21話 初めてのテント
その日のうちに俺達は町を出て行く。別に今すぐ旅立たずに、明日でも構わないのだが……カベルネが直ぐに旅立とうと、言って来た。
「善は急げと言います。一泊してしまうと、ズルズル残っちゃうかもしれません! 直ぐに町を出て、新しい町へ行きましょう!」
カベルネは楽しそうに言う。まぁ、別に構わないか……彼女がそうやって楽しんでいるなら……。何だか彼女中心の生活になっている気がするが……まぁ、いいや。
俺達は、町の東側から出て街道を歩いていると、数人の冒険者達とすれ違ったりする。
「本当の冒険が始まるんですね……」
感動するような声でカベルネが言うのだが、俺は少しだけ呆れてしまう。
「いやいや……カベルネは既に冒険が始まってるでしょ……」
「違いますよ、そうではありません! タイチさんには分からない話ですぅ~」
嬉しそうに、楽しそうにそう言って前を歩いている。一体どういう意味なのか……まぁ別に良いか。
夜になり、辺りは真っ暗になる。この後の事をカベルネはどう考えているのか全く分からない。だって、食料も買わずに町を出てきたのだから……何かしら、カベルネには考えがあるのだろうと思っていた。
「カベルネ、この後のことはどうするか考えているのか?」
取り敢えず聞くだけ聞いてみようと思い、質問をしてみた。
「こ、この後……ですか?」
カベルネは顔を赤くして俺を見つめる。何を考えているのだろうか……この子は。
「飯とか……宿とかだよ……」
呆れながら俺は言う。
「あ、あ~……そ、そうですよね……や、宿とかですよね……」
★★★★★★
焦った……これからの事って私たちの将来の事だと思った。行き成りの事でかなり動揺してしまった……。
★★★★★★
この様子だと何も考えていないな……仕方ない……少しだけ街道から離れ、そこにテントでも張るか。
「カベルネ、ここだと朝になったら通行の邪魔になっちゃうかもしれないから、少しだけ道を外れよう。そこでテントを張って、今日は休もう」
「は、はい! て、テント……ですね」
★★★★★★
て、テントなんて持っているのだ……。こんな真っ暗な中で私達は二人っきり……ど、どうなってしまうのだろう……。
★★★★★★
俺達は少しだけ道を外れ、テントを召喚する。こういったものは、買う必要が無いので楽だと思う。だが、カベルネは茫然としてテントを見つめるどうしたのだろう……。
★★★★★★
な、なんと言う事だ……そう言えばタイチさんは召喚の能力があり、しかも私の知らない知識が豊富……。こ、こんなテント見た事が無い……どうやって組み立てるのだろう。私は分からない……。
★★★★★★
「カベルネ、そっちを持ってくれる? ほら、ボサッとしないで手伝ってくれよ」
「は、はい! すいません……。み、見た事が無いテントだった物で……」
「気にしなくて良いよ。そのうち慣れていくだろうし……」
「は、はい……」
俺達はテントを組み立てあげ、中に入る。カベルネはテントの中に入り、周りをキョロキョロしながら落ち着かなさそうな雰囲気だ。まぁ、先ほど言っていたように見た事が無いから不安なのだろうな……。
「カベルネ、これを見てごらん。ここをこうすると……外が見えるんだよ」
俺はファスナーを開けると、外が見えるテントを召喚したのだ。俺的には外に出なくても外の様子が分かる方が良いかと思って召喚したのだが……彼女はどう思うだろうか……。
「す、凄い……こ、これは何て言うんですか!」
「ファスナーって言うんだよ」
ファスナーが珍しいのだろう。開けたり閉めたりを繰り返していた。
★★★★★★
私が知っているテントは三角のテント……それしか知らない。それなのにタイチさんが作り出したテントは丸形で窓のような物が付いている。ハッキリ言ってお洒落で可愛い。素敵すぎる……それにこのファスナーというのは一体何だろう‥‥こんなの革命的すぎる。タイチさんが住んでいた世界とは一体どんな物があったのだろう。私には夢の道具にしか見えない。あの魔族を倒した武器だってあり得ないと思ったのに、こんなものまで……。
タイチさんは食事を作ってくれるのだが、どれも初めて食べる食事ばかり。正直、物凄くおいしい……。私も少しだが食事は作れる。だけれど、タイチさんには敵わない。悔しいというか、素敵すぎる。リードは私の料理は美味しくないと言って文句ばかり言っていた。しかも自分は作れないくせに。
食事が終わると、この後は寝るだけになってしまう。だけれど、タイチさんは時間を持て余しているのか手持ち無沙汰のようだった。
「た、タイチさん。タイチさんのいた世界の話をしてもらえたら……」
「俺のいた世界?」
「は、話したくなければ……か、構いませんが……」
「別に構わないよ。う~ん……どんな話をしようかな~……」
自分がいた世界を思い出しているのだろうか、少し楽しそうというより嬉しそうだ。少し切ない気分になる。
「俺がいた場所ではね、離れた人と話をする道具があるんだよ」
「離れた人と……話をする? テレパスの魔法を使える人が……」
「違うよ。電話って言う道具なんだけどね、こうやって……その道具を耳に当てて話をすると、離れた人と話ができるんだ。もしもし……元気? ってね」
まるで夢物語の話をしている。そんなのデタラメだ……きっと私を楽しませるために言っているのだろう。
「でね、それは皆が持っているんだよ。携帯電話って奴。そうだな……カベルネよりも小さい子も持っているんだよ。二人に一人はその道具を持っているって言われている場所さ」
「それは凄い話ですね……と、遠くの人と話ができるなんてテレパスを使える魔法使いしか……」
「あ! そうか……アレを使えば信じてもらえるんじゃないか?」
どうしたのだろう……物凄く楽しそうな表情をしている。何か面白い話でも思いついたのだろうか……。そう思っていたのだが、私はこの後本当にこの人に驚かされるのだった……。
2017/4/9修正




