30話 油断大敵何が起きても可笑しくはない
リンダールの町を出て数日が過ぎ、私達は未だ次の町に辿り着いてはいなかった。というのは、私達は洞窟を発見し、そこに入って調査をしているためだ。
誰かがここを調査しているのであれば問題なく先に行くのだろうと思うのだが、誰かが入ったような形跡は見られず、私が再び我が儘を言ってしまった。タイチさんは少し困った顔をして「危険と感じたら……直ぐに出るよ」と言ってくれて、私達は洞窟の中へと入って行った。
正直に言うと、旅を終わらせたくなかった……。
タイチさんはどう考えているのか分からないが、私の我が儘に付き合ってくれている。これはパートナーだからだろうか。少し聞いてみたいけれど……怖くて聞けない。
★★★★★★
俺は彼女に甘すぎる。それは理解しているが、それが駄目だとは一つも思わない。だが、これは危険な香りがする冒険であることには変わりはない。今後の事を考えておかなければならないだろう。
洞窟に入って既に二日。食料は召喚能力で何とかなっているし、飲み水も魔法で何とかなっている。だが、そういった問題ではない。ここの洞窟は長過ぎる。何処まで続いているのか、終わりは有るのか……そう言った事を考える時間が続くほどの長さだと俺は思う。数人の仲間と入って喧嘩になる可能性はあるだろう。それだけのカリスマを持った人なら話は別だと思うが。たまにゲームなどやっていて思ったりするんだよね、恐怖で喧嘩とかしないのかって。俺達は食料や水などに問題ないから喧嘩など起きることは無いかも知れないけれど……。
しかし、年頃の男女が何もしないで数日間二人っきりというのは生殺しに近いわけである。だが、彼女は15歳という年齢。地球で考えたら中学3年生か高校1年生のどちらかに値するわけである。中学生でも、高校生でも犯罪は犯罪。俺は18歳。しかも今年19歳になり……うん? 考えてみたら暦が分からない。調べても見ていない。一年が何年なのかもさっぱり分からない。後でカベルネに確認するしかあるまい。
そんなこと考えながら俺は見知らぬ魔物を剣で斬り裂き、カベルネは魔法を唱え攻撃をしてくれたりして先へと進んでいくのだった。
暫く進んでいくと、再び魔物らしき相手と戦う事になるのだが、この魔物に限っては今まで異なっていた。それはゴブリンのような姿をしているのだが、少し異なっており、一瞬俺達は今さらゴブリン? と勘違いする。それが油断の元だというのだが、いまだ経験したことのない事だったのでそうなってしまうのは当たり前だろう。
そのゴブリンに似た魔物は突如魔法を唱えてくる。
『【エアカッター】』
まき起こる風が俺達に襲い掛かり、腕で顔を隠すようにすると、何かが俺達の体等を切り裂いたかのような痛みが走る。だが、皮の鎧を身に纏っているため腕などを傷つけられただけで済む。
「な、なんだと! 魔物が魔法を唱えたというのか!」
俺の腕とかはまるで刃物で斬られたかのような傷が出来上がっていて血が流れていた。俺は直ぐにカベルネを確認すると、ローブで身を隠したらしく、ローブが多少切られたりしている程度で済んでいた。
「た、タイチさん、私は大丈夫です! 本で読んだことがあります……。魔物も魔法を使うようなことを……ですが、絵空事だと思ってました……」
「無事ならそれでいい! それ以上は喋らず身を隠せ!」
俺は剣を手放しデザートイーグルを召喚して両手で構え魔物に向かって射撃する。やはり魔物はその威力や速さ、その武器に対して対応できていないため一瞬で駆逐される。
「タイチさん、大丈夫ですか……【レティオ】」
俺が魔物を倒したのを確認してカベルネが側にやって来る。そして直ぐに回復魔法で俺の傷を癒やしてくれた。
「ありがとう……助かったよ」
「まさか……本当に魔物が魔法を唱えてくるとは……」
「これから先、こういった魔物が増えてくる可能性があるって事か……。そう言えばゲームでも同じような事があるな……」
「げ、ゲームって……タイチさんが仰っていた……あの板の奴ですか?」
「まぁ……間違ってはいないけど、正解でもない。ゲームは沢山種類があって、前に言ったので出来たりするんだ。だけどね、他にもゲームは有って……まぁ、これは後で説明するよ」
よく見ると所々カベルネ怪我をしているように見えるのだが、本人は気にしていないかも知れない俺はカベルネに回復魔法を唱え、傷を癒やし、今着ているローブはそのまま着られるのか確認すると、問題なく使用できそうだった。
「新しい町に着いたら……カベルネの服などを見ておかなきゃな……それに新しいローブも売っていたら、それも買わないと……」
「わ、私よりも前衛で戦っているタイチさんの鎧を買い直した方が……」
「そりゃもちろんそうだよ。だけど、カベルネの服を見ると、所々解れが見られたりしている。女の子なんだからそういった所は気にしなきゃダメと前にも言ったでしょ?」
「で、ですが……わ、分かりました……」
「うん。素直で宜しい」
俺は手をカベルネの頭に置き、ポンポンとすると、カベルネは少しくすぐったそうな表情をするのだった。
だが、この先は危険か……? 先に行くか戻るか……悩むところだ。俺は魔物が現れたその奥を見つめ、この先に対する対処法を考えるのであった。




