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召喚チート能力者の異世界ライフ  作者: マルチなロビー
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13話 先ずは練習から。それから本番だ!

 再びハンカチを召喚して、カベルネに渡す。カベルネはそれを受け取って、涙を拭き、俺に謝る。ハッキリ言えば格闘のスキルを付けた意味がなくなったことに対して謝って欲しいものなのだが、俺がそんな事をしていたなんてことは、知るはずがない。さて……何か格好良い言葉を並べなくては……。ここは落としどころの一つだろう……。


「カベルネ……無理しなくていいよ。泣きたい時は泣いても良いんだ。まぁ、泣き止ませる程の甲斐性がない事は、許して欲しいけどね……」


 俺は優しい言葉で言う。少しでも、何かを喋った方が良いのかと思いつつ、思いついた言葉を言う。


「――も、申し訳ありません……」


「大丈夫。もう、謝る必要は無いよ。だって、冒険に出るの、カベルネが自分で決めたんだから――」


「わ、私――もっと修行して、凄い魔法使いになって村に凱旋します! そして、リードの奴を見返してやるんです!」


「そうだ、その意気だよ。頑張れ!」


「はい!」


 嬉しそうにカベルネは言うのだが、結局はリードありきの話だ。俺に対する恋心などは無いのだと改めて理解し、俺達は宿屋へと戻っていく。べ、別に悔しくもなんとも無いぞ! いざとなれば奴隷でも購入して……。しかし、その時はカベルネと旅を終わらせる必要があるだろう。


 チェックインして、俺達は自分達の部屋へと戻って行く。正直、明日は休みたいのだが、そうは言っていられないだろう。リードに負けたような、この気持ちはどこで発散すれば良いのか……誰か教えて欲しい。


 そんな事を考え、戦争で使用していた武器が載っている雑誌を読んでいると、部屋の扉がノックされる。


「――はい? どなたですか?」


 宿屋の店員が、何か売り込みにやってきたのかと思いつつ、返事をする。


「――わ、私です……」

 だが、予想は外れ、ノックしたのは別室で休んでいるはずのカベルネだった。何か起きたのか、それとも相談事でもあるのかと思い、扉を開けて招き入れようとした。


「あぁ、カベルネか……どうぞ」


 カベルネは途中まで入ってきたのだが、立ち止まり、チラチラ部屋の中を確認している感じがした。俺は椅子を用意するのだが、カベルネは困った表情をして立っており、俺は首を傾げる。


「――どうしたの?」


「え、えっと……報酬で頂いた、ガ、ガルボのことなんですけど……」


「――ガルボ?」


「は、はい……こ、これは貰い過ぎだと……思います……」


 渡した4,500ガルボが入った袋を俺の前に差し出す。


「いやいや、渡し過ぎじゃないよ。そのガルボは、本当にカベルネの報酬だ。明日は1日かけて魔物狩りを行うよ。だからそのガルボで、カベルネの装備を調えた方が良いよ」


「――だ、だけど……」


「何度も言ったろ? カベルネはちゃんと仕事してるんだから問題ないよ。じゃあ、また明日な――」


「――わ、わかりまし……た――」


 本当に良いのか分からないといった顔をしてカベルネは部屋から出て行き、俺はベッドで横になる。だが、寝るには時間が早い。雑誌を手にして道具を確認し、暫くしてから買い物に出かける。旅に出たら、自炊をしないといけない可能性があるため、野菜等を購入することにした。


 翌日、昨日同様、宿屋の前で待っていると、カベルネが慌ててやって来る。あの後、カベルネも出かけて買い物へ出かけたようだ。カベルネの服装が少し変わった気がして、彼女をよく観察してみると、新しいローブを購入したらしく、少しだけデザインが異なっていた。


「――お、遅れてしまいました! すいません……」


「あぁ、気にしないでいいよ。それよりも――寝癖が凄いぞ?」


 少し息を切らせており、慌てていたことが分かる。朝と約束はしたが、時間までは約束はしていない。多少の寝癖は理解できるのだが、殆ど直した様子は無く、折角新しいローブを購入して、「似合うよ」って言うつもりだったのだが、残念少女全開状態だと、その台詞すら言えない。


「あは、アハハ……も、もう少しだけ……時間をくれますか……」


 俺は苦笑いをしながら頷くと、カベルネは恥ずかしそうに外へ出て、井戸の方で寝癖を直すのだった。


 それから30分程して、寝癖を直したカベルネが戻ってくるのだが、顔を真っ赤にしていた。


「――じゃあ、行くか」


「――は、はい……」


 俺達は東側の入り口へ向かわず、ギルドハウスヘ向かう。その途中、気まずい空気を打ち消すかのようにカベルネが質問をする。


「あ、あの……東側の……」


 俺が立ち止まると、カベルネも立ち止まる。


「あぁ、ちょっと早いかもしれないけど、カベルネに武器を渡そうと思ってね……見返すんだろ? リードの奴を」


「ま、まぁ……できるように頑張ろうかとは思っていますが……。――ぶ、武器って……」


「――これだよ……」


 サイレンサー付きのマカロフである。これはトカレフに比べて少し小さく、何よりも軽い。この銃を使い慣れたら、もう少し変わった銃を渡してあげても良いだろうとは思うが、先ずはこれで経験を積むのが一番良いのではないかと昨晩考えていた。


「先ずはギルドハウスの練習場で練習をしてから、西側の入り口から出て、簡単なウサギやイノシシ等を仕留めてみよう。知っているかと思うけど、これは近寄る必要が無い。遠くの敵や、近くの敵を倒すのに十分な威力があるものだ。いきなり実戦をする前にって事さ」


 そう言ってカベルネに渡すと、緊張した様子でマカロフを受け取り、眺めている。


「――わ、私が……た、タイチさんが使用している……ぶ、武器を……」


「使い方は簡単だ。説明は練習場で行うから……」


「わ、わかりました……」


 説明をしないまま渡したのでは危険なので、一度回収させてもらい、俺達はギルドハウスへと向かう。そして、俺達は練習場に到着するのだが、この日に限って弓の練習をしている人が多く、俺達は銃の練習ができずにいた。


「順番待ちが多くてな……」


 自分たちの順番が来るのを待っていると、ダレルさんが近寄って来る。このおっさん、思った以上に暇なのかと思いつつも、話を暫くする。カベルネは他人が行っている弓の練習を見守っているのだが、何時になっても自分の練習できそうなスペースが確保できずに、残念そうに他人の練習を見つめて溜め息を吐く。そして、何度も自分の番がいつなのかと数えていた。


「――ねぇ、カベルネ。ここで練習は難しそうだから別のところへ行こうか。――大丈夫だよ、俺に考えがある」


「考え……ですか?」


 俺の言葉に首を傾げるカベルネは、言われた通りに後を付いてくる。俺達は西側の入り口から町を出て草原へと向かう。


「ここまで町から離れていたら問題は無いだろう……」


 俺は台を召喚し、適当な場所にセットする。そして、空き缶を召喚して台の上に置いた。カベルネは不思議そうな目で俺のやっていることを見ており、どこから台を出したのかと、小さく呟いていた。準備が整い、俺はカベルネに声をかける。


「――カベルネ、見てろよ……」


 台から離れた場所に立ち、俺は銃を構えてトリガーを引く。すると、弾丸が銃身から飛び出し、弾は缶に当たる。弾丸が当たった衝撃で、空き缶が吹っ飛ぶ。見本を見せた後、カベルネの方を見て説明を始める。


「このレバーを引く事により、この穴から弾が出る。その速さは目で追えるスピードではない。その速さで獲物に当たり、その命を奪う仕組みだ。弓も弦を引く事によって飛んでいく。その引く強さによって、スピードや距離が変わるだろ? それを一定にしてくれているんだよ」


 俺の手に持っている銃を見つめ、何度も頷くカベルネ。


「な、なるほど……」


「気を付ける事は一つ……自分に向けない事だ。自分に向けて撃つと、どうなるか……それは、もちろん怪我をする。もしくは、死ぬ……そのどちらかでしか無い。だから、この武器を使う際には十分、注意してくれ。分かったか?」


「じ、自分に……向けない……ですね」


「うん。この穴を覗き込もうとしちゃ駄目だ。絶対にしては駄目だからな。覗き込んで、間違って引き金を引いてしまって、死んでしまっても責任は取れない。リードを見返すとか、そういったレベルの話じゃなくなるからな!」


 脅しているかのように、カベルネに説明する。


「は、はい……わ、分かりました……」


 唾を飲み込み、緊張した顔で銃を受け取る。そして、銃の外見を見つめるカベルネ……。


「じゃあ、もう一度的を作るから試してみなよ。俺が撃って良いと言ったら撃つんだぞ! それまでは絶対に撃っちゃ駄目だからな」


 正直、撃たれたらたまったものではない。俺は少しだけビクビクしながら木の的を召喚し、地面に突き刺す。そして、銃を眺めているカベルネの元へと戻っていった。


「タ、タイチさん……質問なんですけど……先ほどからやっている行動って……あの的は何処から……」


「え? あ、あぁ……昨日のうちに作って、袋に仕舞っておいたんだよ。俺の袋は魔法の袋だからね。そ、それよりも銃を……その武器を構えてごらん」


 話を誤魔化し、少し納得ができなさそうな顔して、言われた通りにカベルネは銃を構える。


「――そして、指先にある、そのレバーを引くんだ……」


「は、はい……」


 カベルネはゆっくりとレバーを引くと、マカロフの銃口から弾丸が発射されるが、的には当たらなかった。だが、カベルネはその反動に驚きの顔をして銃口を覗き込もうとして、俺が注意する。


「見ちゃ駄目だって言っただろ? ほら、的まで多少距離はあるが、取り敢えず当たるまで続けよう」


「は、はい!」


 こうして銃の練習を始めるのだが、カベルネは一度も弾を的に当てることはできずに、日が暮れて、一日が終わるのであった。

2017/4/22 修正と、文章を追加しました

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