33話 叫ぶ女の子
遂に私達は次の町であるベルトナットの町へと辿り着く。直ぐにギルドへ向かい換金を行うと、その魔物の量と魔族のコアとかでギルドの人達は驚き、ちょっとした騒ぎになってしまった。
平穏な暮らしを求めているタイチさんは、顔を引き攣らせておりガルボを手にして直ぐにギルドを出ていき防具屋へと向かう。多分、自分が装備している防具がボロボロだから新しいのを購入するつもりなのだろう。
このベルトナットの町はかなり大きい。多分、今まで見てきた……と言っても、ブルクスとリンダールの町しか見たことがないが、その二つに比べても倍近くの大きさである。
「いらっしゃいませ……」
防具屋も結構大きい建物で、色々な防具が売られており目移りをしてしまう。
「軽くて丈夫なローブって有ります?」
え? タイチさんはローブを着るの? まさかの言葉に私は耳を疑った。
「彼女のサイズに合うやつを探してるんだけど……」
「ローブね……そしたら……ミスリルの糸を混ぜて編んだローブがあるが……値段は張るよ」
「幾らになります?」
「6万5,000ガルボだ」
「じゃあ、それを貰える?」
み、ミスリルって高級素材の一つではない! そ、そんなのを私が……。
「た、タイチさん……そ、そんな……」
「そのローブは随分頑張ったよ。だけど、これから先の魔物は魔法も唱えてくることが解った。じゃあ、俺達もそれにあわせて装備を固める必要があるって事。これは命令だ、装備しなさい」
「め、命令……?」
「雇い主の命令。ちゃんと装備を固めなさい!」
「わ、分かりました……」
言い終わるとタイチさんはガルボを支払い素敵なローブが私に手渡される。まさかミスリル糸を使用されたローブを着ることができるなんて考えたことも無かった。
「あと、鎖帷子と……鋼の篭手を頂戴」
「両方合わせて3,150ガルボだ」
「コレの上から着るのは可能? 鎖帷子」
「あぁ、問題ない」
色々確認してタイチさんはガルボを支払い、周りを見渡し何か無いかと探しているようだった。
「盾だな……軽いやつが欲しい」
「この鱗で作られた盾なんかどうだ?」
「まぁ、それなりの軽さだね……背中に背負うこともできるのか……」
「邪魔にならないようになってるよ」
「じゃあ、それも貰える?」
「700ガルボになるよ」
そう言われ、タイチさんはガルボを支払い盾を受け取ると、本当に冒険者らしく格好良い! 素敵です! お似合いです!
「次は服屋だな……ここ等に服屋って有ります?」
「あるよ、三軒隣にある」
タイチさんは一言お礼を言って建物を出て行く。物凄く旅慣れている感じがして大人の冒険者って感じだ。本当に私と同じ新人冒険者だったのか疑問に感じる。
「ここか? 服屋って……」
そう言って中に入ると、新しい服などが置かれているが殆ど女性物に近い気がする。タイチさんが着るような服はここには売っていなさそうだ。
周りを見渡して、何かを理解し店を出て行く。何も買わないのは値段と相談しているという事だろうか……。
「さぁ、宿屋に泊まろうか。暫くはこの町でユックリして今後について考えようか」
「は、はい」
今後について考えるとはどういう事なのだろうか。それは、この町に腰を据えて生活をするという事……なの?
宿屋は意外と値が張り、一泊500ガルボもする宿だった。だが、確かに500ガルボなんて、ここら辺では直ぐに手に入れる事は簡単だ。部屋に案内されると、まさかの同じ部屋……ではなかった……2DKの部屋で、トイレお風呂は別に付いているという豪華さだった。
何が凄いのかというと、お風呂が完備されているのが凄い! 水は最新のポンプ式。かなり豪華な宿屋だ。
「あれだけガルボを取っているのに……」
え? タイチさんは不満なの? 念願のお風呂付きですよ?
「これはナンセンスだな……。自動でできるようにしてくれないと……まぁ、それを望むのは自分の家を手に入れてからか……。仕方無い、風呂に入れるだけ良しとしとくか」
風呂場に対して悪態を吐く。全く信じられない話だ……タイチさんは住んでいた世界でどんな生活をしていたのだろうか……。
「やっぱキッチンは竈式かよ……。まぁ、ガスコンロは無いのを知っているし……召喚するしかないか……。カベルネ」
「は、はい!」
「食材を買いに行こう! 今日はお好み焼きを食べる事にしたから」
「お、オコノミヤキ?」
「美味しい食べ物だよ。ほら、買いに行こう」
タイチさんが作ってくれる物は今までハズレはない。今回も美味しい物を作ってくれるのは間違いないので私は思わず笑みをこぼしてしまう。
私達は外に出て買い物を始める。結婚したらこんな感じで一緒に買い物へ行くのかも知れないと思うと……ヤバイ! 恥ずかしくなっちゃう! 皆は私達の事をどの様に見えているのだろう……。まさか恋人同士とか……きゃ♥
★★★★★★
再びカベルネが身悶えている。何を想像しているのか判らないが、取り敢えず手に持っているトマトは弁償するしかないだろう。握りしめて指の跡がついてしまっているのだから……。
俺は謝りながらガルボを支払い、カベルネと共に宿屋へと帰る。明日は武器屋を見に行き、カベルネの武器を新しくしてあげないといけないな。
そんな事を思いながら俺はキッチン……というか、厨房っぽい場所で微塵切りを始めると、カベルネが手伝うと言ってくれる。
「じゃあ、コレの微塵切りをお願いできるかい?」
「み、ミジンギリ……?」
「こんな風に切るんだよ……」
俺が見本を見せ、カベルネは少し緊張した目でやり始める。料理は多少できると言っていたが、そんなに出来るというか、殆ど出来ないに近いレベルだというのがわかった。
その間に小麦粉をだし汁でとかし買った肉を切り始める。天カスなどは召喚して準備をする。
「こ、これで……大丈夫ですか?」
「……う、うん。大丈夫……だよ」
かなり雑に切られているのだが、まぁ問題ないだろう。
ボールに入れて混ぜ合わせ鉄板の上で焼き始める。カベルネは初めての物だからマジマジと見つめ、その間に俺はソースを作り始める。
裏返す頃になり、俺はお好み焼きをひっくり返すとカベルネは「凄ーい!!」と大喜び。誰でもできるよと思いつつも俺はそこに作ったソースを刷毛で塗る。そして青ノリを振りかけるとお好み焼きはほぼ完成するのであった。
皿に載っけると、テーブルに持っていき鰹節をふりかける。すると、「い、生きてるんですか!」とカベルネは声を上げて驚く。
「これは湯気で鰹節が動いているように見えるんだよ」
「な、なるほど……い、生きているようです……」
「ほら、熱いうちに食べちゃおうぜ」
そう言ってお好み焼きを切り分け俺達は食べ始めると、カベルネは嬉しそうな表情でペロリと食べてしまう。
「美味しかったです……。お腹いっぱいですよ~」
満足そうな顔してお腹を擦っている。俺は食器などを片付け始めると、カベルネは立ち上がり慌てて手伝おうとし始める。
「カベルネは風呂に入ってきなよ。あ、これを使って体を洗うといいよ。こっちが髪を洗うやつで、こっちが体ね……で、こっちが髪を洗い終わったあとに付けて洗い流すやつ」
シャンプーとボディソープ、リンスをカベルネに渡すと、申し訳無さそうに頷き風呂場へと向かう。体を洗うボディタオルを渡すのを忘れていたため、風呂場へ行くと、カベルネは上衣を脱ぎかけており、固まる。
「あ、ごめんね。これで体を擦ってね」
そう言って叫ばれる前に扉を閉めてその場から退散すると、叫び声が木霊するのだった。




