42話 守られない約束、情けない俺
「メルトさん、どうですか? 自信は付きましたか?」
「結構ついたよ……マジでやれると思う」
「ですが、守備が良く無いです。タイチさんはほぼ怪我をしないんです……今後の課題ですね」
「馴れたら大丈夫だよ!」
「甘いです。タイチさんは仰有ってましたよ、いつも新鮮な気持ちでやらないと絶対に怪我をするって……」
「どういう事?」
「相手はいつも同じ動きはしません。そういう事だと思います。情報は大事ですが、それは知識として持っておくべきだと言ってました」
「何様だよ……あいつは……それは強い奴が言う台詞だよ」
「タイチさんは努力家ですよ! 常に先を考えてるんです。メルトさんもそうやればもっと楽に倒せると思います……」
「常に……先を考えるねぇ……」
メルトさんはゲンナリした顔でテーブルに伏せていた。食事は私が作ることになったが、タイチさんのそれと比べると不味過ぎる。だが、メルトさんは文句も言わずに食してくれた。それに関して私は感謝の言葉しか出ない。
明日からまた頑張ろうということで私達は休む事になったのだった。
★★★★★★
翌朝、俺は既に宿屋を出て隠れて二人の行動を追うことにするのだが……。二人は宿屋から出てくる気配はない。俺の持っている時計では既に9時を過ぎている。
どちらが遅いのか……おや? カベルネが項垂れながら出てきたが、身嗜みはシッカリしている。俺の言いつけを守っているという事だが……しかし何故落ち込んでいるのかが問題だ。時間がかかってしまったのか? いや、そう言う訳ではないな……メルトの頭は寝癖全開だ。アイツ、寝坊しやがったな……。自分の置かれている状況を分かっていない……本当に馬鹿な奴……。
★★★★★★
「メルトさん! 昨日の遅れを取り戻すって話じゃないですか……何で二度寝をしてしまうんですか……」
「ごめん、ごめん……布団が気持ちよくてさ〜」
「何度も起こしたのに〜!!」
「ワザとじゃないって〜。そんなに怒らないでよ〜」
★★★★★★
カベルネは結構怒っているようだが……メルトのバカは気にして無さそうだな。この先が思いやられる。カベルネは本当にお人好しだ。悪い事ではないし、それは良い事だと思うけれど……時にそれは残酷を生むことになる。俺がいた日本ではそう言う事が当たり前に行われており、それが殺人という犯罪や、自殺という不幸を作る原因だった。まだまだ一緒に居てやる必要があるな……全く……。
こんな感じで二日目が始まり、二人は頑張るも遅れを取り戻すどころではなく……メルトは魔物に苦戦しまくり、予定外の少なさで二日目が終わってしまう。これが油断というやつだ。昨日できたからと言って、翌日も同じ事が出来るはずはない。俺はカベルネに言ったことが有る。それを理解しているのだろう、カベルネが何度かそれを言う声が聞こえた。
三日目、二人は夜遅くまで頑張ったのだが森の中で朝を迎えてしまう。二人は微かな期待を込めながらギルドへと向かうも、合計で3,250ガルボという数字で終わりを迎えてしまった。二日目の遅れはかなり響いた結果となる。
俺は先回りをしてギルドでダラダラしていたふりをする。本当は糞眠い。
「で、合計で何ガルボだったの?」
「さ、三千ガルボ……です」
「残り二千ガルボは?」
「だ、駄目でした……」
悲しそうな顔で言うカベルネ。知っているよ。そこのバカが言う事を聞かないからだよね。
「俺は言ったよね? 犬や猫のように再び捨ててしまうのかと……」
「はい……」
ポロポロと悔しそうな涙を流すカベルネ。それを見かねたメルトは土下座して俺にお願いをしてくる。
「お願いします! ど、どうか仲間にして下さい! 何でもやりますし、頑張りますから!」
プライドもへったくれも無いのだろう。カベルネの頑張りに申し訳なく感じているようだった。
「その言葉……忘れるなよ? なんでもしろよ、本当に……駄犬」
「た、タイチさん!」
「言ったろ? 犬や猫のように簡単に捨てちまうのかと……仕方ないから立派な雌犬に仕上げてやるよ……」
「め、雌犬って……アンタね!」
イラッとして立ち上がるメルト。誰が飼い主か理解をしていない。
「じゃあ、一人で頑張んな。行こうか、カベルネ。お前は俺と来るんだろ?」
「あ、い、あ、あの……」
「その駄犬と一緒に行くならサヨナラだ。自分で言った言葉すら守れない駄犬は飼えない」
「クッ!! も、申し訳ありません……でした……」
「よろしい……。駄犬は駄犬らしく尻尾を振って付いてこいよ。嫌だったら勝手に離れりゃいい」
悔しそうに睨みつけるメルト。苦笑いをして俺達を見つめるカベルネ。この先に不安でも感じている様子だった。そりゃ今更な話だよ……こいつは本当に自分の実力が分かっていない。
徹夜で頑張った二人は疲れのピークが来ているのか、眠たそうな表情をしていた。かという俺も、二人を隠れて見ていたのでかなり眠いのだが……。
「先ずはゆっくりと休んでから……次の町へと行こうか……その前に駄犬の装備を調えないといけないな……無駄遣いばかりしてるよ……全く……」
俺は困った顔してギルドを出て行く。二人は嬉しそうに手を繋いで俺の後を追いかけて来るのだった。




