35話 まともな勝負では勝てません
その後、俺達は町の外で魔物狩りをする。新しいロッドの威力は格段に上がっており、魔物はあっという間に丸焦げになる。
「これが……私の魔法……」
カベルネは自分の出した魔法の威力に驚き戸惑いを見せていた。自分の実力も上がっているが、ロッドの力が大きいと言う事。始めの頃は火球だったのが、大火球が出るのだ。しかも魔法レベルが小なのに。
「ロッドの力が凄いって事か……。まぁ、カベルネの実力も上がってるし、もっと強い火魔法を覚えられるんじゃないか?」
「そ、そうかも知れませんね……」
「頑張ろうな」
「はい!」
と言うのが昨日の話。だが、今日は一人で狩りをする羽目になっている。理由は簡単だ。カベルネに女の子の日が来てしまったからだ。なのでカベルネは動けなくなって暫くは一人で頑張らないといけなくなってしまったのだった。
本来であればそれを抑える薬が売っているそうなのだが、道具屋が在庫を切らしているらしく、買う事ができなかった。入荷するのに数日はかかるとの話で、俺は生理用品を召喚して彼女に渡し、一人で稼ぎに出るという羽目になったのだった。
だが、一人の方が動きやすい。考えるのは自分の事だけで良いからだ。カベルネがいれば戦術に幅が広がるだろうが、武器に制限をかける必要がある。俺の武器に頼られても困るし、いつか独立して冒険をしたいと言った日にそれが出来るようにしておかなければならない。
ずっと一緒にいてくれると言うなら……それは嬉しいが、彼女にはリードがいるしね。
そんな事を思いながら俺はライフルのスコープを覗き込み獲物を狙う。そして幾度となく魔物を仕留め、側に寄っていくと物凄い勢いで何かが動いている気配がして俺は振り返る。
「何だ? この感じは魔物だが……何かを追いかけているのか?」
気配がする方へ行ってみると、ライオンの様な化け物が女性を追い掛けているのが見える。物凄く鋭い牙であんなのに噛まれたら大変だ。
「厄介事じゃんか……勘弁してくれよ……」
そう呟き助けようかどうしようか迷うのだが、女性は転んでしまい魔物は女性に追いついてしまう。そして女性に飛び付こうとしていたのだが、俺は見過ごす訳にもいかないので魔物の蟀谷辺りに弾丸をぶち込み動きを止めた。
魔物なので生きている可能性が有る。歩きながらデザートイーグルで数発撃ち込み頭をふっ飛ばす。
「君……大丈夫か? 怪我は無いか?」
「あ、あなたは……」
「冒険者だよ。君は?」
「わ、私も……ぼ、冒険者……」
「武器が無いね。その様子だと……剣士みたいだけど」
「あ、あぁ……け、剣が折れてしまって……」
「あ~……そう言う事か……立てる?」
「あ、うん……」
俺は手を差し伸べると、彼女は俺の手に掴まり体を起こす。
「俺はタイチ。君は?」
「め、メルト……」
「メルトさんね。一人? 仲間は?」
「多分……あっちに……」
彼女は自分が走ってきた方角を指差し、悲しい顔をする。
「あの魔物は? ここでは初めて見るけど……」
「わ、私達は……ま、魔族と遭遇してしまって……」
魔族……洞窟にいたアホ共か……。
「魔族が洞窟から出てきていたと言う事?」
「そ、それは分からない……」
「ふ~ん。これから君はどうするの?」
「な、仲間の元に……戻らなきゃ」
「武器が無いのに?」
「あ……」
絶望に満ちた顔をするメルト。全く……仕方ない……。
「俺も一緒に付いて行ってあげるよ。これを使うと良い」
そう言って俺は袋の中からロングソードを取り出しメルトに渡す。
「あ、ありがとう」
「お礼は仲間の状態を確認してからだろ?」
俺の言葉にメルトは悲しい顔をする。そして彼女が指差した先へと俺は歩き出した。
暫く歩くと、戦いが行われたのだと思われる後に辿り着く。
「こりゃ……酷いね……。うわぁ……彼らが君の仲間だった人達か?」
「ロ、ロンド……ジローラ……う、嘘でしょ……」
メルトは膝から崩れ落ち泣き始める。
「メルトさん、残念だが……泣いている暇はなさそうだよ? お客さんはまだ残っているようだ」
「……え?」
俺が見つめる先に薄ら笑いしている人間と言えない姿をした何かが立っている。それは洞窟で倒した奴らに似ており、直ぐに魔族だと俺は理解する。
「ま、魔族だ……」
メルトが小さく呟き、顔を青くする。すでに勝てないことを悟っているため、そういう風になってしまうのだろう……やれやれ。
「じゃあ、取り敢えずさ……仇を討ってあげないとね。ここからは俺が戦う。メルトさんは下がって……」
「む、無理よ……あ、あなただけでも逃げて……」
「そう言ってもね……アレを倒せるだけの力を持っているんでね。それに俺の生活に必要なコアを持っているんだ……宿屋で待っている子猫に美味しい食べ物を食べさせてあげないといけないからね」
俺が剣を抜くと、魔族は突如魔法を唱えてくる。考えてみれば、まともに戦った事が無い。本当に勝てるのかどうかは別の話だというの思い出す。
【エアハンマ】
突風が俺達に襲い掛かり、俺は盾を前に出して突風を防ぐ。すると、強い衝撃が盾に襲い掛かり俺は体勢を崩してしまう。
「おわっ!」
崩れた体勢から一瞬だけ見えたのは魔族が目の前にいたと言う事。物凄い勢いで俺の前にやって来たと言う訳だ。そして魔族は俺の腹を殴りつけ俺はくの字に体を曲げる。
「ぐはっ!!」
込み上げてくる胃液。そして俺は地面に膝から崩れ落ちる。
「誰が……倒せる力を持っているって? 人間よ……」
魔族は直ぐに俺の顔面に蹴りを入れて俺は横にふっ飛ばされ草叢に突っ込む。
「粋がるなよ……人間が! まずは先程殺し損ねたそこの女から始末してやる。そこで寝て待っておれ!」
魔族はそう言ってメルトの方へと歩き始めると、メルトは恐怖で後退る。すると、魔族の足元に何かが転がって行く。
「……何言ってんのか聞こえねーんだよ……ばーか!」
魔族が振り返り俺の方を向くと、突如激しい光と音が広がる。そう、俺は閃光音響爆弾のピンを抜いて投げたのだった。
「ぐ、ぐゎ!!」
魔族は音と光に怯え震えるように蹲る。
「ゲホッゲホ……全く……痛てーじゃねーか……糞野郎……お返しにこれをくれてやるよ」
俺が召喚したのはM32マルチショット・グレネードランチャー。それを数発ぶち込んでやり、魔族の体は炸裂する。
コアがどうなろうとも知った事ではない。まずはこの馬鹿野郎をぶっ殺さなくては気が済まなかった。
「ガハッ……【レティオ】【レティオ】【レティオ】」
自分の体に回復魔法をかけ、治療をする。鎖帷子を装備していなくては多分死んでいただろう。やはり装備を充実させることは間違っていない。RPGをやっていて本当に良かったと思いながら立ち上がる。
メルトは閃光音響爆弾でノックアウトされており、暫く気が付くことは無い。だが、怪我をしていたら嫌だったので回復魔法をかけ、魔族の死骸を回収してメルトの仲間を弔ってから町へと戻る事にするのだった。




