えてしまえるほど、彼は優しさに溢れている。
★★★★★★
食事が終わり、その日は一晩ユックリと休んでから翌朝になって出発をする。これを一週間程繰り返し、俺達は次の町へと辿り着いたのだった。




