43話 これで正式に呼び名が決まったね
翌朝、カベルネがメルトを起こしに行くが、起きてくれないと泣きそうな表情で言ってくる。可愛い。
俺はメルトの部屋に行き、ハリセンを召喚する。そして顔面目掛けて振り落とす。カベルネは振り落とす瞬間、両手で自分の顔を隠すようにしてその光景を見なかった。
「痛~い……何するのよ……」
「起きたか? 駄犬。飼い主より遅く起きるとは生意気な奴だな……」
「だ、誰が飼い主よ!」
「俺だよ。駄犬……早く起きて寝癖を直せ……駄犬」
再び俺はハリセンを振り落とすのだった。
メルトが準備を終えたのはそれから三十分後。仕方無く俺は朝食を用意してやる。
「気が利くじゃない……」
「駄犬、調子に乗るなよ……俺は一瞬でお前を殺せるという事を忘れるな……」
ゴクリとメルトは唾を飲み込む。冗談だとは感じていない所を見ると、魔族を倒したと言うことは理解しているのだろう。まぁ、本気だから冗談ではない。一瞬、本気で殺してやろうかと思った。このバカは舐めてやがる。そして、メルトは黙って食事を始めるのだった。
食事を終え、俺達は宿屋を出て道具屋へと寄り、魔法の袋を購入してカベルネに渡す。
「い、良いんですか……」
「もちろん。これがあれば約束は達成出来たかもしれない。そしたら俺の負けだったよ」
精一杯優しい笑顔を振りまき、カベルネに言うと、カベルネは少し照れたような顔して嬉しそうにお礼を言う。可愛い。
「じゃあ、アンタはキャンキャン言わないでよね」
空気を読めないとはこういう事だろう……。
「黙れ駄犬。貴様が喋ると空気が汚れるだろ。考えて口を開けよ……駄犬」
★★★★★★
睨み合う二人。私はオロオロしてしまう。何故二人は仲良くなれないのだろうか……。タイチさんは悪気があって言っているわけではない。そしてメルトさんも照れ隠しで言っているのだとは思うのだが……口は悪い。
相なれないといったところだろう。正直言うと、悪い気分はしない。タイチさんがメルトさんに全く興味がないという事の表れだから……。そう考える私は悪い女だと思う……。だけど、この気持ちだけは譲れと言われても絶対に断る。
★★★★★★
マジでコイツはムカつく。私を何だと思っているのだ。私を仲間だと思ってはいないのか!
★★★★★★
俺達は町を出て、次の町を目指し歩いて行く。メルトはムスッとした顔で付いてくるが、カベルネはニコニコと相対的であった。何故、カベルネは嬉しそうでメルトが不貞腐れているのか分からなかった。
「どこまであんた達は行くつもりよ……町からかなり離れたんだけど……」
「次の町までは近付いてるだろうが……駄犬」
「ちょ、次の町って!」
「黙れ、駄犬。お前に決定権はない」
俺は睨み付けながらメルトに言うと、文句の言いたそうな顔して俺を睨みつけてくる。
「わ、私達はいろんな町を渡り歩いてるんです……。初めはブルクスの町にいたんです」
「何でそんなことしてんの?」
俺に聞いても答えないと思ったのか、カベルネに質問する。まぁ、間違えはないが、駄犬は黙っていてほしい。俺とカベルネの楽しい旅を邪魔してほしくは無い。
「それは……あの……」
チラッと俺を見て答えに迷うカベルネ。旅を始めた目的……たった二人で発見された洞窟を制覇した挙げ句に魔族を倒したなんて言えるはずも無い。と言う事なのか? 別にそれは構わないと思うのだが……。
「わ、私を雇い……えっと……」
困った顔して俺を何度もチラチラと見る。仕方無い……。
「新人冒険者……しかも全く魔物を倒せなかった少女と、アーチャーの新人冒険者が発見されたばかりの洞窟を制覇した挙げ句に、魔族を退治してしまったから居辛くなったんだよ。行った先でトラブルにあいまくって仕方無しに町を移動する羽目になっている。これで十分だろ……駄犬」
「あ、あの町でトラブルなんか起こしたというの? 何かした? 私等……」
苦笑いをするカベルネ。この駄犬は自分がトラブルの原因だとは思っていないという素敵なオツムをお持ちのようだ。本当にこいつはどんな事を考えながら生きているのだろう……。
「はぁぁぁ~……。おい、駄犬。……お前がトラブルだ。それすらも気が付かんとは……本当に駄犬は駄犬だな……」
俺はデカイ溜め息と共に言うと、メルトは何故自分が原因なのかと首を傾げていた。こいつは頭が悪いのだろう。俺はそう思う。
暫く歩いていると、魔物の気配を感じ、俺はカベルネに目配せをする。カベルネは直ぐに魔物だと理解してくれたようで、ロッドを構えて戦いの準備を始める。
「え? え? ど、どうしたの? カベルネ……」
「魔物です。メルトさん」
「駄犬……お前の出番がやって来たぞ。働けよ、駄犬」
「誰が駄犬よ!!」
「じゃあ、雌犬。あっちの方角に魔物がいるから行くぞ」
「な、なんで魔物がいるって分かるのよ! いなかったらどうするのよ!」
「居なかったらお前の犬にでも何でもなってやるよ。駄犬。もしいたら……お前、本当に駄犬だからな」
「ば、馬鹿にして!! いなかったら覚えておきなさい!」
メルトは怒りを露わにして俺に言う。俺は自分のステータスを出して、気配察知のレベルを上げると、かなり色々な事が把握することが分かる。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:26
力:42
器用:50
体力:56
魔力:50
スキルポイント:131
【スキル】
アイテムクリエイト(物を生み出す力)
異世界言語
異世界文字
射撃:2
気配察知:4
剣技:1
魔法感知
回復魔法:レティオ(小)
浄化魔法:ウラア
飲料魔法:ウォータ
灯り魔法:ライト
着火魔法:テンカ
格闘:2
★――――――★
名前:カベルネ
レベル:19
力:30
器用:31
体力:31
魔力:55+50
信頼度:95
スキルポイント:180
【スキル】
火魔法:ファイア(小)
水魔法:ウォーター(小)
回復魔法:レティオ(小)
魔法感知
射撃:2
★――――――★
しかもカベルネと俺は射撃のレベルが上がって居た事に今さらながら気が付いた。スキルポイントを使用しなくて上がったことは喜ばしい事である。
「あっちだな……」
俺が指を差すと、メルトは鼻で笑い、俺を見つめる。そして暫く指を差した方へと歩いて行くと、数匹の魔物が群れをなしていたのだった。
「これでお前は俺の駄犬と言う事で決まりだな……駄犬。俺の力を見せてやるから感謝しろ。そして誰かに喋ったらお前を殺してやるから覚えておけよ……」
そう言ってマシンガン銃、アーセナルシプカを召喚し、メルトは目を見開き声を上げようとするので俺は慌ててその口を手で押さえる。
「叫ぶな! 馬鹿……だから駄犬と言われるんだ! 黙ってみてろ」
そう言って俺はユックリと魔物の傍に近寄り銃を乱射させ魔物を駆逐するのだった。




