50話 俺が求めるのはゆっくりと風呂に浸かり、のんびり歌を歌うこと
商館を出た俺達。カベルネは俺の背中をずっと抓っており、物凄く背中が痛い。ダルクと呼ばれていた少女は白い肌をして美しい少女だった。しかも胸がデカイ。多分Dくらいあるのではないだろうか。カベルネはBで、メルトはCくらいだと思う。
「取り敢えず……これを羽織ってくれるか?」
袋の中から布の服と布のズボンを取り出す振りして召喚し、ダルクと呼ばれた少女に渡す。今の格好は、肌が見えるほど薄いシャツ一枚で、正直……胸を何度も見させてもらいましたが、それに気が付いているカベルネは両手で俺の背中を抓ってくる。マジで背中は真っ赤になっているのではないだろうか……。血は出ていないか……。
「タイチさんは最低です……奴隷なんか……」
「さ、最低と言われても……」
弁解をしようにもカベルネだって話は聞いていたはずだ。しかも奴隷を手に入れるとき、魔法契約をしないといけないということで、俺は血判までさせられて、この子は完全に俺に所有物となった。
イケメンは言う……。契約によって、主人の言うことは絶対であると……。だが、幾つかの制限があり、奴隷は主人に対して暴力を振るうことはできないらしい。その他にもあるが、その説明は省かれてしまったのだった。早くこの子を連れて店から出て行ってほしいと言うのが……イケメンの望みだったからだ。
確か、姫と言っていた。多分、ダルクと言う名も偽名だろう……契約書には違う名前が書かれていたように見えたが、その名前は手で隠され、見えないようにされていた。
「えっと……取り敢えず、君を冒険者登録する必要がある。俺たちはこの町を一刻も早く出ていかなければならないからだ……。だから……ちょっとカベルネ、痛いって……本当に!」
「だって……タイチさんは私がいるじゃないですか!」
君にはリードがいるでしょ……。それとも本当に俺が好きになったとでも言うの? そうしたらアプローチをかけてしまうよ? 良いの? 本当に……。
「何を言ってんの……カベルネだって話を聞いてただろ……これには事情が有るんだよ、きっと……。ととと……話がズレたし、ここで問題を大きくする必要はない……早くこの町を出て落ち着いて話を……って下着も無いのかよ……痛!」
着替えているところを一瞬だけ見たら……カベルネに背中を蹴られた。
「最低です!!」
「もう……悪かったよ……カベルネ、これを持ってろ。町を出てすぐに必要になる。しかもだ……今度は人間相手だぞ……覚悟を決めろ」
「な、何を言っているんですか……」
「駄犬、お前にはこれを渡す。このスイッチを押したらこうやって……何処でもいいから押し付けろ……そうすりゃ相手は気絶するだろうぜ……」
強力スタンガンを袋から出すふりして召喚し、メルトに渡す。
「君は俺の後ろに隠れてるんだ……分かったね」
(……はい)
消え入りそうな声で返事をする。本当に厄介事は勘弁してもらいたいが、そういう訳にもいかないようだ……トホホ……。
「あと、君の名前は……リ……リタ! 君の名はリタだ……分かったかい? リタ」
「……はい……」
リタは小さく頷き歩き始める。だがその時に気がつく。三人の靴が……と言うか、二人は革のような靴を履いており、リタは裸足。
「リタ、これを履け」
そう言ってサンダルを袋から出すふりして召喚し、リタに履かせる。リタは感情を表に出すようなことはせず、小さく「ありがとうございます……」と呟いた。俺がリタにだけかまっていると思っているカベルネ。物凄く頬を膨らまし俺を睨んでいるのだが、それが面白いのかメルトはニヤニヤしていた。
「カベルネ、君のは後で用意する。今は登録を済ましてこの町を出るぞ……良いか、一刻も早くこの町から出るんだ」
★★★★★★
タイチさんはあの奴隷の事で頭が一杯になっている。確かに物凄く綺麗な人だ(しかも私よりも胸がデカイ)。タイチさんが気にするのは分かる。だけど、私はパートナー! 一緒にいるのは私のはずだ! あんな子に負けてらんないのだから!
タイチさんは急いでギルドへ向かい、奴隷を冒険者登録させる。確かに奴隷も冒険者登録できるというのは聞いていたが……意外と値が張るものだった。私達が冒険者登録するときにかかる費用は50ガルボだったが、奴隷は500ガルボもしたのだった。奴隷のくせにタイチさんに迷惑をかける不届き者……最低な奴だ。
だが、タイチさんの様子がおかしい。普通に考えれば武器屋と防具屋に寄るはずなのだが、直ぐに町の出入り口へと向かって行く。正直何かおかしい……。
「タ、タイチさん……何かあったんですか……」
「あったも何も……良いか、さっきも言ったが、次の相手は人間だ……今回は覚悟を決めるんだ。絶対に俺がカベルネ達を守るから……頼むから言う事だけは聞いてくれ!」
タイチさんが真剣な目で私に言う。この目をしている時は絶対に大切な事を言う時だけだ……。私は絶対に守ってくれる……この言葉だけで私は天にも舞い上がってしまう気分になってしまう。
「わ、分かりました……」
★★★★★★
俺達は町の外に出る。すると、気配は一気に増え!かなりの勢いで俺達の方へと向かってくる。
「カベルネ! メルト! 森に身を隠すぞ……」
「はぁ? 何言ってるのよ……」
駄犬は鬱陶しそうに声を出す。マジで駄犬は使えない。
「説明は後だ! 良いからコッチに来い!」
俺はリタとカベルネの手を引っ張り森の中へと逃げるように入っていく。そして、最悪なことに……洞窟を発見してしまうのだった。
もう、どうすることも出来ない俺は、三人を連れて洞窟の中へと入っていき、事をやり過ごすつもりでいた……のだが、世間はそこまで甘くは無く、追撃者は俺達を追い詰めるかの如く洞窟へと侵入してくるのだった……。




