38話 コンビネーション
翌日、ギルドでコアを換金し、そのガルボはほぼ全部と言って良いほど、弁償に当てられた。俺の金運は有るのかないのか分からない。
カベルネは物凄く落ち込みながら俺の後に付いて来ている。休めと言ったが、昨日の件があり宿屋にはいたくないとの事だった。別の宿屋に泊まっても構わないと思っているのだが……。
「カベルネ、場合によっては別の宿屋に行っても構わないんだよ?」
「で、ですが、ランクが下がってしまい、お風呂とかついてませんよ? タイチさんはお風呂に入りたいのではないのですか?」
そう言うカベルネだって風呂が好きでしょ? だって長風呂じゃん。とは言えるはずもなく、言葉に詰まる。しかし、何故こいつも付いて来ているのかが気になる。
こいつとは……そう、メルトである。何故こいつが俺達と共に行動しているのだろう。宿屋で一人落ち込んでいればいいのに……俺達の邪魔をしないでもらいたい。
「メルトさん……もう大丈夫なんですか?」
「えぇ、ありがとう。もう大丈夫よ」
カベルネの言葉に無理矢理笑みを作って答えているのが分かる。追い打ちをかけてやろう。
「そうか、もう大丈夫ならここでお別れだな。餞別にその剣はくれてやる。達者で暮らせよ」
そう言って町の外まで歩き出す。カベルネはメルトに一礼をして俺の後を追いかけて来るが、メルトも俺の後ろを付いてくる。
町の外に出て森の方へと向かうがそれでもメルトは俺達の後をついてきておりカベルネは後ろを気にしながら歩いている。そして、いい加減に面倒になって俺は立ち止まり、振り向きメルトに話しかける。
「何で付いてくるんだ? お前は一人でやってけるだろ?」
「べ、別に付いていっている訳じゃないわよ……み、道が同じだったのよ……」
「どう見ても森の中なんだがね……ここは」
「そ、それは……そう、な、仲間を弔った場所へ向かっているのよ」
「真逆だが……」
「い、一宿一飯の恩があるし……」
素直じゃない。
「昨晩床拭きでチャラだとお前が言ったが?」
「た、タイチさん……」
袖を引っ張るなよ、エンジェル。そんな目で俺を見るな。分かったよ、泣きそうな顔をするな……。二人して……。
「暫くの間だけだからな。お前はカベルネと違って雇った訳じゃない……それを忘れんなよ」
「わ、分かったわよ……」
嬉しそうにする俺のエンジェルと、恥ずかしそうにしているメルト。素直に一人では稼ぐ事ができないから助けてくれと言えば良いものを……。そうしたら少しだけ助けてやったり、リンダールの方まで連れて行くとか考えたりするのに……。厄介事は一人だけにしてくれよ。
俺は小さく溜め息を吐き、魔物の気配がする方へと向かっていく。
「魔物発見しました!」
「おぉ、流石カベルネ。俺よりも見つけるのが早くなったな」
「エヘヘ……。どうやって戦いますか?」
このセリフは銃を使うか使わずに戦うかを確認しているのだと思う言葉だ。メルトには説明している訳では無いのだから……。
「こちらの戦力を考えると、アンタのおかしな魔法で相手を弱らせてから止めを刺せば楽じゃない?」
「アンタって……俺の事か?」
「おかしな魔法を使うでしょ? あの魔族だって倒したんだから……」
「そりゃ相手が頭悪いから勝てただけだ。次やったら勝てるか分かったもんじゃない。それに、俺はアンタという名前じゃない。タイチだ」
「ふ〜ん」
「あ、あの……魔物……どっか行っちゃいましたよ……」
苦笑いしながらカベルネが言う。
「メルトのバカが邪魔するから獲物が……」
「バカって何よ!」
「お前の事だよ、バーカ! 邪魔すんなら帰ってくれないか……。それに、口出しをしないでくれる? 迷惑なんだよ。俺はお前の仲間じゃない」
「わ、分かってるわよ!」
「それに、俺は魔法使いじゃない。魔法使いは彼女だよ。俺は簡単な回復魔法と生活魔法しか使えない、ヘッポコ剣士さ。お前と一緒でな……」
「わ、私はヘッポコじゃないわよ!」
「ヘッポコじゃないなら次の魔物はお前が戦えよ。俺は昨日、沢山の魔物をここで狩ったぞ。そりゃギルドで見ただろ?」
「う……わ、分かったわよ……や、やれば良いんでしょ! やれば!」
先程逃した魔物の気配を追うのは止め、他の魔物を探すことにする。
「カベルネ……一応、これを渡しておく。体調が良くないんだから無理をするなよ」
いざという時のためにベレッタを召喚してカベルネに渡す。
「お気遣いありがとうございます!」
俺の天使は素敵な笑顔を見せてくれた。
★★★★★★
私の体調をずっと気にしてくれているので本当に申し訳なく感じるが、たまにはこうやって甘えるのも悪くないのかもしれない。そんな事を思いながら私はジュウを預かる。悪い子だ……。
タイチさんはメルトさんに対して何故か冷たい態度を取る。それは何故なのだろうか。
「お? 魔物だ……ありゃ、ゴブリンメイジだな……エアカッターを唱えてくるのがウザいな……」
「どうせ私が戦うんだから文句を言わないでよ」
「じゃあ、宜しく……」
タイチさんが挑発をするかのようにメルトさんに言う。メルトさんはムッとした表情をしてゴブリンメイジの方へ駆け出していくが、ゴブリンメイジは二体おり、メルトさんは二体目に気が付いていないようだった。
「カベルネ、やれるか?」
「はい! 【ファイア】!」
私は火魔法を唱えゴブリンメイジに攻撃を仕掛けると、タイチさんはその火球を追いかけるかのように走り出した。
火球はゴブリンメイジに当たりタイチさんは止めを刺すかのように剣で斬り裂きもう一体に攻撃を仕掛ける。メルトさんはゴブリンメイジの魔法に手を焼いていて、倒しきれていないところにタイチさんが斬り捨て、戦闘は終わるのだった。ジュウを使わなくても私達は戦えるということが立証できた事は収穫である。まぁ、ジュウを使えばあっという間に終わるのだけれど……。
「大丈夫ですか? メルトさん……【レティオ】!」
回復魔法を唱え、メルトさんの傷を癒やす。装備が皮製だからできればもう少し良いものを装備した方が……。
そこまで考えると、タイチさんが言っていた装備を固めると言った言葉の意味が何となく理解ができた気がする。本当にタイチさんは何個も先を考えながら生活をしているのだと、改めて私は理解するのだった。
2017/4/9修正




