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召喚チート能力者の異世界ライフ  作者: マルチなロビー
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18話 焼きそば

 あの人は何を考えているの……。だって、魔族は強いってベガルタさんも言っていたじゃない。確かに、タイチさんは不思議な武器を持っているし、不思議な道具も持っている。この(あか)りだってそうだ……。


 だけれど、私にどうしろって言うの……。


 私はその場に立ち尽くし、タイチさんが進んで行った先を見つめる。まだ足音のような音が、小さく聞こえていた……。時折、まだ若干見える範囲での話だが、奥の方で明るくなったりしたので、カエンホウシャキって武器を使用したのかもしれない。しかし、それの明かりや光は見えなくなり……タイチさんの足音と思われる音も聞こえなくなっていた。


 私が……このまま引き返したら……私はどうなるのだろうか……。冒険者として、やっていけるのか……。そして、タイチさんは傷つき、道半ばで倒れるのかもしれない。もしかしたら、私を()()などさせないためにそう言ったのかもしれない。


『リードのパーティも来るかもしれない……』


 タイチさんは、私の(おさな)()()みの事を気にしてくれている。彼が死んだら、確かに私は悲しむかも知れない。だけれど……。


 だけれど……そう思ったら私は走り出していた。何故(なぜ)かは分からないけれど、このままではいけないという事は、冒険者としての経験が浅い、私の頭の中でも分かった気がする。それに、タイチさんはずっと私の事だけを考えて行動してくれていた。何が起きても一人で生きていけるようにと……。


 (しばら)く走ると、タイチさんらしき人が、ゴブリンを倒していたようで、袋に詰めようとしていた。


「い……いた! タ、タイチさん!」


「カ、カベルネ? ど、どうしてここに?」


「ハァハァ……わ、私も……私も行きます……ハァハァ。つ、連れて行って下さい!」


「……」


 タイチさんは驚いた顔をして私を見つめる……。


「た、タイチさんが何者かはどうでも良いです! ですが、このまま……、このままタイチさんだけを……タイチさん一人で行かせるわけにはいかないと思ったんです! お願いします……!!」


「――カベルネ……うん、分かった。こちらからもお願いするよ……手伝ってくれるか?」


「は、はい!」


 ★★★★★★


 まさか追いかけて来てくれるとは思っても見なかった。正直に言うと、一人残したことは申し訳ないというか、悪い事をしたと思っていた。


 一応、ステータスを確認すると、カベルネのステータスが再び見えるようになっているので、本当に俺を信じてくれている……信頼しているというのが分かる。頼もしい相棒って感じだ……今のところ。


 その後、俺達は一言も(しゃべ)らず、黙って先に進んでいくと、魔物の種類が異なってくる。アゴブリンやオーク……そして、バウンドウルフ等も現れてきた。オークに関しては()()だか、何発も顔面に銃弾を打ち込み、オークに対しては感情を()()しにして、カベルネは死骸の腹などを蹴っ飛ばす。これについては、今話を聞くのではなく、洞窟を出て、俺の話が終わった時にでも聞いてみようかと思う。


 どんどん奥に進んでいくと、徐々にカベルネの様子がおかしくなってくる。どうしたのだろうか……。


「カベルネ、大丈夫? 調子でも悪いのか?」


 俺は立ち止まり、何かあったのかと質問をするが……。


「い、いえ……あ、あの……そ、その……」


 カベルネは、モジモジして顔を赤くさせており、言い(にく)そうにしている。


「ん? どうした? 喉でも渇いたか?」


 そう言えば、再び合流をしてから随分と時間が()ち、俺達は水分を全く補充していないことに気が付く。全く気が回らない男だと自分で思い、水筒を取り出そうとして、袋に手を突っ込む。だが……。


「――そ、その……お、オシッコ……」


 顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにカベルネは言う。だが、俺は何を言われたのか理解ができず、首を(かし)げる。補充する水分を出してどうするのでしょう……。


「――オシッコ?」


「あうぅ……。も、漏れそう……なんです……」


 それでようやく状況を理解し、慌てて後ろを向いたのだが、カベルネはモジモジして尿を足すことはしない。


「後ろを向いてるから……」


 そりゃ……恥ずかしいよな……と、頭の中で考えながら、見ないように後ろを向いて、カベルネの用が終わるのを待つ。だが、一向にする気が起きないのか、カベルネはその場を動かない。


「――で、でも……音が……」


 音……その状況で、そんな事を言っている場合ではないだろうと思いながらも、俺は次の手を打つために頭を働かせる。ここまで来て、出し惜しみをしている意味もないと思い、仕方なく俺は簡易トイレを召喚する。


「カベルネ! この中でするんだ! 大丈夫……この中でオシッコできる環境が整っているから俺を信じろ!」


「――うぅ……わ、分かりました……!」


 そう言って、カベルネは慌ててトイレに駆け込み、用を足す。そして、顔を真っ赤にしてトイレから出てきたので、俺はウォータの魔法を唱え、手を洗わせハンカチを召喚しカベルネに渡す。その後、トイレの召喚を解くと、トイレは跡形も無く消え、カベルネは少しだけ驚いた顔をしていた。俺は横目でチラッとカベルネを見る。


「何も聞かないの?」


「……後で教えてくれると……タイチさんは仰有ってくれました。私はそれを信じます……」


 何かを決意したかのような顔で答えてくれる。この洞窟内では、俺を信じるという……。


「ありがとう。カベルネ……。喉……渇いてないか? 少しだけ休憩をしよう」


 先は長そうだし、急がなくても大丈夫だろうと判断し、提案する。


「――は、はい……」


 俺達はその場に座り、袋から水筒とコップを取り出してカベルネに渡す。カベルネは一言お礼を言って、スポーツドリンクの入った水筒をコップに注ぎ、ゆっくりと口に含む。


「お(なか)は空いてない? 簡単なもので良ければ作るけど……」


 冷静に考えると、洞窟に入ってから食事らしい食事をしていない。


「しょ、正直に言うと……す、少しだけ……」


「ん、分かった。俺も腹が減ったから何か作ろう。口に合わなかったらゴメンな」


 俺はガスコンロを召喚し、フライパンを準備する。カベルネは初めて見る物に興味津々で、俺の召喚した道具を見ているのだが、そんな事は気にしないで、俺はまな板や包丁なども召喚し、袋から野菜を取り出す。


 野菜を切り終えると、ボールを召喚し、切り終えた野菜をボールの中に入れ、袋から肉を取り出して、フライパンの上で焼く。そして、野菜をフライパンの上に載せ、(いた)める。焼きそばの麺を召喚し、麺をフライパンに投入後、菜箸で麺をほぐしていく。少し(いた)めたらソースと()(しょう)を召喚し、ソースを入れて()(しょう)を少しだけまぶし、混ぜ合わせて、皿を召喚して盛り付けて焼きそばが完成する。


 コップに水を入れフォークを召喚してカベルネに渡すと、カベルネは初めて見た焼きそばに感動する。


「――こ、これは……何という食べ物なんですか?」


 香ばしい香りに唾を飲み込むカベルネ。


「焼きそば。俺の居た場所ではポピュラーな食べ物だったんだよ。こっちではそういった食べ物がないようだね……。口に合うか分からないけど……冷めないうちに食べちゃいなよ」


 焼きそばを差し出し、カベルネは唾を飲み込む。そして、(ひと)(くち)(くち)にすると、勢いよく食べ始める。全て食べ終え、水を飲み干して幸せそうな表情を浮かべ、満足したようだった。俺も焼きそばを食べ、その()()に満足しながら食べ終えると、カベルネは言う。


「タイチさん! また作ってくださいね!」


「お、おう……」


 あれ? 俺って雇い主では無かったっけ? そう思いながら俺は後片付けをするのであった。

2017/04/29 修正および文章を追加しました。

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