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召喚チート能力者の異世界ライフ  作者: マルチなロビー
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29話 町を出た二人

 やはり俺はアホなのだろう。だが、先を想像できてしまうため、自分の満足感を得るためにはこれしか方法が無かった……と思う。


★★★★★★


 私達はリンダールの町で、宿屋やギルドすら立ち寄る事もせず新しい町へ向かう。何故ならタイチさんが直ぐに出発しようと言ったからだ。多分、どこでギルバートさん一家と出会うか分からないからだと私は思う。だが、町を出て暫くするとタイチさんが落ち込んでいる様に見える。一体何故なのだろうか。もしかしたらギルバートさんに渡した物は、とてつもなく大事な物だったのだろうか……。


 「あ、カベルネ……ごめんね。宿屋とか何処にも寄らせることできずに……どっかで食事とかしたかったでしょ?」


 「い、いえ……大丈夫ですよ……」


 タイチさんと一緒ならとは言えない情けない私。


 「あともう一つ……謝らないといけない事があってさ……」


 「え?」


 「ガルボ……魔族のコアとかで稼いだガルボ……あげちゃった。全額……」


 全額? あげた? どういう事なのか理解できない……。タイチさんは何を言っているのだろ。


 「怒ってるよね……大変苦労したもんね……。だけど、ギルバートさんたちが生活するには必要な事だったんだよ……」


 あげたとは、譲ったとの事……。ギルバートさんに? ガルボを? 何で?


 「ど、どういう事……です?」


 「俺達は冒険者、彼は商人だ。仕事が異なる事は理解してくれてるよね? 彼は新しい町へ来たんだ……家族と共に。それも戦争に追われて……。したがって、最低限の物しか持ってきていない。あのままだと野宿をせざるを得ないだろう。そして、仕事は無い。だって商人だから売るものが無けりゃ稼ぐ事ができないんだからね」


 今ようやく理解が出来た。全額渡したという意味が……。一体いつからその事を考えていたのだろう。別れ間際に考えたとは到底思えない。だって、タイチさんは非協力的だったのだから。


 「本当にごめんなさい!」


 両手を合わせて私に謝るのだが、それは人助け。私がタイチさんに言った台詞だ。彼は私の時のようにギルバートさんを救ったのだ。自分でできる最大限の事を……犠牲は私との生活。だけれど、私はこの旅を続けたいと思っていたし、タイチさんと一緒に居たいと思っていたから実質的に損をしたのはタイチさんだけ……。私の我が儘が無ければ違う選択を選んでいた可能性もあったのだ。


 「か、構いませんよ……。し、仕方無い事ですから……」


 私は呆れたように演技をする。する必要は全く無いのだが、何故かそうしてしまう。


 「いやいや……本当に申し訳ないね。今晩、おいしい料理を作るよう、頑張るから!」


 「し、仕方無いですねぇ〜それで勘弁してあげますよ」


 「ありがたや〜ありがたや〜……」


 私を拝むようにタイチさんは言う。だけれど、彼は悪くない。


 本当にごめんなさい……そして、ありがとうございます……。


 私は聞こえない程小さい声で呟くと、タイチさんは振り返り優しい笑みを見せてくれた。聞こえていないはずなのに……。


★★★★★★


 この子は頭が良い。そして優し過ぎる。多分、俺がお金を渡さなくては明日の朝にはあの家族はもう一つの選択をしたかもしれない。もしくはあれだけでは足りないからと言って……。それを知ったら彼女はどういう反応をするのか俺には想像ができない。


 彼女の頭の中ではあの家族はハッピーエンドを迎えたという可能性に行き着いているはずである。純粋な子ほどそういった答えに辿り着くものだ。


 昔読んだ漫画では、ヒーローが幾ら頑張っても駄目なことがある。だからこそ、俺は救わない事を選ぼうとしたのだ。俺はヒーローになりたいわけでもないし、ヒーローでは無い。ましてや神でも仏でもない。ただの鈴木太一と言う、社会人になったばかりの人間だ。


 ひょんな事からこの世界、レグリダソーダの世界に来て生きていかなきゃいけなくなっただけ……。特別な人間では無いのだ。


 そんな事を考えながら道を歩いていると、次第に空の日は落ちて来る。町を出るのも昼を過ぎていたし仕方はない事だ。俺達は少し外れた場所にテントを張り、食事の準備を始める。だが、カベルネは俺に見えない場所で何かをしており手伝ってくれない。


 確かにおいしい料理をと言ったが、何を作れば良いのかわからず俺は頭を悩ませる。


 「餃子にしよう」


 某アイドルがCMしていた奴を思い出し召喚する。出ないかな? って思ったのだが、出てくれた事にホッとしフライパンに並べ、水を入れて蓋を閉める。


 この力があれば食堂とかやりゃ良いと一瞬は考えたが、いつ使えなくなったらと考えると腰が引けたのだ。だから剣の練習もしたし、弓の練習もした。あの子は言った。制限はあとから考えると……何を制限かけられるか判らないのでなるべくは自分の力を頼らないといけない。


 だから料理も覚える必要もある。いつ一人になるのか……分からないのだから。


★★★★★★


 食事はタイチさんに任せっきりなのは駄目だと頭では理解できてるし、横に立ち一緒に作ったりしたい。だけれど、私も魔法使いの端くれ、生活魔法の一つくらいは使えないといけない。毎回、タイチさんが行ってくれているのを見ているのだ! 魔力の流れは把握している。水くらいは出せるようになりたい!


 だけど全く水が出てこないのは何故だろうか魔法の名前はウォータ……。なのに全く出て来ない。センスが無いのだろうか……。


 そんな事を考えていると、夕食が出来たとタイチさんに言われ私はギョウザという美味しい物を食べさせて貰うのだった。


★★★★★★


 やはり疲れが酷く、食事を取り終わったあと俺は睡魔に襲われる。さっさと有刺鉄線バリケードを張りテントに潜り込むと、既にカベルネは就寝していた。そりゃリヤカーを頑張って引っ張っていたんだ当たり前だな。


 毛布をしっかりと彼女に掛けて俺も眠りにつくことにするのだった。

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