36話 失った者の悲しみは大きいよね
「こ、ここは……」
「宿屋だよ。メルトさん」
ガバッと慌てて体を起こして俺を見るメルト。あの後、メルトを担いで俺は町へと帰り、入り口の兵士に状況を説明してメルトを宿屋へと連れ帰って来たのだった。面倒だったのはカベルネ。何を勘違いしたのかいきなり泣き出し、俺の胸をポカポカと叩き始めた。一体何だというのだろうか……。
「あ、あなたは……」
「体は大丈夫? 一応回復魔法をかけさせてもらったけど……どこか痛みや何かあるかい?」
不審者を見るような目で彼女は俺を見る。俺の隣にはメルトとの事情を説明し、ようやく冷静になったカベルネが座って見ていたが、少し体が辛そうだ。
「君を入れて五人。残り四人の亡骸はその場で弔わせてもらった……。一応ギルドパスは回収してあるよ」
俺はそう言って四人のギルドパスを渡すと、メルトは何かを思い出し泣き出してしまう。余程、仲が良かったのだろう。男が三人に女性が二人のパーティだったと思われる。一人はイケメン風の男で、一人は優しいお兄さん的な感じ、もう一人はとっつきにくいが実は面倒見が良さそうな感じの奴で、女性の方は……頭が無かった。何かに食べられたような感じで、首から下しか残っていなかったのだ。これは酷いと思った。多分、その子が犠牲になってメルトが逃げるように言われたのではないか。そして、魔族は配下の魔物を使って追いかけさせ、メルトは逃げる途中で戦うのだが、その魔物に剣を砕かれてしまったのではないかと思う。そのあとは俺が見た通りじゃないかな。
「カベルネ、俺達は部屋を出よう。暫くは一人にさせてあげた方が良いかも知れない」
「は、はい……」
俺達は部屋を出て、ダイニングの椅子に座る。カベルネは俺が返ってくるまで何度もあの雑誌を見ていたのだろう。かなりボロボロになっていた。
「カベルネ、あの雑誌……本は楽しい? 文字……分かんないでしょ?」
「は、はい……分かりませんが……出ている人は皆美しく、服も素敵な物を着ております。そして、町が少しだけ描かれているのでタイチさんが言うように魔物はいないのだと言う事が分かります。あの書物に描かれている場所は、タイチさんがいた世界の絵ですよね?」
多分、原宿か青山ら辺の場所だろうと思う。
「うん、まぁそうだね」
「沢山の人が描かれていましたが……本当にあんなに人が沢山? そして、石で作られたような建物が一杯ありました」
「あれはビルって言う建物だよ。コンクリートというもので作られている。造り方はちょっと調べないと分からないけど、カベルネが言う様に石で作られていると思ってくれて構わないよ。そして、あそこの場所だけでも何百人という人が毎日行き来しているよ」
「な、何百人……ま、まるで王都のような……感じですか?」
「行った事ないから何とも言えないけどね。そうかもしれないね」
カベルネの眼は完全に夢見る少女の眼をしている。あそこは人によっては地獄だという人だっているし、魔境だって言う人だっているって言うのに……。
「さて、俺達は食事の準備をしよう。と言っても、カベルネはそこで座っておくこと! 分かったかい?」
「て、手伝えますよ! 大丈夫です!」
「顔色が良くない。カベルネに倒れられたら俺が困るんだ。だから言う事を聞きなさい! 命令です」
「は、はい……」
★★★★★★
倒れられたら困る……この言葉は正直言うと、嬉しい。どういう意味で言ったかは分からないけれど、私のことを心配してくれているというのだけは分かる。タイチさんは本当に優しい。
最初、あの女性を連れて帰って来たとき私は混乱した。だって、タイチさんが背負って帰って来るのだもん。どこかで女性を捉まえて何かしてきたのかと思ってしまった。常識で考えたらリードとタイチさんは違うのに。
まぁ、多分リードのバカもそんな事をするはずは無いだろうけれど……。
混乱した私はタイチさんに捨てられるかと思ってしまい、泣き出し、叩いてしまった。今思うと恥ずかしい。
聞いてみれば、森の方で魔族に襲われていたところを助けたらしい。魔族って聞いて驚いたけれど、タイチさんの能力を考えたり経験を考えたりしたら、多分圧勝したのではないだろうかと思ってしまう。タイチさんと戦った魔族が憐れに思うほどに……。
だが、食事の時にその話を聞くと、何で自分が側にいなかったのかと後悔するほど危険な戦い方をしていたのだった。こんな時に私は一体何をしているのだろう……。パートナーなんて言っているくせに全く役立たずじゃないか……。
★★★★★★
カベルネに話したことを後悔しながら俺は食事を持ってメルトに食事を運んで行く。
「落ち着いた?」
「はい……助けて頂きありがとうございます……」
絶望的な顔をしている。どのように死んでいたかというのは説明しない方が良いだろう。今の状態だと酷過ぎる。
「ち、チラッとは……見えましたが……皆は……」
「聞かない方が良い。君のためだと思うよ……」
そこまで言うと、再びメルトは泣き出してしまう。俺は食事だけ置いて部屋から出て行く。これは暫く話をできるって言う状態では無いと思い、椅子に座る。
「どう……でした?」
「落ち込んでたよ。そりゃそうだよね。仕方ない話だ」
「そ、そう……ですよね……」
先ほどの話を思い出しているのか、もしかしたら俺がそうなったらと想像しているのか……俺は首を横に振って、考える事を止める。新しいファッション誌を召喚してテーブルの上に置いて風呂へ入る事にしたのだった。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:26
力:42
器用:50
体力:56
魔力:50
スキルポイント:221
【スキル】
アイテムクリエイト(物を生み出す力)
異世界言語
異世界文字
射撃:1
気配察知:1
剣技:1
魔法感知
回復魔法:レティオ(小)
浄化魔法:ウラア
飲料魔法:ウォータ
灯り魔法:ライト
着火魔法:テンカ
格闘:2
★――――――★
名前:カベルネ
レベル:19
力:30
器用:31
体力:31
魔力:55+50
信頼度:95
スキルポイント:180
【スキル】
火魔法:ファイア(小)
回復魔法:レティオ(小)
魔法感知
射撃:1
★――――――★




