23話 翌日の二人
翌朝、召喚していたアラームが鳴り俺は目を覚ます。
「もう7時か……」
タイマーは朝7時にセットしている。このくらいの時間なら、街道は誰も通らないだろうと思っての時間だ。俺の隣ではカベルネがスヤスヤと寝息をたてて眠っている。彼女を起こさないように俺は外に出て、有刺鉄線付きバリケードの召喚とラジカセの召喚を解除する。そして、どうせ作ってもらえないと分かっているので俺が朝食を作り始める。
★★★★★★
私が目を覚ますと隣にいたはずのタイチさんの姿が見えない。しかも外から美味しそうな臭いがする。まさかタイチさんが朝食を作っているのではないだろうか……。
ファスナーとか言うのを開けて外を見てみると、やはりタイチさんが朝食を作っていた。私は旅に付いて来ているのに全く何もしていないで、ただ呑気に食事をして寝ているだけ……全く役に立っていない。このままでは私は置いて行かれてしまう可能性がある。それはどうしても避けなければいけない事……。
慌てて外に出て私はタイチさんに謝ると、タイチさんはいつものように優しく微笑みかけてくれる。
「おはよう。良く眠れたようだね……。そこに水を用意してあるから顔を洗うと良いよ。目が覚めるよ。それに、その可愛い寝癖も……ね?」
ハッ!! また恥ずかしい所を見せてしまった! 慌てて言われた場所に行くと本当に水が用意されており、私は顔を洗い寝癖を直す。
「タオルを渡すの忘れてた。これを使いな……召喚した奴だけど」
気が利き過ぎる。大人だ……。リードのアホとは大違いだ。何で私はあいつが好きだったのか分からない。
寝癖を直してタイチさんのところへ戻ると、既に食事が用意されている。
「さ、食べようか。あと数時間もしたら冒険者がここら辺を通るかもしれない。それまでには出発をしよう」
「は、はい!」
出された食事はゴハン? とか言うのと、ミソシル? とか言うスープだ。正直、美味し過ぎる……負けた気分になる。洞窟の時も思ったけれどタイチさんは冒険者をやるよりも、お城とかでコックをやった方が良いのではないかと思う。私は何度かそれを言おうと思ったが、言葉にできなかった。この楽しい時間が終わってしまうのが怖いからだ。
私はこの人に特別な感情を抱いている。だけれどそれを言葉にするのは烏滸がましい。一緒に居られるだけでも贅沢なのだ……それに、それを言ったところで私はタイチさんに相手にされないだろう……。
「こ、これ……美味しいです……」
「本当? 口に合って良かったよ。俺のいた場所では主食だったんだよ」
「へ、へ~……」
「農業が盛んな国でね……」
「だ、だけど……ま、魔法のような道具が……」
「魔法じゃないよ、科学……言葉で解明されている物さ」
自分のいたという国を思い出しているときのタイチさんの眼はどこか寂しそうだ。いつか帰りたいと思っているのだろうか……出来たら私も連れて行ってもらいたい。魔法のような国へ……。
食事を終えると、タイチさんは全体の召喚を解除する。あっという間にテントなどが消えてしまい、本当に私は何もやる事が出来ない。足手まといとはこういう事を言うのだろう。
「じゃあ、次の町を目指そうか!」
「は、はい!」
私達は再び歩き始めると、タイチさんが言う様に冒険者と思われる人たち六人が前から歩いてきた。
「あ、おはようございます。ちょっとお尋ねしたいんですけど……宜しいですか?」
タイチさんが冒険者に話しかけた。何を聞きたいのだろう……。
「ん? あ、あぁ……か、構わないが……」
「ありがとうございます。俺達この先に有るブルクスの町から来たんですけど……次の町までどの位あります?」
「おぉ、この先に有るのはブルクスの町というのか。教えてくれて感謝する。俺達はハーゲンという町からやって来たんだ。大体一日歩いたら到着するよ」
「ありがとうございます。ブルクスも一日歩いたら到着する距離ですよ。まぁ俺達みたいな者の足ですけどね」
「いや、それでも助かるよ。みんな! 次の町までもうちょっとだ! 頑張ろう。それじゃあ、良い冒険を……」
凄い……全く知らない冒険者なのに……。タイチさんは次の町の名前と距離を簡単に調べてしまった……。これがリードだったら一体どうなっていたのだろう。いや、リードなんかと比べたらタイチさんに失礼だ。こんな凄い人と比べられる人はいない。
「あは、次の町までの距離が分かっちゃったね! ラッキーだ。あと一日と言う事は……夜には辿り着けるかも知れないね」
「は、はい! ですが、タイチさんは凄いですね」
「ん? どこが?」
「だってあんな屈強な冒険者に話しかける事が出来るんですもん……」
「屈強? 向こうだって俺達の事をそう思っているよ。きっと」
「え?」
「だって、俺達は二人だよ? 彼らは六人だ。考えてみなよ……相手は六人で冒険をしなきゃ生活ができないんだよ? 俺達は二人で冒険して生活ができる。しかも、カベルネみたいな可愛い女の子とヒョロヒョロの男が二人っきりで冒険をしているんだ。考え方によっては相手の方が俺達を恐れているんだよ」
「た、タイチさんはヒョロヒョロではありませんし私は可愛くありませんよ!」
タイチさんは言葉が上手だ。こうやって私を喜ばしてくれる。本気にしてしまうじゃない……もう!
「いやいや、カベルネは可愛いよ。寝癖を付けているときは、もっと可愛い」
そう言ってタイチさんは私を揶揄う。本当に意地悪な人だ。だけれど面白い。
★★★★★★
必要な情報は手に入った。あと一日程歩けば次の町があるのか……。
「じゃあ、先を急ごうか」
「はい!」
カベルネは元気よく返事をしてくれる。本当に良い子だ。
俺達は暫く歩き続ける。すると、魔物の気配を感じた。
「カベルネ……魔物だ」
「え?」
俺は銃を手に取り、気配がする方へ行く。カベルネも右手に銃を、左手にはロッドを持って俺の後ろをついてくる。
「アレか? バウンドウルフ……とは違うみたいだが……カベルネ、知ってる?」
「い、いえ……ギルドでは見たことありません……」
「まぁいいや、人を襲う前に殺してしまおう」
狙いを定め、トリガーを引く。乾いた音が小さく鳴り響く。魔物は横になって倒れており、俺達は近寄る。
「こいつは何ものだ? 一体……」
「まぁ……次の町へ行けば何か分かるかもしれませんね……向こうのギルドで教えてくれるかも知れませんよ」
「そうだな。俺達はまだ新米の冒険者だから知らない事ばかりなのは当たり前か……」
「これから一杯勉強していきましょう!」
「あぁ!」
だけれど、カベルネ……。
君の方が俺よりもこの世界を知っているよ。
絶対に……。




