3話 説明は大事だよ。しっかり説明をしようね。頼むから
入り口から再び町の中へと戻る。
奴隷の話や冒険者など色々な話もあったが、これで安心して落ち着ける場所を探せるということだ。
兵士にガルボを支払ったあと、俺は身体を休められる宿屋を探すのみ! 残りは75ガルボ。この額で泊まれることはギルドで確認済みだ。
町を暫く彷徨き、遂に宿屋の看板を発見した時は、小さくガッツポーズをしてしまったが、今はそれどころではない。俺は宿屋の扉を開け、中に入ると受け付けにいる男性と話をする。
「いらっしゃいませ」
「えっと、一泊したいんですけど――」
「30ガルボになるよ」
「あ、あの……食事って……」
「ん? 食事か? 食事付だったら追加で10ガルボになるよ。朝食も付けるなら20ガルボ。どうする?」
「じゃ、じゃあ……それでお願いします」
食事を摂っていなかった俺は、食事付きを選び、50ガルボを支払ってから部屋に案内される。それから直ぐに食事が部屋に運ばれ、俺はようやく食事にありつく事が出来た。そして、食事を済ませたあと、ベッドに寝転がり横になる。一日の疲れが酷かったのか、俺は直ぐに眠りについてしまった。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「ん? あれ……ここは……」
見憶えがある風景。それも割と最近。
俺は再びあの世界に来ていた。
えっと、確か精神と時の狭間にある世界だったっけ?
『やあ、太一君。再び呼び出してしまって申し訳ないね』
「き、君はあの時の縞……女の子」
『縞? まぁいいや、君にもう一つ説明するのを忘れてしまったんだ。申し訳ないね』
なんという事でしょう。この人達は、何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのでしょうか。
『君のステータスを分かるようにしたと言っておきながら、それをどうやって確認できるのか説明をしていなかったよ。ごめんごめん』
言われてみればそうだが、あの状況で、ステータスの事を忘れていたというのが正直な意見だが……。
『ステータスの確認方法は簡単だよ。頭の中で「ステータス表示」と唱えれば、目の前にステータスが現れる。そして、消すときは「ステータス解除」と唱えれば消えるようになる。ただそれだけ。君に信頼できる仲間が出来たら、その者達のステータスも確認する事が出来るようになるよ。その時はその人の名前とステータス表示と唱えれば出てくる。解除は同じやり方でできるからね』
な、仲間? そ、そうか……異世界だから仲間とかも必要になるかもしれないな……。
『じゃあ、頑張ってね。これで私は本当に君の前に現れることは無いと思う。さぁ、新しい人生を謳歌してくれたまえ!』
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
目を覚ますと、既に朝になっていた。首を左右に動かし、周りを見渡すと、昨日泊まった宿屋のベッドで横になっており、俺は体を起き上がらせる。
「ゆ、夢か?」
だが、やけにリアルティがある夢だった。俺は、夢で言われたとおりに頭の中でステータス表示と唱えると、自分のステータスが現れる。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:2
力:3
器用:2
体力:5
魔力:3
スキルポイント:20
【スキル】
アイテムクリエイト(物を生み出す力)
異世界言語
異世界文字
★――――――★
ステータスが表示され、あれは夢ではなかったことが証明される。だが、スキルポイントという項目がある事が気になる。俺は恐る恐る目の前に現れているスキルポイントという表示をタッチすると、ズラリと色々なスキル項目が表示されるのであった。
「こ、これは覚えることができるという事……なのか?」
俺はズラリと並んだスキルをスクロールさせていくと、射撃という項目に目が留まる。
「これ……もしかして、射撃のレベルが上がるというのか……?」
だが、それを確認することができない。そのポイントをどうするか迷っていると、ドアがノックされ、俺は口から心臓が飛び出すのではないかと言うくらい、身体を「ビクッ」と、させ驚きを見せるのであった。
「お客様、お早うございます。起きられていますか?」
宿屋の人だ。いったい、何の用件だろう……。
「は、はい……」
「朝食をお持ちしました……。一泊ということなので、お昼前には退出をお願いしますね」
宿屋の人が、昨日頼んだ食事を運んで来てくれたようだ。
「わ、分かりました……」
扉を開け、朝食を受け取る。ここでの食事は基本的に肉料理がメインになっており、朝食としての味はそこそこである。ステータスの事は後で考えるとして、先ずは朝食を摂ることにするのだった。
朝食を済ませると、俺は出かける準備をして、宿屋をチェックアウトする。
そして、今晩の宿代を稼がないといけないため、町の外へと向かうと、兵士に呼び止められた。
「通行書かギルドパスを見せてくれるか?」
呼び止めた兵士は昨日の兵士と違う。多分、交替制なのだろう。俺はギルドパスを見せて確認してもらい、町の外へと出ていく。
町の外に出ると、ウサギ等の動物がチラホラ見え隠れする。昨日は周りを見られる状況では無かったため、改めて周りを確認すると、広大な景色が広がっており、異世界に来たのだと、改めて感じてしまう。
早速俺は銃を構え、一撃で仕留められるように狙いを定めるのだが、上手く弾が当たらず、時間だけが無駄に過ぎてしまう。昨日はウサギの方から襲い掛かってきたのだが、今日に限っては逃げて行く。これは何かしら原因があるのだろうとは思うのだが、今はそんな事を考えている余裕はない。先ずはガルボを稼ぐためにウサギを殺らなければならない。
ニ時間ほど狩りをしているのだが、全く捕まえることができずに俺は草原で大の字になって、他の方法がないか考える。獲物を仕留められないのは、俺の射撃能力が低いのが原因だというのは良く分かっているのだが……。
「あ、そう言えば……」
ステータスの事を思い出し、俺は射撃のスキルをつけてみることにする。射撃のスキルはスキルポイントを10も使用するらしく、少し悩んだがやらないよりはマシだと思い、俺はスキルをつけることにした。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:2
力:3
器用:2
体力:5
魔力:3
スキルポイント:10
【スキル】
アイテムクリエイト(物を生み出す力)
異世界言語
異世界文字
射撃:1
★――――――★
ステータスに射撃:1という数字がついたということは、まだ射撃のレベルが上がるということなのだろうか……。今の状態で確認は難しいため、取り敢えず目の前の事に集中することにする。
暫くすると、離れた場所にウサギを発見。俺は狙いを定め、慌てずに、落ち着いてトリガーを引く。すると、今度は見事に弾がウサギに当たる。俺は急いでウサギに駆け寄り、生死を確認すると、ウサギは死んでいて、射撃の精度が格段に上がっていることを示していた。
これで安心してウサギ等を狩る事ができる。俺は、今日一日でウサギを二十匹、イノシシを二匹仕留めることに成功し、気分良く町へと戻っていくのであった。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:3
力:4
器用:5
体力:6
魔力:4
スキルポイント:30
【スキル】
アイテムクリエイト(物を生み出す力)
異世界言語
異世界文字
射撃:1
★――――――★
町に戻りギルドヘ向かうと、モヒカンマッチョのダレルさんが店の中にいた。
「こ、こんにちは……」
「よう、タイチ」
「今日、狩ってきたのを換金してもらいたいんですけど……」
「おう、ちょっと待ってろ……ベガルタ! 買い取りを頼む」
「は~い……只今参ります」
昨日の女性は、ベガルタという名前らしく、俺達の方へとやってきた。
「あ、いらっしゃいませ。買い取りですか?」
「は、はい……。今日はウサギが二十匹にイノシシが二匹になります」
「まぁ! イノシシまで仕留めたのですか! 冒険者になりたてなのに、凄いですね……」
「本当だな……ウサギをこれだけ狩るのも凄いが……イノシシまで殺ったのか……それに一撃で仕留めている」
ダレルさんは驚いた顔で俺を見ていた。
「本当に昨日までのタイチか? あれだけオドオドしていたクセに……」
怪しがられる俺。ここはどうにか誤魔化さないといけない。
「なんか……コツが分かった気がしまして……」
「ほぉ……頼もしい言葉だな。ウサギやイノシシは、村の畑を荒らしたりするから駆除を頼むぞ。まぁ、他の魔物とかを討伐したほうが儲かるがな」
「ま、魔物ッスか……」
魔物……昨日見た、鼻が長く、目が不気味な奴を思い出す。
「ほら、あそこにある掲示板を見ろよ……あそこに書かれているやつを仕留めたら、ここに持って来い。そしたら書かれている分のガルボが貰えるんだぜ。だから冒険者は稼ぎが良いんだ。その理由は、魔物の体内には魔核があり、そのコアは色々な物に使われている。それなりの価値があるということさ」
「い、色々な……物ですか?」
「あぁ、大きさによりけりだが、コアは生活に必要なものだな。取り出すのは大変だから死骸を持ってきてくれればこっちで解体するぜ。魔物によっては食用になるやつだっているしな」
「へぇ~……コア……ですか」
ベガルタさんからガルボを受け取る。ウサギ二十匹で300ガルボになり、イノシシは一匹50ガルボになった。
「イノシシに関しましては毛皮の状態が良かったので一匹につき20ガルボとさせて頂いております」
毛皮まで買い取ってくれたのはありがたかった。今日だけで400ガルボの収入が入り、最低でも四日は泊まることができる。
ダレルさんたちが言っていた掲示板を見ると、初めてこの世界に来た時に出会った、あの化け物……あれはゴブリンだったらしく、一匹につき100ガルボもする。だったらあの場所でゴブリンを探して狩ったほうが稼げるのではないか……。先ずは生活の基盤づくりを始めないとならない。と言う事で、先ずは自分のゆっくり休める家を手に入れる事……そこを目指そう!
こうして俺の目指す目標が決まるのであった。
2023/1/21 全体的に修正済み