16話 女の敵です
ギルドハウスに到着すると、ハウスの中が騒がしいことに気が付く。
「なんだか……賑わっていますね。何かあったんでしょうか……」
「また誰かが魔物の群れを倒したとか言って、盛り上がっているんじゃないか?」
「そう……ですかね? なんだかちょっと違う気がしますが……」
周りを確認しながらベガルタさんのところへ行き、アゴブリンの換金を行う。相変わらずの量で、ベガルタさんは呆れた顔をするのだが、少し上の空のように感じる。
「ベガルタさん、どうしたんですか? なんだか上の空っぽいけど……」
「あ、ごめんなさい……。ちょっとした事件が起きたのよ……それで困ってるの……」
「ちょっとした事件?」
「えぇ、今日の昼頃、東側の入り口から帰ってきた冒険者が洞窟を発見したと言ってたの」
「洞窟……ですか……それが事件?」
「その場所には今まで洞窟なんてものは無かったのよ。もしかしたら、その洞窟には魔族が絡んでる場合があるかも知れないわね」
「魔族……そんなのもいるんですか……」
「まぁね。魔物は魔族の手下と言われてるわ。だから群れをなしたり集団で襲い掛かったりしてくると言われてる。まぁ、今のところ推測だけどね」
「へぇ~魔族ね~。恐ろしや恐ろしや……」
「だけど魔族のコアは高値で取り引きされてるわ。だからこの様に皆が騒ぐのよ」
「高値で取り引きか……」
「けどね、魔族は物凄く強いわ。普通の冒険者は太刀打ち出来ない。もし挑戦しようと思っているなら……止めといたほうが良いわよ。タイチ君」
「まぁ、カベルネがいるからそんな無茶はしませんよ。それに、俺はここで初心者研修を受けたんです。自分の力量くらいは把握しているから馬鹿な真似はしませんよ」
なら良いけれどと言ってベガルタさんは俺達にガルボを渡し、別の人を相手に話している。
「カベルネ、ちょっと武器を見に行かないか?」
「武器……ですか? タイチさんはジュウとかいう武器があるじゃないですか」
「それだけでは心許無いんだよ。それに、護身用の武器は必要だ……剣とかあったら良いかなって」
「まぁ、タイチさんが仰有るならば……構いませんけど」
「ありがとうね」
「い、いえ……そんな……」
カベルネは顔を赤くする。そんな恥ずかしいことを言ったか? 俺は……。
二人で武器屋に行き剣などを眺めていると、カベルネが宝石の様な物がついたロッドを見ていた。
「それ、欲しいの?」
「あ、いえ、そうじゃなくてですね……この先端に付いてるのが魔物のコアなんです。それがあると魔力が増大して通常の魔法でも威力が高くなるんですよ」
「へぇ……柄は鉄でできているのか?」
「みたいですね……」
「じゃあ、これを買おう。カベルネが装備すりゃ良いよ。魔力が上がれば攻撃力アップなんだろ?」
「で、ですが、これ……6,000ガルボですよ」
「問題ないよ。俺はこういった武器があるが、カベルネの武器は木でできた杖だろ? それは魔力増大とかしてくれるなら別だけど」
「そ、そういった能力はありませんが……良いのですか?」
「これとロングソードで7,000ガルボだ。それで十分だよ。おじさん、このロッドとロングソードを頂戴」
「はいよ……」
店主は奥に行きロングソードが入った鞘を俺に、ロッドをカベルネに渡す。
「あ、ありがとうございます……」
「また明日からバリバリ働こう!」
「はい! 頑張ります!」
カベルネは嬉しそうにロッドを抱き締め、俺達は宿屋へ帰るのだった。
★★★★★★
タイチさんは不思議な人だ。私はそんなにロッドを欲しそうにしていたのだろうか……。確かに欲しいとは思っていたけれど……。
今日は初めて魔物を倒した。あの武器は凄い……当てるところさえしっかり狙えば……まぁ、全ての武器がそうなのだけれど、そういった類ではなく、一撃必中のような武器。それに、私の魔法でも魔物を倒す事ができたし……言われた通り、焦らずに魔力を練れば倒せるだけの威力が出ることが分かった。これも何もかもタイチさんのおかげ……。
この武器を買ってくれたのだし、明日はもっと活躍できるように頑張ろう!
★★★★★★
さて、カベルネのステータスが見られるようになったのは良いが……いきなり魔法を覚えさせるのは止めたほうが良いだろうな……。先ずは射撃だけ上げておいた方が良いだろう。
★――――――★
名前:カベルネ
レベル:4
力:6
器用:7
体力:10
魔力:17+10
信頼度:71
スキルポイント:30
【スキル】
火魔法:ファイア(小)
回復魔法:レティオ(小)
射撃:1
★――――――★
これで明日はもっと楽に戦えるかも知れない。しかし……ロッドを装備したら+10か……大して上がるわけではないのだな。
俺はステータス画面を閉じ、明日に備えるため早めに休むことにするのだった。
翌朝になり、いつもと同じようカベルネは遅れてやってくる。
「おはよう。お? さっそく装備してるね……そのロッド、似合うよう」
「あ、ありがとうございます……私、頑張りますから!」
「うん。でも、そんなに気負わなくてもカベルネはできる子だから大丈夫だよ。俺は信頼してる……。じゃあ、行こうか」
「はい! 今日も頑張って家の資金を貯めましょう!」
カベルネは元気よく言う。そして、俺達は東側の入り口へと向かうのだった。
入り口から出て暫くすると鶏を発見する。カベルネは銃を構えると、狙いを定めトリガーを引いた。もちろん射撃能力が上がっているので一撃で倒すことができ、カベルネはジャンプして喜びを表していた。その姿は無邪気で可愛く感じる。
「やりましたよ! 一撃です!」
「あぁ、凄いね……」
射撃能力が上がっているのだから当たり前だが、ここまで喜んでくれるのは有り難い。それだけ自分に自信を持つことができたという事になる。
「この調子で私は頑張ります!」
頑張ってくれるのは有り難いが、弾切れについても気にしてくれると有り難い。
そんな事を思いながらも顔には出さず、俺達は魔物を狩る。暫くすると、アゴブリンではなく、太った豚のような魔物が姿を現す。
「あれは……オークじゃないですかね」
「オーク?」
「豚の化け物と言った方が良いかもしれません。人間を好み、襲うと聞いています」
「それだったらゴブリン達もそうじゃん?」
「そうでは無くてですね……えっと、言い難いのですが……あの……に、人間を種付けにする……って言えば……分かりますか?」
「なるほどね、人間の女性を襲うということね……。最悪な奴らだな」
「女の敵です!」
珍しくカベルネの表情は怒っているように見える。
カベルネは銃を構え、オークを狙い撃つ。オークは一撃で仕留められる。俺達は近寄り死骸を確認すると、カベルネは「女の敵!!」と言ってオークの顔面を蹴っ飛ばす。この子はオークに何かされたのかと聞こうかと思ったが、本当にされていたらなんて答えて良いのか分からないため聞くのを止める。
死骸を袋に仕舞い、魔物狩りをしていると、洞窟のような物を発見する。
「もしかして……ベガルタさんが言っていた洞窟ってあれか?」
「かも、しれません。……どうします?」
「どうするって……行ってみるか? 高値で買い取ってくれるんでしょ? 魔族って」
「そ、そうですが……途轍もなく強いって言ってましたよ」
「いざとなりゃ逃げれば良いよ。取り敢えず行くだけ言ってみよう」
「わ、分かりました……」
こうして俺達は、初めての洞窟探検に行くのであった。
2017/4/9編集
2017/04/24 再度編集し、文章を追加しました。




